表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/22

ひとがしぬということ17

「しばらく、お湯でも見てなさい」

キッチンへと逃れた百合に向かって、葉山は先程とは打って変わった通りの良い、(かしま)しい地声を発した。

(オレも変わった)

なかなか帰って来ない百合を待ちながら、葉山はそう思った。以前のこの頑固老人だったら、用をとっとと済ましてこない百合に腹を立てたろうに

(オレも年をとった)

葉山はそう思った。若い頃には常に心の中で渦巻いていた烈火のような憤怒が、近頃はとんと萎んでしまったかのように感じる。


若き日の葉山は強かった。そして激しい男だった。

剣道八段の腕前で振るわれる清められた木刀は、数々の邪鬼を打ち倒してきた。帝家の退治屋といえば葉山を置いて他にはいないかのように噂されていた。実際には比肩する実力の持ち主が二人ほどいた。その二人は才はあったがまだ若く、数々の武勇伝をひけらかす葉山を(おそ)れつつも敬っていた。

それが、十七年前ほどのことだったか。所用で北方の地に出掛けて帰った葉山を迎えたのは、亡骸となった二人だった。

葉山が留守にしていた時に、帝邸に邪鬼が侵入したという。


当代最強の退治屋と(うた)われた葉山の力は、仲間を守るのに何の役にも立たなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ