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異文化

「あれ、すごいですね」

 カラは空を指さす。

 空ではドラゴンが気球を引いていく。

「ああ、バルーンはそちらでもあるんじゃないのか」

 イリアス少佐は不思議そうな顔をしていた。

 まんまバルーン。そもそも地球からもたらされたのだから地球の言葉でいうのが当たり前なんだが。

「ドラゴンが引くバルーンは初めて見ました」

 プロペラ動力で進む飛行船というのが昔あったらしいが、飛行機に押され今ではすっかりすたれてしまった。

「あれのおかげで、ドラゴンによる貨物の輸送は極めて効率的になった」

 そう言いながらしばらくドラゴンを見ていた。

「そう言えば、体を鍛えるという概念が、私の知っているのとまったく違うのに驚きました」

「そんなに違うかね」

「かなり違います」

 カラは断言する。しかし、何度かの海外遠征を経験しているカラは常識というものは外から見ないと比較というものが難しいことを知っていた。

 自分の知っている常識を話すべきか否か、しばらくカラは悩んだが今は保留することにした。

 当たり前を当たり前じゃないと説明するのはとても難しいことだとわかっていたからだ。

 「いや、あんまり遅いから引き返して迎えに行こうと思ったんだが」

  さっさと先に進みすぎたと少しきまり悪げにタロが言う。

 「うん、ごめんね」

 カラはそう言って、ドラゴンからおっかなびっくり降りて、つながれた自転車をはずす。

「どうもお手数をおかけしました」

 そう言ってタロはイリアス少佐に一礼する。

「試食は、誰が来るんだい」

 聞かれて、タロは懐のメモ帳を取り出した。

 書かれた名前を読み上げる。何故なら、そのメモは日本語で書かれていたので、イリアス少佐には読めないと判断したからだ。

「それは異世界の言語なのか?」

 書かれたメモを覗き込んで尋ねる。

「別に暗号とか、読まれたくないとかそう言う理由じゃないですよ、ただ俺のいたところじゃ読み書きする人間があまりいないんで、どうしてもこちらの文字になれることができないんですよ、そうすると慣れ親しんだ、あっちの文字のほうが書きやすいもんで」

「そう言うものかね」

 物珍し気にメモ帳を覗き込んだ。漢字かな交じり文というのはそんなに珍しいだろうか。

 こっちの文字は、アルファベットより、ちょっとハングルに似てるんだよなあ。

 そんなことを思ってカラは空を見上げる。

 気球は既にだいぶ小さく遠ざかっていた。



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