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午前の予定

 基地の敷地はかなり広い、そのため移動手段として自転車が用意されていた。

「ドラゴンと、自転車のあるファンタジー世界」

 そう呟くとタロは思わず天を仰ぐ。

「歩くよりましでしょ、それじゃあ、案内よろしくお願いします」

 カラとタロの二人を案内するのは、ウィスラー夫人から因果を含められた侍従のアルスという青年だった。

 栗色の髪に青い瞳の好青年だった。

「それでは、まずご希望のドラゴンの訓練所に参ります」

 颯爽と三人は自転車を走らせた。

 はずだった。カラの自転車だけやたら蛇行して遅れた。グラグラと重心がずれなかなか前に進まない。カラの今の運動神経では自転車に乗るということだけで巨大な負担になるということを忘れていた。

「二人乗りにするか」

 タロが振り返って聞くが、カラは何とか態勢を立て直しながら首を横に振る。

 カラだけ大きく遅れながら、自転車は進んでいく。

 カラは少し走らせた後振り返る。初めて自分たちがしばらく暮らすことになる宿舎の外観の全体を見た。

 レンガ造りの立派な建物だ。

 自分の家とその近所にある木造建築とは雲泥の差だ。


 しばらく進んでいくと、空中を飛ぶドラゴンが見えてきた。

「あれ、どのくらいの高度を飛んでいるんだ」

 自転車をこぎながらタロが呟く。

 以前門のそばでうずくまっていたドラゴンは見上げるほどの大きさがあった、しかし今見えているドラゴンは手のひらぐらいだ。

「あれは大型ですね、小型の馬ぐらいのドラゴンもいますよ」

「まさに竜騎兵ってやつだな」

 前方では和やかな会話が続いているが、カラは既に意気が上がっていた。

 よもや自転車でここまで体力を削られるとは。

 誰だ自転車なら楽と言ったのは。自分だ、と脳内漫才を繰り返しながら、カラは自転車を走らせた。

 ちょっとしたサッカースタジアムぐらいの空間にドラゴンが整列しているのが見えた。

 ドラゴンが整列していると、サッカースタジアムがライの空間もドッジボールのコートのようだ。

「壮観だなあ」

 ドラゴンの周りに軍人たちがたむろっている。

 軍人たちの制服はデザインは同じだが、色はすべて違う。担当するドラゴンの体色に合わせて色が決まっているらしい。

 三人はある程度近づいたところで自転車を止めた。

 自転車にもたれて肩で息をしているカラにアルスはしばらく視線を止めた。

「次は小型龍が引く荷車に乗って移動しますか」

 カラがこの先ついていけるか不安になった。

「あれだな、向こうの戦闘機に相当するのが、ドラゴンなんだな」

 タロは空を見上げながら呟く。

 ドラゴンは優雅に空を舞っていた。

「なんで子供がこんな場所に?」

 軍人にしては小柄な、たぶんその中で一番年長者と思われる男性が声をかけてきた。

 小柄で痩せたカラとタロ、肉体年齢も成人していない。こんな場所にいるのが不審なほど幼く見えるだろう。

「彼らは転生者です。この基地の食事改善が仕事だそうですよ」

「食事改善ね」

 値踏みするような目でカラとタロを見る。

「本日最初の試作をする予定です」

「ならばその試作をぜひ、幹部も食べさせていただきたいものだな」

「その場合何人増えますか?」

 タロはそう言いながら胸ポケットからメモ帳を取り出す。

 キチの幹部の大体の数を聞いてからメモを片付ける。

「これから基地を回りますので、参加者希望者はその時に聞くことになると思います」

 しばらくドラゴンを見物していたが、次の場所に向かった。



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