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医師の相田は花恋を診察室に連れて行き、レントゲン写真などを見せる。
写真には無残に破壊されたの花音のお尻が映っていた。
「先ほどもご説明いたしましたが、入來院刑事の肛門はご覧のような状態です。
医療方針としましては現在の肛門を切除して、再生医療で肛門を再生。
再生までの間は大腸の出口にバイパスを作ってそこから用便を吸い出します。
そして完治までの間は人工的に植物状態にしてポッドの中で人工栄養で基本的な生命維持を行う……」
一度言葉を切った主治医が花恋の目をじっと覗き込む。
「ここまでが先ほどまでのお話の詳細ですが、この先がまだあります」
花恋が目で続きをうながす。
「ポッドで集中治療を受けている間の一年間、プロトコル66により、入來院刑事の精神を貴女の中に転送させておいてほしいのです……」
「!!」
驚いた花恋は一瞬、言葉に詰まり、改めて相田医師の真意を問いただした。
相田は言い難そうに口を開く。
「黒の師団から救出された入來院刑事は一ヶ月にわたるテロリストの調教でホモに目覚めてしまってたんです。ガチで」
「ガチで、ですか……」
花恋としては言葉がない。言葉が続けられない。
ホモは観賞用という言葉もあるように、対岸の火事なら楽しいが、自分の婚約者がそれでは困ってしまう。
「肛門は我々の医療で治せますが、そちらの方面は我々ではどうにもなりようがありません」
「それで私にあの人の心のケアをしろ。と……」
「勿論、悪いようにはなりません。
入來院刑事の精神が貴女から貴女の肉体の主導権を奪うことはありえませんので」
「――それに、入來院刑事の精神が貴女の中にある間は彼の記憶と経験は貴女と共有となりますので、
この期間の間中は貴女が入來院刑事の代わりに刑事を勤めることができます」
こう言って相田医師は意味ありげに花恋を見た。
「……それはつまり、刑事の身分で捜査に関われるということですの?」
「それに関しては医師である私の口からは何も申せません」
そう言って相田医師は片目を瞑る。
花恋の口角がめくれ上がった。