食材探しの成果
大元の調理場のほかに、従業員用の簡易な調理場があり、その場所を当分借り切ることをタロは約束を取り付けた。
そこに食材を運び込む。
「大体、この辺りで取れる食材を集めてきたけど」
野菜と、肉類を調理台に並べる。
「食材は、専用列車で運び込むのよ」
マデリーンがそう言った。
タロたちが来たのと反対方向から、直通列車が通っていて、物資運搬に使われているらしい。
「基地一つに専用列車」
その贅沢な施設に開いた口が塞がらない。
「でも、あまり民家に近いところに作るわけにもいかないでしょ」
民家に近づけるなどできるわけがないことは、最初の日に見た光景でタロも納得する。
カラは買ってきた袋を同じく調理台に置いた。
「チナねえ」
袋を開けると、黄色い細かな粒の穀物だ。クスクスに似ているかもしれない。
「なんか、あれだな、粟とか稗とかみたいだな」
「鳥の餌になっているところとかもそんな感じだと思うわ」
「調理法は」
カラのノートを覗き込む。
「ちょっとやってみるか」
そう言って、まず笊にあけてよく水洗いする。
そして、水気を含んだ状態で、鍋に移し、加熱しながら練り上げる。
最終的に黄色い、半透明のねっとりとした物体になったあたりで手を止めた。
口に入れてみる。
「うむ、ポレンタだ」
「何、それ」
カラも一さじすくって食べてみた。よく練り上げたでんぷんの味がした。
「トウモロコシのおかゆだよ、南米あたりでよく食べられてる」
「甘くないけど?」
タロの説明にカラは首をかしげる。
「あのな、スイートコーンじゃねえよ、あれは日本の農家の品種改良という名の魔改造の産物だ、実際世界で食べられているのは穀物トウモロコシだよ」
果物の様に食べられるトウモロコシがあるのは日本だけだ。
「ちょっと塩気がほしいな」
「すたれたといっても、それほどまずくないな、うまく調理次第では化けそうな素材ではある」
タロはチナで作ったポレンタのようなものをじっくりと味わってみる。
「そう言えば、あのお肉は何?」
「ミネラル強化って言ったろ、だからモツ肉を用意してみた」
「なんで、モツ?」
「ああ、むかし漫画で読んだんだ、人身売買と臓器密売組織を戦うっていうサスペンス漫画だったんだが、事件の発端が、白骨死体を発見したってとこでな、白骨死体だが、内臓が抜かれていたって言われる。で主人公が、なんで白骨死体で内臓がなかったのかわかったのはなんでだって聞くわけよ、そしたら、まあ医者がな、内臓独自のミネラルが、骨に沈着してなかったと答えたわけだ」
そこまで言ってタロは腕を組んだ。
「つまり、内臓にはミネラルがたっぷりというわけだ」
うつむいていたからとマデリーンが吠えた。
「気持ち悪いこと言わないでよ」
思わず想像してしまい、鳥肌が立っていた。