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前準備

 カラは運動服のデザインと見本を縫うことになった。

 こちらでは伸縮性のある布地というものはない。そのため、布をたっぷり使って身体の動きを妨げない構造にする必要がある。

 結果パフスリーブの手首まである袖、パンツも足首で絞るデザインのものを採用した。

 それを見たタロの反応は、ただ一つ。

「モンペ?」

「あれは作業着だもん、それなりの機動性を考えるとそうなるのよ」

 実際それはほぼモンペだった。

 ショートパンツと袖なしが採用できればよかったのだが、それはウィスラー夫人が許さないだろうとすべての人間が断言した。

 そのためたっぷりと布を使った長袖長ズボン、なんだか時代を感じるデザインだ。

「ニット自体はあるんだがな」

 毛糸で編んだニットは存在する。基本的の防寒用なので、作業着には適していない。

「あら、結構スタイリッシュじゃない」

 最近見なかったマデリーンがカラの書いたデザイン画を覗き込む。

「スタイリッシュに見える?」

 モンペのイメージが強すぎて、とてもじゃないがスタイリッシュに思えない。

「うーん、アメリカあたりではそう見えるのかね」

 国境を超えると理解できないことも増えてくるなとタロは呟く。

「とりあえず、このデザインをあの子たちにぶつけてみない?」

 可愛い服というのは女性にとって、破壊力のあるものだとマデリーンは言った。

「ああ、そういえば、もう話は進んでいるの?」

 女性職員により障害物競走の話がどこまで広がっているのかカラはよくわかっていなかった。

「うん、上層部は完全に把握、女性職員には、参加すればボーナスが出るって話よ」

「ボーナスか」

 報酬が約束されているのなら、それほど悪い話なのではないかもしれない。

「運動服としてはねえ」

「ああ、陸上競技なんかレオタードみたいですものね、でもこちらの女性に人前でレオタードが着られるのは風俗嬢くらいなものよ」

「ああ、こっちにもいるんですか、風俗嬢」

 タロが思わず食いつく。

 カラの視線が冷たくなる。

「そりゃいるけど、今の年齢じゃ相手にしてもらえないわよ」

 基準は肉体年齢だ、転生者の精神年齢がいくつだろうと、基準年齢に達していなければそういう店に入ることも許されない。

「とにかく、衣装デザインはできたから、次は障害物の設定をどうするかよね」

「運動会みたいなのを作るの?」

 網潜りに平均台などという運動会の定番メニューをタロは想像していた。

「一応軍なんだから、岩とか積み上げて障害物にするとか、あと、泥のぬかるみを移動してもらおうかな」

 ボーナスが出るんなら多少の無体は許してもらえるかもしれない。

「カラって時々ヘビーよね」

「え、そうですか、でも今までの訓練でもめげていないので、それっくらい耐えられるかなって」

 カラは不思議そうに首をかしげる。

「基準、ちょっと違うわよ」

 女性職員たちの鍛え上げられ方は通常のダイエットの域を超えている。

「まあ、耐えているけどね」

「でしょう」

 カラはちょっとだけ誇らしげに笑った。


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