ひとがしぬということ2
咲良と姉の百合はその最悪のケースを経験した。四大家の一つである月森家で保護された姉妹が帝家に移された時、梅岩もまだ小学校に通う少年だった。同年代の百合と幼稚園に上がって間もない年頃の咲良は、交通事故事故で両親を失ったと聞いた。勿論それは不慮の事故などではなく、人ではない何かの仕業だ。
姉妹は幼い頃から他人には見ることも聞くこともできないものにつきまとわれ、悩まされてきた。灰色をした手が見えただの、ベランダの外で浮いている人影があるだのと騒ぐ娘たちの言い分を、両親は無視しなかった。娘たちに降りかかる正体不明の怪奇現象の数々に、分からないなりに懸命に対処しようと努めた。
引っ越しの繰り返しや霊障相談の行脚に暮れる日々。帝一門という有力な味方に遂に辿り着いたという罪に、姉妹に憑いたものは両親に死罪という罰を下したのだ。
梅岩は邪鬼の悪辣さに激昂すると同時に、憐憫の情にかられた。この二人は絶対に自分が守ろうと決めた。帝一門の庇護と引き換えに命を賭した彼女たちの両親の心意気を無駄にはしまいと思った。帝一門に頼りさえしなければ命だけは助かったかもしれないなどという結末には絶対にしまいと、固く心に誓ったのだ。