ひとがしぬということ3
果たして
梅岩の決意は空回りに終わってしまった
咲良は帝一門の手に余るほど強力な邪鬼に目を付けられ、命を失ったのだ。
絶対に守ろうと決めた女の子を、梅岩は守れなかったのだ。
しかもそれは、梅岩の読みの甘さが元で起こった事だった。
梅岩は眠太郎という部下に咲良の警護を一任していた。眠太郎は人の心に邪鬼の肉体を持つという、極めて稀な体質だった。それがゆえに人並み外れたな能力を持ち、それがゆえに人並み外れた不安定さも持っていた。眠太郎は咲良を守ることが任務であり、また咲良は眠太郎を人とは何たるかを教えることが任務だという意味も含んだつもりだった。
この二人を一緒にしたことは妙案であることは間違いなかった。だがお互いに若く未熟な二人を共にする危うさに無頓着であったことは、梅岩にとって失策だった。この若い男女が互いに特別な感情を抱くことのメリットばかり着目し、若い男女が互いに特別な感情を抱くことのデメリットに気付かなかったのだ。
眠太郎と咲良の痴話喧嘩の末に
僅かな時間とはいえ眠太郎が咲良から目を離し
邪鬼がその隙に咲良を狙ったのだ
邪鬼とて策を練ったのではなかった
不運が重なった、それだけの話
実質的に不可抗力
言い訳ならいくらでも思い浮かぶが
咲良を生き返らせることは勿論
梅岩や眠太郎を慰めるにも足らなかった




