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セーラー服の勇者 ~ぼっち系女子高生の私でも、異世界転移したら主役になれますか?~  作者: いかぽん
第三章  大賢者 この人ちょっと どうかと思います!
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帰還。でもセクハラはダメです

「勇者様たちが帰って来たぞー!」


 クラーケンを倒して船が港に戻ると、まだ船が海上にいる間に、港のほうからそんな声が聞こえてきた。

 港を見ると、結構な数の人たちが集まっていて、私たちの船の帰還を待っているみたいだった。


「港町の人たちにとっては、船を出せないってのは死活問題だろうからな。そりゃ結果は気になるだろうさ。良い報告をしてやれば喜ぶよ、シアちゃん」


 ジェラルドさんが私の横に立って、そう言ってくる。

 でも私は、その隣に立った人から、ぷいっと顔を背ける。


「なれなれしく話しかけないでもらえますか? 私まだ百回褒めてもらってません」


「あー……」


 腕組みして背を向けつつ、ちらっと横目にジェラルドさんの様子を見ると、苦笑しつついつものように頭をかいていた。


 苦笑っていうあたりが腹立たしい。

 私の本気の怒りを分かっていない証拠だ。


 そう思っていると、ジェラルドさんの口から、とんでもない一言が飛び出してきた。


「えっと──可愛いよ、シアちゃん?」


「んがっ……!」


 その思いがけない投げやりな褒め言葉に、私は顔が熱くなりながら、絶句する。


 何、何なのこの人!?

 だいたいなんで疑問形?


 私はくるっと、ジェラルドさんのほうに振り向いて、私よりも長身の彼を見上げ、その顔に人差し指を突きつけ抗議する。


「そういういい加減な、心にもない褒め方やめてもらえませんか! 今のはノーカウントです!」


「はあ……別に、心にもないってわけでもないんだが」


「……は? えっ……あ、そうですか……。じゃあ、カウントしてあげても、いいですけど……」


 な、なるほど、そうか。

 子ども可愛いってことね。


 私を子ども扱いするジェラルドさんらしい。

 まあでも、一応本心からの褒めなら、勘定に入れてあげなくもない。


「でも、残り九十九回です! それまで絶対許しませんから!」


「……はあ。困るなー」


「困ってください。もっと困ればいいんです」


 私はまた腕を組んで、ぷいっと背を向ける。

 この人にはもっと困ってほしい。

 私だけ困るのは、絶対割に合わない。


 そうこうしていると、港に船がたどり着いた。

 港の人たちが、期待と困惑の入り混じった眼差しで、甲板に立つ私のほうを見上げている。


 そりゃそうだろう。

 何しろ私、いまだに全身ハチミツまみれでぬらぬらしている。

 どこの勇者が、クラーケン退治に行ってハチミツまみれになって帰ってくるというのか。


「ほら、報告してやりなよ、シアちゃん」


 ジェラルドさんが、そう言って私の背中をぽんと押してくる。

 その手が離れるとき、ねちゃっという感触。


 ジェラルドさんが、その手についたハチミツを見て、それをペロッとなめた。

 ……な、何してくれてんのこの人。


「……誰のせいで、胸張って堂々と報告できないと思ってるんですか」


「どうせ胸を張ったって目立つほどの大きさないからいいじゃない」


「むきいいいいいっ!」


 このセクハラ親父を今すぐボコボコにして海に沈めたい衝動に駆られるけど、人前だからやむなく自重する。

 あとで覚えてろよ……。


 ダメだ、深呼吸、深呼吸……。

 すーはーすーはー。

 よし、少し落ち着いた。


 ……まあ、街の人たちにミッション達成を報告して、安心させてあげるべきなのは、その通りだ。


 私は船の甲板の上から、港に集まる人たちを見下ろす。

 ちょっと偉そうかなーと思いつつも、懐から、手のひらに収まりきらないほどの大きな宝石──クラーケンの魔石を取り出して、それを港の人たちに見せる。


 そして私は、集まった人たちに向かって、結果を報告した。


「いろいろあったけど、クラーケンは退治しました。──ぶいっ!」


 左手で魔石を掲げて、右手でVサイン。

 すると、港の人たちは──


「うぉおおおおおおおおっ!」 

「やったああああっ!」


 一斉に歓声をあげて、大喜びし始めた。

 近くの人と抱き合ったり、ガッツポーズをしたり、ぴょんぴょん跳ねたりして、まるでお祭り騒ぎだ。


 ……あー、このぐらい喜んでもらえると、頑張った甲斐もあるなぁって思う。

 行きがかり上のこっちの都合も大きかったけど、やってよかったなって。


「うおおおおっ! 勇者様がやってくれたぞー!」


「勇者様バンザーイ!」


「勇者様! 勇者様!」


 しまいには港の人たち、テンション上がり過ぎたのか、勇者様コールまで始めた。


 ……でも、ここまでくると、さすがにちょっとこそばゆい。

 私は隣に立っているジェラルドさんの服の袖を引っ張って、訴えかける。


「──ほら、ジェラルドさん。私を褒めたたえるっていうのは、ああやるんですよ。ジェラルドさんも見習ってください」


「はあ……。じゃあ、えっと……勇者シアちゃん万歳、可愛いくて甘い?」


「セクハラです!」


 私はジェラルドさんのボディに、肘うちを入れた。

 まったくこの人は……!




 こうして、私のクラーケン退治の冒険は、幕を閉じたのだった。


 ちなみに、町に降り立った私が真っ先に行なったのは、もちろん、お風呂に入ってハチミツを洗い流すことだった。


 お風呂に入るまでが、クラーケン退治です。


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