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期待する者達

 イリアス少佐は食事を終えて仲間内でくつろいでいた。

「あの食事はなかなかユニークだったな」

 そう言って同僚のニコラウス大尉が言う。

「ビタミンとミネラルか、概念自体は入っているが、学者の領分だな」

「しかし食事改善というものは始めても結果が出るのに時間がかかるな」

 彼らが憂いていいるのは、カラとタロの取り組みに結果が出るかどうかだ。

「時間がかかるとあの方につぶされるかもしれないな」

 転生者にかかればみな幸せになる、結構な数の人間が信じている御伽噺だが、実際はそうでもない。

 不幸になった人間もいるにはいる。その一人が件の中将だったりする。

 元々この国には、農奴という奴隷に近い立場の人間がいた。それを開放したのが転生者だったのだ。

 人文主義などと掲げていたらしい。いわゆる奴隷制度は野蛮で遅れているとあちこちで吹聴したり、社会の意義など掲げていたが、その活動が結局は実を結び、農奴という名の奴隷はこの国からいなくなった。

 それに割を食ったのが、農奴を所有していた地主階級の人間だった。

 農奴と土地すべてを国が買い取り、農奴であった人達は小作民となった。

 その過程でつぶれていった地主階級出身者は多い。

 そして農奴も一国民という身分を得たのだが。しかし全く差別がなくなったわけではない。

 基本的に彼らは自らが住まう土地から出ることはできないし、学校に通うことも基本的にできないことになっている。

 運良く、あるいは親の必死の努力で学校へ通える子供もいるが、そんなものは一つまみ程度しかいない。

 そしてその開放小作民こそ、カラとタロの今の身分だった。

 そして没落した地主階級出身が中将閣下、この組み合わせはもはやトラブルが起こってくださいと天に祈っていたのかと問いただしたくなる。

「しかし、まだ奥の手を隠しているような気がするよ」

 イリアス少佐の言葉にその場にいた軍人たちが食いついた。

「いったい何を隠しているというんだ」

「それはわからない、しかし、カラという少女の様子を見るに、何かあるんじゃないかと思われる」

 カラは朝会ったとき、何かとてつもなく、何かを言いたそうな顔をしていた。そして、それを言っていいのか悩むような。

「まあいい、彼らも馬鹿じゃないことが分かっただけで収穫だ」

 転生者といっても、箸にも棒にもかからない人間もたまにいる。その人間の本質そのもので。

 それを考えれば、あの二人は相当出来物だ。

「期待はしていいかもしれないが」

「しかし、過剰な期待をするのはやめておくべきかと」

 食べずに帰ったのはほとんど中将の息がかかった連中だった。

「どんな妨害があるかわかったもんじゃない」

「それに、元々は、あまり役に立たない転生者だと思われていた二人だ」

 イリアス少佐はため息をつく、転生者、それがどうしてこの世界にやってきたのか、天の神はいったい何を求めているのか。

 しかし、転生者はこれからもおそらくやってくる。

 最初に転生者が発見されて百年以上、世界の変容は続く。

 さして影響力のない転生者たち、しかし、再び、世界の何かを買えるか



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