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セーラー服の勇者 ~ぼっち系女子高生の私でも、異世界転移したら主役になれますか?~  作者: いかぽん
第三章  大賢者 この人ちょっと どうかと思います!
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ジェラルドさんはひどい人

 晴天の下、打ち寄せる波をかき分け、大海原を進む船。

 その船の甲板上に、私は立っていた。


 その私の足元には、大量の武器、武器、武器。

 ほとんどは投擲とうてき用の槍だけど、中には巨大な剣とかもある。


 ただそれらは予備用の武器というか、状況に応じて使うためのもので、いま私が手にしているのは、一つの大弓だった。


 背中には、ニ十本ほどの矢が収納された矢筒を背負っている。

 いつものセーラー服姿で背負っているものだから、きっと傍から見たら違和感バリバリだと思う。


 ちなみにこの弓は、ゴブリンを相手に使ったような小さなものとはまるで違う。

 立てると私の背丈ほどもある大きな弓で、なおかつ特殊な作り方をしてあるものらしい。


 私はこれを、港町にあった武器屋で手に入れた。

 その武器屋の店主のお兄さんの談によると、この弓はお兄さんの最高傑作だという。


 曰く、この弓は遊牧民族が使っている弓の製法を応用した、複合素材の弓とのこと。

 複合弓コンポジットボウっていうらしいけど。


 ただ、遊牧民族の使う複合弓は、普通もっと小型だっていうことで。

 小型でも強い反発力を生むから、馬上での使用にも適しているらしい。


 で、その製法で大弓を作ってみたのが、この今私が手にしている弓なんだということだけど……。


「いやあ、間違いなく最強の弓なんだが、最強すぎて誰も使えないって代物でさ。この間、身長二メートルぐらいある筋肉ムキムキの巨漢が店に来たんだけど、そいつでも半分も引けずに諦めてったよ。あっはっはっは!」


 と言って笑う武器屋のお兄さんは、少し寂しそうだった。


 私が試しにその弓を引いてみると、私にはちょうどいい反発力で、少し余裕を持ったぐらいで、弦をいっぱいまで引き絞ることができた。

 それを見た武器屋のお兄さんは、目玉が飛び出そうな勢いで驚いていた。


 ……とまあ、そんな逸話もありきで持っているこの武器。

 私は潮風吹きすさぶ船上で、その手にした弓の弦を、くんくんと引いてみる。


 ──うん、やっぱり具合がいい。

 すごくしっくりくる反発力の具合に、私は何となく満足感を覚える。


「その弓、随分気に入ったみたいだな」


 ふと後ろから、ジェラルドさんが話しかけてきた。

 ジェラルドさんは少し前ぐらいからずっと、定期的に精神集中したりぶつぶつ呪文を唱えたりしている。


 ちなみに彼、出航前には一時間ぐらいかけて、船に防御の魔法をかけていた。

 曰く、これでクラーケンの攻撃にも、多少なら耐えられるだろうとのこと。


「まあ……。やっぱり、自分に合う武器を手に入れてご満悦な女の子って、変だと思います?」


「や、どうだろうな。嬉しそうな様子は見ててほほえましいから、俺は好きだけど」


「……そ、そうですか」


 そう言われて、顔が熱くなるのを感じる。

 うーん……私ってやっぱり、趣味がちょっとおかしいのかもな……。


「それはそうと、シアちゃん。そろそろ出番みたいだよ。気持ちの準備しといて」


 私が心の中で一人くねくねしていると、ジェラルドさんが不意にそう言ってきた。


「えっ、出番って……」


「感知の魔法に大物が引っかかった。クジラとかシーサーペントでもなければ、今回のターゲットだよ」


「っていうことは……」


「そ、クラーケン」


「えっ、どこ!? どこですか?」


「あっち」


 そう言われて、ジェラルドさんが指さす方向を見ると──そこにはまったく静かな海が、普通に広がっていた。


 ……あ、いや、待てよ。

 あの海の中の、黒い影みたいなのは──


 まだ距離は遠い。

 でも何か黒い影が、こっちに向かって近付いてきているみたいだった。


「シアちゃん、援護魔法かけるから、力抜いて」


「あ、はい」


 ジェラルドさんに言われて、体の力を抜いて、魔法を受け入れるようにする。

 ジェラルドさんが立て続けに呪文を唱え、二つの魔法が私にかけられたのが分かった。


 すると体の内側から、力が溢れ出してくるのを感じる。


「筋力増強の魔法と、水中呼吸の魔法をかけた。──で、最後の仕上げ」


 そう言ってジェラルドさんは、何やら足元に置いてあった壺を持って、その栓を抜いた。

 そしてその壺を、私の頭上に持ってきて、ひっくり返した。


 ──ん?


「あ、あの……ジェラルドさん?」


「いいからいいから。じっとしてて」


「はあ……」


 そう言われたので、言われたとおりにじっとしていると──


 ──ねとっ。


「ふひゃっ!?」


 何かねっとりとろーりとしたものが、私の頭上から落ちてきた。

 それが私の肩に、胸に、とろとろと落ちてくる。


 つ、冷たい……!

 何これっ、何なのこれ……!? 


「ちょっ、ちょっ、えっ、何ですか、これ何ですかジェラルドさんっ!? なんかすごい甘ったるい匂いなんですけどっ!?」


「何って、アレだよ──蜂蜜」


「あ、そっか、これってハチミツの匂い──って、はいいいいいっ!?」


 そうこうしているうちにも、壺の中に納まっていたのであろう蜂蜜は、全部私の体にぶちまけられてしまった。

 とろっとろの甘ったるいハチミツでコーティングされた私が出来上がる。


「なっ、なななっ、何でっ……!?」


「いやぁ、何ていうのか……おとりってやつ? クラーケンってさ、触手に味覚と嗅覚の受容器官があって、味とか匂いに対して敏感なんだわ。こうしておけば、シアちゃんが主に狙われるからさ」


「聞いてませんよっ! 聞いてないですよ私!?」


「あ、そうだっけ? 悪い悪い。説明するの忘れてたわ」


 そうすっとぼけるように言う、無精ひげの大賢者さんである。


 嘘だ……絶対ウソだ……。

 この人、絶対わざとだ……。


「ほらほら、やっこさん来るよ。戦闘態勢作ってー」


「うわああああんっ! ジェラルドさんのばかあああああっ!」


 ハチミツでどろどろの私は、泣きながら戦闘態勢を整えるのだった。


 うぅっ……絶対あとで許さない。

 もう決めたこの人許さない。

 泣いてもう勘弁してくださいって言うまで、私を慰めさせてやる。


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