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Scope  作者: 齋藤光
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意外な創造者

 同時刻。太陽系第三惑星における霊長類が宇宙と呼ぶ枠組みの外側。ひとりの少年が5つの宇宙とにらめっこしていた。

「ったく」

少年はつぶやいた。

「めんどくせー、宇宙の観察って」

少年は学校で書いた予定帳を見た。


今日の宿題

①計算ドリル(17桁×17桁の計算のページ全部)

②宇宙の観察

③本読み(『創造者失格』)


「はあ」

今度はため息をついた。うちのクラス宿題多すぎ。担任がネミチーザ先生だったらよかったのに。優しくて美人で宿題少ないし。たまに電気のカタマリを落とすけど。

「はあ」

少年は諦めと切り替えのため息をついた。さっき書いた宇宙Aのレポートを見直した。そして残りの宇宙の観察もレポートにまとめた。


宇宙の始まり(無→宇宙A)

 学校で分けられた無を机の上に置き、教科書と資料集に書いてある手順通りにまず光を創ったところ、無が歪んでポンと音を立てて爆発した。時間とともに宇宙は膨張し(その速さは光よりも速かった)、複数の物質も空間内に散らばった。無から有を生み出すことは、円の直径の両端のような関係だと思った。


正の方向に流れる時間の宇宙(宇宙B)

 正の方向に時間が流れるにしたがって、宇宙は質量を保ったまま膨張を続けた。膨張の速度は一定だった。このことから宇宙はどんどん密度が小さくなっていたことがわかった。次第に生命反応が見られるようになったが、密度を減らす宇宙の変化についてこられないためか、知能は大して高くないようだった。


静止した時間における宇宙(宇宙C)

 宇宙の膨張、物質の分子運動、エネルギーの移動など、全ての動きが止まっていた。静止した状態の宇宙は無と大して変わらず、見分けることが難しかった。


逆行する時間における宇宙(宇宙D)

 膨張が限界に達すると、宇宙はコンと音をたてて収縮を始めた。ボールの中で膨らみつつある風船がボールの内壁に当たってから空気が抜けて収縮するようだった。時間が負の方向に流れる宇宙Dは、質量は一定のまま収縮していた。つまり、密度が大きくなっていった。無に戻るかと思ったが、予想に反して、有と無の境目で再び膨張し、時間は正の方向に流れ始めた。


宇宙の最後(宇宙E→無)

一番古い宇宙が限界まで膨張し、時間が逆行し始める瞬間、ふと宇宙Eは無に戻った。たとえるなら、ボールの中の風船がボールの内壁より大きく膨らんで破裂するのに似ていた。ただし、風船の残骸に相当するものは一切残らず無になった。宇宙の始まりのような爆発などはなく、なんの前触れもなく無に返った。


 少年は観察に使った宇宙とレポートを片づけた。ゲームをクリアしたときと似た達成感があった。少年は思った。これだけやれば、先生にシールもらえるかな。

「ご飯よー。下りてらっしゃい」

少年を呼ぶ声が聞こえた。

「はーい。わあ、美味しそう!いただきまーす。ねえお母さん、今日体育でね…」


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