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その先、あるいは元の場所
同時刻。ここは…なんと呼べばよいだろうか? 特に名前がないのだ。名前をつける必要がないのだから。いまその世界の住民が手元の光の塊を覗いている。と言っても、彼には手もなければ目もない。それどころか質量を伴った身体がない。その世界自体が彼そのものであり、彼はおびただしい数の意識を持ち合わせていた。天国、極楽、楽園、高天原、黄泉の国、地獄、魂の帰る場所、宇宙の意志。彼を構成している存在は、彼自身をそんなふうに呼んでいるのだろうか。そう呼んでいる存在が彼自身であることにも気づけずに。
彼は、想像もつかないほど極小な、しかしはっきりとした意識を感じ取った。
「ああ、君か」
彼は、ある少年が創った宇宙の片隅に存在する惑星で、たった今砲弾をぶっぱなしたばかりの戦車を駆けめぐる鉄のクオークに語りかけた。その粒子の意識は瞬く間にその星の裏側の平和な大学にまで伝わり、ペトリ皿の上の細菌たちは不気味な速さで増殖を始めた。