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交錯世界の旭日旗  作者: 名も無き突撃兵
第一章 フィルディリア大陸動乱編
18/29

第11話

西暦2021年3月10日

ルアズ王国 沖合

海上

14:47 現地時間





「では、ついてきてください」


 司令官室の外の通路で待っていた篠原 上等兵は、クーゲル大佐が会談を終えて出てきたところで彼にそう告げた。

 クーゲル大佐は頷いて彼についていく。


(こうして見てみると、ニホンの船の通路は広めに作られているな……)


 クーゲル大佐はそう感じた。

 そんな彼の心情を察したのか、篠原 上等兵は説明する。


「この船は機械化やシステム化によって省人数化に成功しています。艦の大型化と省人数化によって余った艦内スペースは、通路を広くしたり、1人辺りのプライベートスペースを広くしたりと、艦内環境の向上に使われていますね。ほら、通路が広いと急ぐときに便利ですし、プライベートスペースが確保されていると乗員のストレス軽減になりますし」


「なるほど……。人間が船を操るのだから、彼らが最高のコンディションで能力を発揮することが艦という1つのユニットの能力向上に繋がると……」


「その通りです。確かに我が軍はハイテク装備などによって強力なユニット戦力を維持しておりますが、やはり扱う人間にも気を遣った方が全体的にパフォーマンスが上がりますので」


 クーゲル大佐は何度目かも分からない感嘆を感じた。日本軍はフォルワナ共和国軍よりも兵を大事にしている。フォルワナ共和国軍は正面装備にばかり目を向けて、こういったところには気がつかないのである。


(やはりニホン軍は先進的な思想の下に兵器の設計をしている。恐らく、国家運営においても……)


 クーゲル大佐は本土に戻っていた頃に同僚が言っていた話を思い出す。


(周辺国を支配しない国は弱い。それだけの力がないからだ。だから、弱小国が寄り集まる大陸東方など恐るに足らない、か……)


 クーゲル大佐は、それはフォルワナ共和国のいた前世界においてしか通用しない理論だと思った。

 周辺国を植民地支配しない日本はこれほどまでに強大なのだ。周辺国を脅かし、滅ぼして財産や土地を奪っていく以外の国を富ます方法を日本は知っているのだ。


 共存繁栄。日本が周辺国と連携し、日本も周辺国もそれぞれの利益を上げていく。それが日本の基本戦略なのだろう。


(つまり、我々はそれを脅かしてしまった。だからニホンは我々を追い返そうと軍を展開した。共存繁栄の仲間を守るために)


 クーゲル大佐は祖国の敗北を確信していた。ここまでの力の差を見せられて、まだ勝利できると言い続ける者など……


(……いるかもしれんな)


 祖国が敗北することで破滅を迎える者も多いはずだ。

 当然ながら現大統領のゴルナー・ドレルは敗戦の責任を問われることになるだろう。もちろん、軍部にも敗戦の責任を問われる人間は数多くいるはずだ。

 さらにはフォルワナ人資本家。彼らは植民地への投資にかなりの金をかけている。特に旧ドリアナ王国領には。というのも、あの一帯にはレアメタル系列の鉱床の存在が示唆されているのだ。ここを押さえることができれば、かなりの利益を見込めるはずだ。


 だが、日本の登場によってそれは脅かされることになる。彼らは己の保身や利益のためにも敗北を認めるわけにはいかないだろう。その結果、死ぬのは軍人や一般市民である。


(何とかならないものか……)


 そう思うクーゲル大佐だが、彼は捕虜の身。さらに政治関係者というわけでもないため、何かをすることなど不可能である。



 そんなことを考えながら歩いているときだった。彼が現れたのは。


「よう、フォルワナ人」


 通路の曲がり角から突然現れた人影は、いきなりそんな言葉をクーゲル大佐に投げかける。


 彼が着ている緑色を基調とした服装の胸にはウイングマークがついている。誰にでも分かるような羽のマークだ。つまり、彼は『赤城』航空隊所属のパイロットである。

 顔立ちは平凡よりも少し上、といったところだが、その顔に張りついているニヤニヤとした笑みに対する感想は人によって別れることだろう。

 どこか斜に構えたような、悪く言えば人をバカにしているような雰囲気を湛えている。しかしながら、同時にただ者ではないオーラも纏っていた。


「……五十嵐 少佐、ここで何やってんですか?」


 ジトッとした目で彼……五十嵐 少佐を見る篠原 上等兵。五十嵐 少佐は笑いながら「大したことじゃないんだが……」と前置きを言った。


「ちっと、フォルワナ海軍士官とやらの面を拝みに来たんだよ……。ま、俺らと同じ人間だということしか分からんな。あ、あと前世界のゲルマン系に似てるか?」


「……はぁ。あなたという人は……」


「褒めるなよ、篠原~。照れちまうじゃねぇか」


「誰が褒めてるって言うんですか、誰が」


 士官と兵の会話とは思えない内容。しかし、それも仕方ないのかもしれない。五十嵐 少佐の纏う雰囲気が絶対的な上下関係の介在を許していないのだから。


「んじゃ、ちっと自己紹介させてもらうぜ? 俺はこの『赤城』の艦載機のパイロットで、第31航空隊の隊長だ。んで……」


 彼は次の言葉との間に1拍置いた。


「あんたらの艦隊を攻撃した航空隊の隊長でもある」


 クーゲル大佐は目を見開いた。だが、それは憎しみや恨みを孕んだものではなく、純粋な驚きのためだ。


「あなたが……。私は『リノリア』艦長のクーゲル大佐です。元艦長ですがね」


「そうかい。……あんたらが最後に見せた艦隊機動、俺は内心であれを高く評価しているんだ。あれを指示したのは艦隊司令か?」


「……そうです」


「……へぇ、そうかい」


 言葉ではそう返しつつも、クーゲル大佐の言葉が一瞬詰まったのを五十嵐 少佐は見逃さなかった。


「……で、その艦隊司令はどうしたんだ?」


「……名誉の戦死を遂げられました」


「名誉の戦死、ねぇ……」


 五十嵐 少佐の見透かすような目にクーゲル大佐は落ち着かない気分になった。心の内を読まれているような気がしたのだ。


「ま、いいや」


 そう言って五十嵐 少佐が肩を竦めるのと同時に、クーゲル大佐の緊張は霧散した。


「んで、俺があんたと会いたかった理由のもうひとつが異文化交流というわけなんだが……」


「異文化交流……?」


「要は、あんたがどんな奴か知りたいってことだよ」


 悪ガキのような笑みを浮かべる五十嵐 少佐。


「あのー、少佐? 自分はクーゲル大佐を捕虜のところへお連れせねばならないのですが?」


「そうカタいこと言うなって。いいだろ、別に少しくらい」


「私の仕事が終わらんのですが?」


「ふむ……。ドンマイ?」


「はぁ……もういいです、好きにしてください……」


 篠原 上等兵は自由奔放な上官の説得を諦めた。この男はマトモに相手すると疲れるだけである。


「じゃあ、あんたに聞きたいことがある」


 先ほどまでのふざけた雰囲気が一気に消失する。五十嵐 少佐の表情は先ほどまでと違って至極真面目なものになる。空気がシリアスなものになり、張詰める。

 クーゲル大佐は一体どんなことを聞かれるのかと心の中で身構えた。

 そして、五十嵐 少佐は口を開いた。





「あんた、巨乳派か貧乳派、どっちだ?」


「は?」


 ……効果音をつけるとするならば、アホウドリの鳴き声だろうか。この空気を表現するならば。


 篠原 上等兵が呆れた表情をする。クーゲル大佐もさすがに呆気に取られてしまう。


「いや、だから巨乳派か貧乳派か、どっちなんだ?」


「む、むぅ……。それは答えねばならないのですか?」


「当たり前だ! 異文化交流だからな!」


 篠原 上等兵が小さく「……絶対に違うと思う」と呟くが、五十嵐 少佐は止まらない。


「ちなみに俺は巨乳派だ!」


 クーゲル大佐も篠原 上等兵も特に知りたいわけでもない情報を掴まされてしまう。


「さぁ、吐け! どっちなんだ!?」


「え、いや、まぁ……。妻が、その、慎ましい方なので……貧乳派で」


「おお、そうか! 俺の嫁は巨乳だぞ、Eカップだからな!」


 完全にスケベなオッサンと化す五十嵐 少佐。クーゲル大佐の表情は引き攣っており、篠原 上等兵は疲れ切ったような表情をしている。


「俺は巨乳派だがな、貧乳派のことも一定の理解をしているつもりだ。まぁ、胸について今からあんたと語り合いたいのは山々なんだが、俺もまだ仕事がある。任務報告やらが残ってるからな。あんたと語れる日を楽しみにしているぜ」


 じゃあな、と言って2人と別れる五十嵐 少佐。

 クーゲル大佐はどうしたらいいのか分からず、とりあえず篠原 上等兵の方へ向く。


「……私を見られても困ります。……行きましょうか」


「……そうですな」


 嵐が去った後、2人は何とも言えない表情を湛えながら通路を歩いていった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





西暦2021年3月11日

ドートラス首長国 港町カルシア

7:11 現地時間






 日本軍の本格的反撃が始まった翌日。この日の太陽が昇りつつある時間帯になっても、日本軍による攻撃は継続されていた。

 後方支援拠点を徹底的に、効率的に空爆する日本空軍。その一方で敵主力部隊には手を出さずにいた。

 フォルワナ共和国陸軍主力部隊は日本空軍による空爆で指揮系統や兵站に混乱が生じており、ドートラス首長国方面部隊に関して言えば、現在地点の近くにあるドートラス首長国西部の都市リードルトラルへの侵攻すらままならない状況だ。

 さらには、先日のドートラス首長国軍の防衛線突破の際に使用した武器弾薬に燃料……それらの補給が満足に為されていないのだ。その補給物資は日本空軍の空爆によって灰にされていた。


 日本軍の狙いは単純明快。敵を動けなくしておいて、まとめて吹っ飛ばすのである。


 敵主力が補給や指揮がままならない状態で固まっている。

 これは敵主力の速やかなる撃滅を目論む日本軍にとって、歓迎されるべき状況なのだ。散り散りになって逃げられたり、逆にリードルトラルに侵攻されるのは日本軍としては避けたいところ。フォルワナ共和国陸軍は日本軍の思惑に見事に乗っかっているのだ。




 そして今。未だにドートラス首長国に足を踏み入れているフォルワナ共和国陸軍を倒すために派遣された日本陸軍部隊が、このカルシアに到着していた。


「で、でけぇ……! なんてデカさだ!」


 日本陸軍部隊を積んできた軍の輸送艦や民間のro-ro船、フェリーを見て驚嘆するカルシア市民達。彼らは港に集まって野次馬と化している。

 特に大型ro-ro船や軍用輸送艦は注目を浴びている。ドートラス首長国の戦艦よりも巨大な船だ、仕方のないことだろう。


 この輸送艦隊はカルシアの港湾機能ギリギリの規模であり、艦隊を受け入れるために一時的に港内の船を港外へ出さねばならなかった。もっとも、嫌がる人間などいなかったが。

 この艦隊こそ、待ちに待った強力な援軍を運んできた艦隊なのだから。


 カルシアに来た日本陸軍はおよそ4個師団。機甲兵力や航空兵力も含んでいるので、かなり強力な部隊だ。

 ドートラス首長国方面に展開するフォルワナ共和国陸軍の約10個師団規模に比べると少ないように見えるが、航空支援や圧倒的な技術的優勢、フォルワナ側の指揮系統混乱や補給不足を考慮すると十分であると日本軍上層部や政府は考えている。




 そして、カルシアに来た遣ドートラス部隊の中には日本陸軍最精鋭部隊の1つとして名高い第一特別任務大隊がいる。彼らはこの艦隊唯一の強襲揚陸艦であり、輸送艦隊の旗艦でもある千歳型強襲揚陸艦『千代田』に乗っていた。


 彼らの任務スケジュールは他の部隊とは少し異なる。とある特殊任務のために彼らは上陸を行わずにいた。

 そして、その中には蓮夜達の姿もあったのだった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 千歳型強襲揚陸艦はそれほど大きな揚陸艦ではない。基準排水量で言えば12000tほどであり、大型揚陸艦である大隅型強襲揚陸艦の44500tに比べると小振りである。

 しかし、スケールが小さい分使い勝手は良い。そもそも日本陸軍が大規模な敵前上陸を行うことは現代ではあまり現実的な想定ではなく、たとえその状況が発生したとしても、4隻ある大隅型強襲揚陸艦と3隻ある千歳型強襲揚陸艦を総動員すれば、それなりの規模……1個師団規模の部隊を送り込むことができる。

 たった7隻と思うことなかれ、最強の軍事大国アメリカとて強襲揚陸艦は両手両足の指で足りるほどしか現役で動いていなかったのだ。敵前上陸の可能性が低くなっている以上、強襲揚陸艦の需要もそれほど高くはないのである。


 今回、この『千代田』が送り込まれたのは、第一特別任務大隊の作戦行動のためだ。


 第一特別任務大隊は日本陸軍最精鋭部隊に数えられる部隊である。その正体は機動歩兵と装甲歩兵(パワードスーツ歩兵)を運用する特務部隊である。

 装甲歩兵は歴戦の優秀なベテランを揃え、機動歩兵は適性が高く、様々な訓練やテストで高い評価を得た人間を揃えている。

 大隊という名の割には兵数は多くはなく、せいぜい合計して200名程度だ。実際に戦場に出向くのは2個装甲歩兵中隊約100名と1個機動歩兵中隊20名。残りは整備や戦術支援オペレーターなどの後方支援である。





「蓮夜ぁ……俺に彼女ができないのって何故だと思う?」


「知るか……」


 『千代田』の艦内の食堂で、対面同士に座る蓮夜と祐哉。

 彼らは朝食を取っていた。目の前のテーブル上には小山のように盛られたサラダとスープ、食パンを乗せたトレイを置いている。


「ちくしょー、彼女が欲しいぜ……」


 祐哉は欲望をたらたらと垂れ流している。


「お前、顔はそれなりに良いんだから、マトモにしていれば騙される女の1人や2人はいるんじゃないか?」


「騙されるってなんだ、騙されるって。俺をダメ男みたいに言うな」


「事実だからな、仕方ないだろう」


 そう言って蓮夜はサラダを頬張る。祐哉はため息を吐く。


「そう言えば祐哉、お前には女の子の幼馴染みがいるんじゃなかったか?」


 蓮夜が思い出したように訊ねる。


「ん? ああ、確かにいるっちゃいるんだが……」


 言いづらそうにする祐哉。


「どうした?」


「いやぁ……。連絡とか全くしてないしな。可愛い奴だったから、彼氏くらいいるだろ」


 小さい頃には結婚する約束をしたくらいに仲が良かったけどな、と祐哉は肩を竦める。


「機動歩兵の適性が確認されて、士官学校に入るとき以来、あいつとは会ってねぇや」


 祐哉の機動歩兵の適性が発見されたのは12歳のとき。つまり、それ以来は顔を合わせるどころか連絡すら取ったことがないらしい。


「……それはダメだな」


「だろ? ま、幼馴染みだからそういった気も起きないけどな」


 祐哉は笑ってそう言った。


 そこに新たな人物が登場した。


「……高槻 少尉にそういったご関係の方がいらっしゃるとは思いませんでした。人は見た目によりませんね」


 少女の声。抑揚が小さく、それでいて澄んだ声音だ。

 蓮夜と祐哉が声の方向に目を向けると、そこには小さな少女が朝食を乗せたトレイを持って立っていた。

 150㎝ギリギリあるかないかの小柄な身長。肌は白く、また肩まで伸ばしている髪の毛は銀色。

 顔立ちは童顔ながら端正なものであり、文句なしに美少女と呼べた。ところが、表情は蓮夜とどっこいどっこいの無愛想。その可憐さも相まって、人形めいた美しさがある。


神崎かんざきか」


「……特務少尉、どうも」


 蓮夜に対して頭を下げる彼女……神崎唯かんざき ゆい 軍曹。

 彼女は蓮夜率いる第一特別任務大隊隷下の第2機動歩兵小隊の後方支援オペレーターを務めている。これでも蓮夜と同い年の17歳だ。


 はっきり言って、彼女は周囲から浮いているのは否定できない。蓮夜達同様に若くして第一特別任務大隊に配属されているのだ、何かしら優秀な分野がないと配属されない。そもそも、彼女の年齢で兵士をやっている女性など世界広しと言えどかなりの少数派だろう。

 まぁ、特殊な理由があるのは確かだ。それに髪の毛の色も日本人離れしている。いろいろとややこしい事情があるのだ。


「……特務少尉、お隣よろしいですか?」


 唯は蓮夜にそう問うた。特務少尉という階級は、少尉と中尉の間のような階級だ。待遇のほとんどが少尉と同じであるが、余計な面倒がある分、給与は少し上がっている。微々たるものだが。


「構わない」


 蓮夜がそう答えると、「ありがとうございます」と言って蓮夜の隣に座る唯。そこに祐哉が声をかける。


「おーい、俺の隣でもいいんだぜ?」


 そんな彼に対して唯は軽く睨む。


「……嫌です。目がヤラシイです。キモいです」


「ぐはっ……!」


 抑揚のないソプラノボイスで心を抉られる祐哉。かなりのダメージを負ったように見える。


「お、俺……一応上官なんだけど……?」


「……階級を盾に女性に迫るなんて最低ですね、プライドはないのでしょうか」


「ぐほっ……!」


 祐哉はK.O.された。


「そこまでにしておいてやれ、神崎。このままだと祐哉が甲板から身を投げかねん」


「……それは困りますね、こんな人でもかなりのお金を国がかけているのですから」


「これでも機動歩兵なんだ、遺憾ながら」


「……遺憾ですね」


「……おい、お前ら。俺を虐めてそんなに楽しいか……?」


 祐哉が蓮夜と唯に問うた。問われた2人は顔を見合わせると、2人して肩を竦めた。


「なんか言えよ! なに、しょうがないやつだな、みたいな雰囲気出してんだよ!」


 これが3人の日常の風景である。普段はここに純平と健が加わるのだが、今朝は2人と合流することはなかったのだ。


「……そんなことよりも、そろそろテレビで昨日の戦闘の報道がされる時間ですね」


 唯が言った。艦内食堂にはテレビがある。もちろん普通の放送波など届くはずもなく、衛星放送である。そこには記者会見に臨む阿賀野 総理がフラッシュを当てられながら映っていた。


「海軍空軍の連中が大勝利したって報告するだけだろ……。軍事に少しでも精通している人間だったら予測済みだろうよ」


 祐哉が言う。実際、今次戦争の推移についての討論を行う番組があったが、討論するどちらのグループも日本が勝つ前提での主張のぶつけ合いだった。正確には、『フォルワナ共和国を追い返すだけ』か『フォルワナ共和国本土侵攻』か、という討論だったが。


 いつの間にか、食堂にいる全員がテレビに注目していた。

 さっきまで喋っていた3人も静かにテレビを見るのだった。





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