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カラとタロ

 タロは家族に見送られて駅に向かった。

 この辺りは客車というしゃれたものはなく、ほとんどが貨物便だった。客車は限られた客しか乗ることができないため、タロは貨物の隙間に毛布を巻いて乗ることになった。

 駅にはもう一家族いた。

 両親と子供三人、その中のなぜか絣の布で出来たワンピースを着た少女が、荷物を手に佇んでいた。

「貴方も転生者なの?」

 その少女はとても華奢で、肌の色も薄い。かなり色濃く日焼けしたタロとは大違いだ。

 長い髪を一本の三つ編みにした少女は小さなおそらく妹を抱きしめて、別れを惜しんでいた。

 カラは以前訊いていた、料理人の転生者が、ここに来ていたのを不思議に思う。

 彼は転生者の知識を使って十分やれていたはずだ。

 着替えだけが入った小さな鞄を手に、カラは列車に乗り込む。

 妹のカナが手を伸ばすのを兄のセツが止めていた。

 そしてカラは両親に深々と頭を下げた。

 自分が転生者に生まれてしまったせいで、両親をややこしい立場に追いやってしまった。そのことを悔いるが、もともと自分の意志でしたことではない。

 毛布は駅の備品を貸してもらえることになった。

 渡された毛布と鞄を手にして、二人は貨物と貨物の隙間に毛布を敷いて座った。

「君前世どこの人?」

 とにかく二人で出来ることはおしゃべりぐらいしかない。書物というしゃれたものも、田舎では全く売っていない。

「日本人、学生だったわ」

「あ、そうか、俺は日本の料理人だった」

 実年齢は同じくらいに見えたが、前世では結構年が離れていそうだ。

「私は前世とだいぶ違う生活をしているわ、今は機織りで生計を立てているの」

「機織りか、もうできるひとのほうがすくなかったよね、日本では」

 風の噂では伝統産業として今もやっている人がいるとかいないとか聞いたこともあるが。

 ガタンゴトンと列車が動き始める。

 貨物車なので窓がない。

 薄暗い中でうずくまっているうちに、カラは元北村のことを思い出した。

 村長は常に殻を見る目はとげとげしいものになっている。カラは一向に役に立とうとしないからだ。

 いわゆる過度の期待というやつだ。村長の見込みでは、カラのもたらす知識は村を繁栄させ、多額の金銭を約束するもののはずだった。

 しかし、カラがもたらしたものはたった一種類の織物だけ。

「期待が重いよね」

 カラが深い深いため息をついた。

「期待されて、頑張ればなんとかなることならいいけど、どう頑張っていいかわからないことをひたすら期待されるのはつらいよ」

 カラがそう呟くとタロは軽く頭を抱える。

「今の俺らの状況って、まさにそれだろ」

 期待を背負って、頑張れるって幸せなことなんだなとカラは遠い昔を思い出しながらため息をつく。

 カラは自分の両手を見る。あの時とは違う、荒れた、そしてまともに筋肉のついていないストンとした腕を。



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