7/22
ひとがしぬということ7
果たして
襖を開いた梅岩は『それ』を目にした
眠太郎の部屋へは、ちょくちょく訪れたことがある。自由に使っていい……と許可を出したにも関わらず、眠太郎は自室に家具やインテリアの類を全く買おうとしなかった。そのため眠太郎の部屋は何もない殺風景なままだった。
そんな部屋が
まっさらだった壁も木板の床も
真っ赤に染められていた
部屋の奥でうずくまった
眠太郎は自らの
右腕を腹に刺し入れて
赤黒い内腑を
あらかた引きずり出していた
眠太郎の表情には
苦悶の跡は全く見えず
むしろ痒みに耐えかねて
全身を掻き毟ったような
被虐的な快楽に
耽った後のような
そんな表情をしていたのだ
死に至る自傷行為
眠太郎の肉体は
邪鬼の再生力を持つが
果たして再生するものか
木床にぶちまけられた
多量の臓物を目の前に
赤黒い腸を前に
梅岩は唖然としながらも
およそ現実離れした
光景に慄いて
意識が一瞬遠のいた