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交錯世界の旭日旗  作者: 名も無き突撃兵
第一章 フィルディリア大陸動乱編
28/29

第21話

今回は非常に短いです。

また、後書きに重要なお知らせがあります。

西暦2021年3月15日

日本 東京

首相官邸 会議室

22:44 JST






「ふぅ……。まったく、あの分からず屋達には敵いませんね……」


 阿賀野 総理は官邸の会議室でそう呟いた。この場には阿賀野 総理と菅原 官房長官、滝田 国防大臣と他数名がいる。この場にいない人間は各々の仕事をこなしている途中だろう。


 この日、日本では臨時国会が開かれた。野党側が今次戦争に関しての説明を求め、政府与党側がそれに応えた形だ。


 そしていざ始まってみると、それはそれは大変だった。

 まず、野党側の足並みが完全に揃っていなかった。議題は今次戦争の推移に関してや、どこまで攻めるのを是とするかという戦争関連の様々なものだった。

 そして、旭日党を中心とする右派政党は『フォルワナ共和国の本土侵攻』を唱え出し、左派政党は『ここまででさっさと切り上げるべき』と主張する。それに加えて極左政党の民衆党は『政府の侵略行為に断固反対する』という議題からズレた態度を取っており、それがまた論争を呼んだ。

 阿賀野 総理は内心で『先に調整しとけよ……』と肩を落としていた。今挙げたのは大雑把なもので、細かいところでは同じ右派・左派の政党であっても意見が対立しているところもあった。


「ここ最近、大きな戦争もなかったし、さらには転移後初めての戦争だ。どこもかしこも少々浮き足立っている」


 そう言うのは、阿賀野 総理の隣に座る滝田 国防大臣。冷静に分析している風を装っているが、実際のところ彼も辟易としていた。


 転移前の話になるが、ここ最近は国難らしい国難に日本は遭っていない。そのせいか、変な政治家も増えたように思える。いわゆる平和ボケだ。

 その一方で1年前の異世界転移が紛うことなき国難であったが、政府の素早い行動と希望島の出現、さらには運にも味方されて日本は滅亡の危機からあっさりと抜け出してしまった。まだ油断はできない状況とはいえ、一時期は引き締まっていた空気がすぐに緩んでしまった。


 とはいえ、変な政治家が増えたのは、そんな人間を当選させてしまった国民が悪いのだが。国民も少々抜けているところもあったはずだ。


「政府の方針を伝えたら、案の定、左派や民衆党がキレてましたね」


 日本政府の方針。それはフォルワナ共和国への逆侵攻である。

 もちろん本土侵攻ではなく、ドートラス首長国とルアズ王国のすぐ隣にある旧ドリアナ王国領の奪還だ。

 それでも、彼らにとっては許せない事案だったらしい。民衆党はともかくとして、左派政党はフォルワナ共和国との平和的和解を求めている。もう力を見せつけたのだから、フォルワナ共和国とて交渉に応じるはずだと主張しているのだ。

 フォルワナ共和国に対して痛撃を与えた日本。フォルワナ人達がこれ以上、日本との戦いを望んでいるはずがない。そう考えているのだ。

 確かに正しいかもしれない。相手が元の世界の一般的な国家であったのならば。

 実際のフォルワナ共和国は政治と宗教が癒着し、歪んだ民族主義教育を徹底して行っている上に民主主義国家ではない。元の世界の常識を当てはめるのは危険と言えた。


「それが分からないのですかねぇ……」


 阿賀野 総理はため息混じりに言った。日本から下手に出てやる必要はない。あちらが求めてきたときに上から目線で応じてやればいいのだ。それが行われる前に、日本は欲しいものをもらっていく。


「旭日党も旭日党ですが。フォルワナ共和国本土侵攻なんぞやってられないですし……」


 ため息混じりに菅原 官房長官が言った。

 政府が逆侵攻の意思を見せていることから、旭日党はそれほど政府に対して文句はつけてこない。だが、あくまで『それほど』だ。

 旭日党はフォルワナ共和国本土侵攻を求めている。敵国を生かしておく理由はない……そんな考えからだろう。

 だが、はっきり言って、日本にとってそれが国益になるとは到底思えない。金と時間と物資を費やし、死傷者まで出してフォルワナ共和国を完全に屈伏させたとして、一体何が得られるのか。

 さらりと思いつく限りでも、日本とは異なる規格のインフラ設備満載の市街地に加え、下手をするとテロを起こされそうなくらいに非協力的な国民、そして頭の中がちょっと危ないオーラルド教会の聖職者達……。

 日本からしたらゴミだ。しかも処理するのに金と手間がかかる危険物ときた。そんなものは願い下げである。


「旭日党はさらに質が悪いですよ……。なにせ、最大野党。人気がありますからね」


 そうなのだ。旭日党は最大野党でそれなりに力のある政党であるため、完全に無視することもできないのが実情だ。とはいえ政府と与党である自由党としては、やっぱり本土侵攻は却下せざるを得ないが。


「……全く、先が思いやられるな……」


 滝田 国防大臣が疲れたように言う。国外にいる敵対国家よりも国内にいる敵対政党の方が強敵なのだ。少なくとも阿賀野 総理は彼の言葉に共感できた。


 そこで、また滝田 国防大臣のスマートフォンが鳴った。


「今度は何ですか? また不明船団ですか?」


 阿賀野 総理が苦笑しながら言う。滝田 国防大臣も「さあな」と肩を竦めてスマートフォンを手に取った。


「俺だ……。うむ、何が起こった? ……何だと?」


 一気に滝田 国防大臣の表情が険しくなった。ただでさえ強面の滝田 国防大臣だが、今の彼はヤクザも及び腰になりそうな顔をしている。

 それを横目で見ながら悠々とコーヒーを口に含む阿賀野 総理。慣れているとはいえ、彼もなかなか剛毅なものである。


 やがて滝田 国防大臣はスマートフォンを切って、阿賀野 総理に告げた。


「……フォルワナ共和国軍が前線にBC兵器らしきものを運搬したことをNINJAが確認した」


「ぶふぉっ!?」


 そして盛大にコーヒーを吹き出す阿賀野 総理。菅原 官房長官も含め、その他の者達もビックリした表情を浮かべていた。


「げほっ……。このタイミングですか。運が良かったのか悪かったのか……」


 阿賀野 総理はたまたま近くにあったティッシュケースからティッシュを取り出して、ぶちまけたコーヒーを拭きながらそう言う。


「少なくとも悪くはないだろう。本格的に侵攻作戦が始まってからだと何が起こるか分からんからな……。不確定要素を先に潰せると考えれば、むしろ幸運だったと言える」


「その通りですな。この場合、政治的にも少々混乱してしまう可能性があるため、極秘裏に、かつ速やかに処理する必要がありそうです」


 滝田 国防大臣の言葉にそう付け足す菅原 官房長官。

 敵がBC兵器を用いてきたとなれば、旭日党辺りは『フォルワナ共和国殲滅論』を強め、左派政党連合はフォルワナ共和国に対する妥協をさらに強く求めてくるようになるかもしれない。そうなると面倒だ。


「そうですね……。空爆をするのも手ですが、この件はこのままNINJAに極秘裏に処理してもらいましょう。NINJAに『実力をもってBC兵器を無力化せよ』と伝えてください」


「了解した。まぁ、連中なら上手くやってくれるだろう」


 滝田 国防大臣はそう言った。

 こうして阿賀野 総理達は大忙しの夜を過ごすのだった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




西暦2021年3月16日

ドートラス首長国 カルシア近郊

捕虜収容所

10:07 現地時間






「ここが捕虜収容所かー……なんか、避難民の仮設住宅キャンプみたいだな」


 眼前の景色を見て、チャラそうな青年……祐哉はそう言葉を漏らした。


「実際、仮設住宅を多用しているからな。当然だろう」


 冷静にそう言うのは蓮夜だ。

 この日、第一特別任務大隊隷下の第2機動歩兵小隊の蓮夜、祐哉、純平、健の4人ともう1人……オペレーターの唯は、カルシア近郊の捕虜収容所に来ていた。


「ったく、上も鬼畜やなぁ……。休日返上して捕虜達と交流してこいなんて」


 純平がぼやいた。現在、日本軍は逆侵攻の準備中であり、後方支援部隊はもちろんのこと、手伝いに駆り出されている一般歩兵部隊も大忙しである。逆に暇なのが蓮夜達のような特殊技能兵達だったりする。彼らはいざという時のために休んでいるのだ。


 だが、蓮夜達は何故か捕虜収容所への出向を命じられた。理由は捕虜との交流である。


「ま、近いから別に構わないんだがな」


 祐哉は肩を竦める。一般部隊は国境近くまで進軍しているが、蓮夜達第一特別任務大隊のベースはカルシア近郊にある臨時駐屯地だ。より詳細に言うと、捕虜収容所の隣だ。

 第一特別任務大隊のベースが後方にあるのは、機動兵装や装甲歩兵のパワードスーツのメンテナンスには特殊な機材が必要であり、それが割とデリケートだからだ。一応、橋頭堡としての設備を整えている臨時駐屯地の方が、前線よりはマシだということでこちらに置いてある。

 さらに、第一特別任務大隊のような特殊な部隊は前線に張りつけるような部隊ではないことも挙げられるだろう。


 ちなみに、先日までは強襲揚陸艦『千代田』の指揮通信所を間借りしてオペレーター達による後方支援が行われていたが、今は臨時駐屯地の方にその機能は移してある。


「むぅ……。しかし、特務大尉にも何か考えがあるはずだ」


 健がそう言うが、祐哉は怪訝そうな表情を浮かべる。


「そうかぁ? あの隊長、ぜってぇ変なことを企んでやがるぜ」


「……高橋 少尉もいつも変なことを考えていそうですから、似た者同士ですね」


「ぐふっ……!」


 唯がさらりと毒を吐いて祐哉のメンタルを削る。平常運転である。


「何はともあれ、命令だし行くしかないだろう……」


 蓮夜は諦めたようにそう呟きながら足を前へと進めた。他の4人も似たような様子で彼についていくのだった。







更新が遅れて申し訳ありませんでした。しかも話が短いという……


今回お知らせしたいのは、3月上旬辺りまで更新できないということともう1つ。

実は新しい小説を書こうかと考えています。そちらも日本転移系なのですが、そちらは本作よりも現実に近い設定になっています。出てくるのは自衛隊ですし、歴史改変も多分ありません。ただ、時代が2030年代だったりしますが……。


3月以降は新しい小説をメインにして、こちらはサブにする予定です。更新は牛歩状態となりますが、少しずつ進めていきます。自分勝手だとは思いますが、やっぱり趣味でやっているので好きにやらせていただきます(笑)。


新しい小説のタイトルは未定です。

では。


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