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交錯世界の旭日旗  作者: 名も無き突撃兵
第一章 フィルディリア大陸動乱編
19/29

第12話

西暦2021年3月11日

日本 東京

首相官邸 記者会見室

08:22 JST





 この日、首相官邸の記者会見室には多くの報道陣が集まっていた。その報道陣には、日本の報道機関はもちろんのこと、エレミア共和国やスレイン諸島連邦の報道機関も含まれている。

 それだけ、ここで発表される予定のことは注目度が高いというわけだ。


 人が集まれば、その分ざわめきの音も大きい。しかし、阿賀野 総理がメディアの前に姿を現すと、ざわめきの音が消え、取って代わってカメラのシャッター音があちらこちらから連続して響いた。連続したフラッシュが室内をストロボのように眩く照らす。


 普段は穏やかそうな表情をしている阿賀野 総理であるが、今回は表情を引き締めている。それが場の空気をより緊張させていた。


 阿賀野 総理は演台に立つと一礼して口を開いた。


「……おはようございます、皆さん。今回の記者会見は日本国民の皆さん、並びにJ-EFCTO各国やスレイン諸島連邦の国民の皆さんも気にかけていらっしゃるであろう、フィルディリア大陸中部で起きたフォルワナ共和国との武力衝突についてのご報告です」


 場の緊張感がさらに高まる。これは重大発表だ。その重大発表が行われる現場に自分がいることで、リポーターやカメラマン達は否応なしに心臓の鼓動のスピードが上がる。


「昨日、早朝。我が軍はフォルワナ共和国への反撃を開始致しました」


 おおっ! という声が記者会見室に響き、同時にシャッター音とカメラフラッシュが連続的に起こる。


「反撃の第一打は日本空軍の戦闘機部隊です。ドートラス首長国方面及びルアズ王国方面に展開したF-15J 戦闘機の部隊が両国地上軍への空爆へ向かおうとしていた敵機を全て撃墜。そのすぐ後に、旧ドリアナ王国領にある北部のアレーナ飛行場、南部のブラヴィル飛行場……この2つの敵前線航空基地をF-2A 戦闘機の部隊が完膚なきまでに破壊しました」


 それを聞いた外国人メディアの面々はどよめいた。自分達の祖国よりも遥かに強大なフォルワナ共和国の軍隊を、まだ一部に過ぎないとはいえ撃滅してしまったのだ。

 侵攻してくるフォルワナ共和国軍航空戦力の速やかなる殲滅。そんなことをやり遂げたという日本政府の発表は彼らに良い意味でのショックを与えた。


 一方の日本メディア。こちらは少し興奮した様子はあるものの、外国のメディアに比べれば冷静であった。

 日本軍とフォルワナ共和国軍の戦力比較は各テレビ局で既に為されており、その結果、日本が圧勝すると予測がついていたのだ。無論、油断は大敵である。しかし、現実問題として技術格差に軍事力の差、そもそもの国力の差が浮き彫りとなっていることは日本では庶民にまで知れ渡っている。

 日本空軍の手際の良さには感嘆することはあっても、敵航空戦力の撃滅をしたこと自体に対しては驚くことはなかった。


「そしてそのすぐ後、フィルディリア大陸の南北で日本海軍の主力とフォルワナ共和国海軍の主力が衝突致しました。結果、我が軍は敵主力を完全に殲滅。一帯の制海権を確保しました。海空合わせて、我が軍のこれまでの死傷者はゼロです」


 阿賀野 総理から放たれる言葉は現状において完勝していることを示すもの。日本空軍及び海軍は、被害を出さずにフォルワナ共和国空海軍を撃滅したのである。


「我が国は基本的に平和を尊ぶ国家であります。それの証明が、フィルディリア大陸東部諸国との交流です。我が国は、諸国との交流を深め、経済で協力し、互いに未来へ向かって発展していける共栄圏を創り上げることを目指しています。誰もが幸せに暮らしていける国際社会を、まだ限られた地域ですが、実現しようと日々邁進しているのです!」


 阿賀野 総理の言葉に嘘はない。嘘はないが、本当のことでもない。いわゆる建前だ。

 日本が諸国との交流を深めて経済で協力し、共栄圏を創り上げようとしていることに関しては真実である。しかし、日本の狙いはそんな綺麗事じみたことではない。

 諸国を発展させるのは当然だが、日本が本当に狙っているのは、日本の影響力を各国の経済や政治、軍事に及ぼすことだ。それによって日本を中心とした国際秩序を形成し、日本にとって都合の良い新世界を創り上げるのだ。日本の究極的な狙いはそこである。

 その際、日本と関係の深い国は各々で国益を得ることができる。互いに損はない。大損するのは日本と日本を中心とした国際秩序に歯向かった連中である。


 そんな思惑は表に出さず、そんな発言を阿賀野 総理は行った。


「ですが、フォルワナ共和国はそんな我が国の思いを踏みにじるが如き暴挙に出ております。ドートラス首長国やルアズ王国への軍事的侵攻……これは決して、我々には許容できない行為であります。故に我々は武力行使に出ました」


 静かに聴く聴衆と化した報道陣。新世界において最大最強の国家の総理大臣の言葉だ、この世界……少なくともJ-EFCTO諸国やスレイン諸島連邦における影響力は計り知れない。


「我々は必ず勝ちます。愚かな侵略行為を阻止し、平和を取り戻してみせます。各国の方々……とりわけ、現に侵略を受けているドートラス首長国とルアズ王国の方々には我々日本を信用していただきたい。我々があなた方を見捨てることはないと」


 阿賀野 総理の発言を受けてJ-EFCTO各国……特にドートラス首長国とルアズ王国の報道陣は沸いた。日本の総理大臣が、必ず助けるということを確約したのだ。既に実行に移されているとはいえ、改めて宣言するということに大きな意味があるのだ。


 日本にとってもこの発言は旨味がある。日本がJ-EFCTO加盟国を助ける旨の宣言をすることによって、J-EFCTO各国の日本に対する信用度を向上させる。そして、未だに加盟していないスレイン諸島連邦を加盟の方向へ向かわせる。むしろ、阿賀野 総理はそれを狙って発言していると言っても過言ではない。


 スレイン諸島連邦は確かに技術力は高い。しかし、それだけで自国防衛ができるわけではない。それを政府や軍だけでなく、国民だって分かっているのだ。彼らにとっては、安全保障上の観点からJ-EFCTOに加盟するのは諸手を挙げて歓迎すべきこと。しかしながら一部勢力がそれに抵抗しているのが現状だ。阿賀野 総理のこの発言はそんなスレイン諸島連邦を後押しする意図も含まれているのである。


「では、質問を受け付けましょう」


 阿賀野 総理がそう言うと、各メディアより我先にと手が上がる。

 最初に当てられたのは日本のメディアの1つであった。


「日本産業経済新聞の杉田すぎたです。私は、何故、今回の報告を総理自らが行われたのかが疑問です。通例で考えると、国防大臣か軍の高官が行うものだと思われますが……?」


 杉田 記者の質問はある意味では当然かもしれなかった。こういった軍事的なものは、その道の人間が行うものであったのだ。今回が例外的なのである。


 阿賀野 総理はその質問は想定済みだと言わんばかりにすらすらと答えた。


「それは、この戦争は特別なものだからです。我が国が今まで経験してきた戦争とは、また少し異なる状況なのです。新たな世界、新たな情勢、新たな国々……。そんな中で行われた武力衝突は、今までのものとは事の大きさが異なるのです。そのため、政治・軍事の全ての責任を負う私自らが、この壇上に上がったわけです」


「そうなのですか、ありがとうございます」


 礼を言って杉田 記者は席に座った。

 阿賀野 総理としては、本来の目的は先の宣言を行うことであったのだが、さすがに本音を漏らすわけにもいかないため、そういった建前を述べるに留まった。例え建前であったとしても、新聞の記事にはなるのである。あとは各社でいろいろな推測が述べられることになるだろうが、所詮は推測である。


「他の方」


 阿賀野 総理がそう言うと、再びたくさんの手が上がる。


「では、そちらの方」


 次に当てられたのは、ドートラス首長国のメディアだ。


「ドートラス首長国、ルーディック新聞のオルラルドです。ニホン軍は今後、どのように作戦を進めていくのでしょうか? そして、アガノ総理は、どのようにして戦争を終わらせるつもりなのですか? お答えください」


「日本軍の行動については作戦に支障をきたす可能性があるものも存在すると思われますので、お答えできかねます。戦争の終わらせ方については……そうですね、無理矢理にでも相手を和平交渉の席につかせる、とだけ申し上げておきます。フォルワナ共和国本土侵攻は、選択肢としては存在しておりますが、それは最終手段であると認識していただいて結構です」


 礼を述べてオルラルド記者は座った。

 その後も何度か質疑応答は行われたが、阿賀野 総理は答えられることを最小限に答えただけで終了した。余計なことを言い過ぎるのは政治家としては三流であるが故に、阿賀野 総理の判断は間違ってはいなかった。


 このニュースは、日本ではテレビやネットで速報が飛び交い、各新聞の夕刊の一面を飾った。諸外国でもその日の内にラジオやテレビにて報道されることとなった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



同日

ドートラス首長国 リードルトラル

西部防衛線臨時司令部

08:30 現地時間





 ドートラス首長国陸軍西部防衛線司令官のマウザー大将は、先ほど届いた報告が信じられなかった。

 リードルトラル市内にある庁舎を臨時に司令部とし、その中に設置された無線機の前でマウザー大将は愕然としていた。


「敵の空軍と海軍が壊滅し、陸軍は行動不能……だと?」


 骨を折ってギプスをはめながらもマウザー大将の側で職務を果たしていた副官も、その報告には驚愕を禁じ得なかった。


「……予想以上ですね。これ、昨日の朝からの戦果ですよね?」


「ああ、そうらしいな……。フォルワナ共和国軍は化け物みたいに強かったが、まさかニホンがそれをも容易く喰らう化け物だったとは……」


「強い強いと思っていましたが、これほどまでとは……。勝率は高いと聞いていましたが、ここまで圧勝だなんて……」


「うむ……。どうやら、我々とフォルワナ共和国の差よりも、フォルワナ共和国とニホンの差の方が大きいらしい」


「どんな怪物国家なんですか、ニホンって……」


 副官が呆れたように呟く。マウザー大将も同感であった。日本に関して言えば、この世界ではパワーインフレもいいところである。他を圧倒し、世界を圧巻しうる驚異的な国力と軍事力、さらには経済力に技術力……。


「ニホンが帝国主義国家でなくて、本当に良かった」


「同感です。我々では手も足も出ませんよ……」


 疲れたような表情を浮かべる2人。強大な存在は敵味方問わずに気苦労の元である。


「……ふむ。今朝、カルシアにニホン陸軍が到着したらしいな。リードルトラルとカルシアは大して離れていない。援軍はもうすぐそこ、といったところか」


「フォルワナの連中もニホン空軍の攻撃で補給が絶たれ、事実上の行動不能状態です。……警戒を解くことはできませんが、おそらく我々は助かったのではないでしょうか?」


「……そうだな。だが、ニホン陸軍がここに来るまでは責任を持って警戒を続けろ。油断していてリードルトラルを盗られました、では話にならん」


「了解です」


 副官は頷いた。


「マウザー大将!」


 そんなとき、マウザー大将達がいた部屋に飛び込んでくる男がいた。


「おい、大将閣下の前だぞ!」


 副官が飛び込んできた男に注意する。いきなり入ってくるのは不敬である以前にマナー違反だ。副官が怒るのも仕方ないことである。

 だが、マウザー大将は副官を手で制す。


「君は……ガイル・オーメル少佐だったな?」


「はっ! 失礼しました、マウザー大将! 私はガイル・オーメル少佐であります!」


 瞬時に佇まいを直して敬礼する男……オーメル少佐。

 彼はフォルワナ共和国とJ-EFCTOとの戦争の最初……フォルワナ共和国空軍と交戦したドートラス首長国空軍の戦闘機パイロットである。同時に飛行隊長でもあった。残念ながら、生き残ったのは彼だけで、彼の機体も失われてしまったが。


 彼は上半身に服を着ず、代わりに至るところに包帯を巻いている。見るからに怪我人だ。そんな彼が息を切らせてここに来たということは……。


「……ニホン軍の戦果を聞いたのかね?」


「……はい」


 オーメル少佐は頷いた。


「マウザー大将……。ニホンの連中の戦果は事実なのですか?」


「ふむ……。少なくとも政府や参謀本部は事実だと確信しているらしい。実際、昨日の朝から空爆がピタリと止み、それ以後、フォルワナ共和国空軍の航空機を見た者はいない」


 それを聞いたオーメル少佐は目を見開いた。


「……悔しいかね?」


「……! いえ……」


「本来なら、君自身の手で引導を渡してやりたかっただろうが……」


「いえ、私では無理でしょう。……私にもよく分かりません。仇討ちしてくれたことには感謝していますが、私自らがそれを為したかったという思いもあります」


「……分からんでもない。私とて悔しい気持ちはある。祖国を守ることが叶わず、他国の力を借りねばならぬなど……。だが、仕方ないことなのだ。我々は弱い……。そんな我々に、ニホンは手を差し伸べてくれた。悔しい気持ちは分かるが、まずはニホンに感謝せねばならない」


「……そうですね」


 オーメル少佐は力尽きたように、その場に座り込んだ。座り込む、というよりは崩れ落ちるという表現が適切かもしれない。


「ああ、もう……怪我人が無茶するから……」


 骨を折っても職務を全うしている自分を棚上げしてそんなことを言う副官。思わずマウザー大将は苦笑するのだった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




西暦2021年3月12日

ドートラス首長国 港町カルシア

港湾 強襲揚陸艦『千代田』甲板

00:14 現地時間





 闇夜の海。港町カルシアから少しだけ沖に出た海上に浮いている『千代田』の甲板には、フィルディリア大陸の人間からすれば異形と言わざるを得ない航空機が5機、並んでいた。

 その航空機はJV-22『オスプレイ』。アメリカが開発したティルトローター輸送機の日本仕様である。アメリカが運用している本家に対し、三菱重工が生産しているこれは、エンジン出力の向上によって輸送可能重量が強化されている。


 JV-22のそれぞれには、既に'お客さん'が乗っていた。


 第一特別任務大隊の戦闘部隊である。内、1つは機動歩兵中隊20名が、残り4つの機体には2個装甲歩兵中隊およそ100名が分乗している。


「よぉーし、野郎共! 作戦内容は頭に入れたか!?」


「「「おう!」」」


 黒い鋼鉄の人型のナニカが猛っている。異様な光景である。

 彼らは第一特別任務大隊隷下の機動歩兵中隊。蓮夜達が所属している部隊である。

 黒い人型のナニカは、18式機動兵装を身につけた機動歩兵達。暗い機内の中だが、人の眼を模して配置されたデュアルセンサーが青白く煌めいている。その数40個20対。


 この部隊を指揮するのは立川たちかわ 特務大尉だ。割と豪快な性格をした男であるが、機動歩兵の訓練課程をクリアした人間である。頭脳明晰かつ高い戦闘能力、そして状況判断能力……それらに加えて戦闘に役立つかは分からないが理工学系の知識と技術を持っているのだ。



 今回の任務は、少々特殊だ。隊内ではその内容から、『拉致・誘拐・監禁の犯罪者大作戦』だとか何とか言われている。


 これより彼らは闇夜に乗じて敵野戦司令部を強襲、敵侵攻軍のトップ連中を'捕縛'する。

 この作戦を決行する理由はいくつかあるが、その内の1つは停戦交渉を有利に進めるためだ。フォルワナ軍将官はフォルワナ共和国における権力者である議員の親族が多いということが諜報組織『NINJA』の情報収集によって判明している。

 よって、彼らを取っ捕まえて捕虜にすることで、人質とすることができるのだ。親族を人質に取られた議員が数多く出た場合、さすがに戦争続行を叫ぶ勢いも多少は減じるはずである。


 無論、フォルワナの権力者に対する圧力をかける手は他にも打つ予定だ。むしろ、そちらがメインでこちらはサブである。だが、こういったプレッシャーの積み重ねが相手の継戦の意思を挫くのだ。


「いいか!? 俺達は国家公認の誘拐犯だ! 無駄な殺生はせず、多くの人質を拐うことを考えろ! 手足を撃ち抜くことは許すが、極力殺すなよ!」


「「「了解!!」」」





「へへ……。国家公認の誘拐犯だってよ、俺達は」


 祐哉が愉快そうに笑う。

 機動歩兵中隊を乗せた『オスプレイ』がふわりと浮かび上がる。


「全くもって人聞きの悪い……」


 蓮夜は呆れた様子だ。凄まじい威圧感を放つ黒色の機動歩兵がヤレヤレと言わんばかりに首を横に振る姿はなかなかシュールである。


「……むむむ、今回は爆破任務はなしか……」


 蓮夜の部下である爆弾魔の健は、爆弾による破壊工作ができないとあって少々テンションが低い。


「ったく、特殊歩兵による奇襲だけやからなぁ……。俺のドライブテクニックを見せる機会がないやんけ……」


 同じく蓮夜の部下である、暴走族の渾名を持つ純平も、自分の得意分野が活かせないとあってテンションは低い。


『……お2人とも、やる気を出してください。給料分の働きは見せてください』


 テンションの低い健と純平にそう言ったのは、『千代田』艦内にある戦術作戦通信所で第2機動歩兵小隊の戦術支援オペレーターを務めている唯だった。


『……全く。少しは隊長を見習っていただきたいものです』


「おーい、なんで俺じゃなくて蓮夜なんだー?」


『……高槻 少尉を見習うのは倫理的にどうかと』


「ぐはっ……!」


『……さらには誘拐犯という肩書きが気に入ったようで。根っからの犯罪者気質ですね、気持ち悪い』


「ぐほぁ……っ!」


 抑揚のないソプラノボイスで心を抉られる祐哉。デジャヴである。


「そこまでにしておけ、神埼。それ以上やると、祐哉が『オスプレイ』からパラシュート無しで飛び降りてしまう……」


『……それは困りますね。現高度だと死にはしないでしょうが、機動兵装に過負荷がかかって故障するリスクがあります』


「俺の命の心配じゃなくてスーツの心配してんのかよ!」


 祐哉がそう叫ぶが、蓮夜と健と純平、それにこの会話を聞いていた機動歩兵達がヤレヤレと首を横に振る。


『……ヤレヤレ、です』


「ちっきしょー!」


 何だかんだで機内の空気は戦場に向かっているとは思えないほどに明るかった。


 今回投入されるのは、JAH-1『隼』戦闘ヘリ 3機とJV-22『オスプレイ』輸送機 5機、1個機動歩兵中隊と2個装甲歩兵中隊、捕虜輸送用のCH-47J『チヌーク』輸送ヘリが4機とその機内で捕虜に暴れられないように監視する歩兵1個小隊だ。それに加えてF-15J 2機が航空支援のために飛んでくる。

 その内、『隼』戦闘ヘリとCH-47J、それに乗った歩兵小隊は、『オスプレイ』とそれに乗る第一特別任務大隊の面々に対して先行していた。

 これは純粋なヘリである前者とティルトローター機である後者の速度差を考慮した結果である。



 舐めプと言われても言い返せない'捕虜狩り作戦'が今、始まろうとしていた。






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