表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/22

ひとがしぬということ21

葉山の頭には、あの少年のことが浮かんでいた。

(怪物小僧が成長してくれれば、或いは……)

まだ経験の浅い眠太郎は負けはしたものの、その近接戦闘力は既に老いた葉山を凌いでいる。いずれ、全盛期の葉山さえ凡人と大差ないほどの超絶戦力になることは明らかだ。あの少年が咲良とは懇意であることを葉山は知っていた。もしかしたら恋愛感情があったかもしれない。仇討ちに対する入れ込みは百合に負けず劣らずだろう。

「待つって、いつまでですか!?私がお婆ちゃんになるまでですか!?いったい何年待てば……」

百合は慟哭(どうこく)した。堰が切れたように涙が溢れ出た。いったい、どれほどの感情を押し殺していたのだろう。どれほどの悲しみに耐えていたのだろう。そう考えると、葉山までもが目頭が熱くなった。

「泣くな末原、長くは待たん。十年、十五年も待てば戦力が揃うだろう。あの小僧も大人になる。今は勝てんものもなんとかなるかもしれない。それに、忘れるな……」

葉山はたった今思いついた。百合にかけるべき、最も適切な一言を。

「咲良の仇はお前だけの仇じゃない。オレたち、全員の仇なんだ……」

そもそも、百合一人だけが背負うのが間違いなのだ。葉山も、梅岩も、眠太郎も、そして咲良を知る全ての人々にとっての仇なのだ。

(待ってろよ末原、いつか必ずや……)

葉山は乾ききった唇をギュッと噛み締めたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ