ひとがしぬということ15
「……それで私、龍崎さんに言ったんです。今は娘さんたちに恨まれるかもしれない。二人の姉妹の待遇に差をつけるなんて、常識的に考えたらとても酷いことだから。でも、いつかわかってくれるって信じるべきです。お父さんだってやりたくてやったことじゃないって、わかってくれますって。アオイちゃんもマドカちゃんも、頭の悪い子じゃないでしょう。だって、貴男の娘さんたちだもの……」
ヤカンで湯が沸くのを待つ間、百合は雑談で隙間を埋めようとした。このままでは本当に茶飲みだけで帰る流れが出来てしまう。
(末原も同じ気持ちか……)
百合の考えは葉山にもわかった。葉山と同じことを考えている。
訃報を耳にしたくないのだ。面倒事、辛いことは無しに済ましたい。そういう考えが百合の頭に上ったことは容易に想像つく。いっそその通りに……などという余計な算段が葉山にも浮かんだが
(馬鹿馬鹿しい……)
葉山は愚考を振り払った。
「末原、今日……」
葉山は決意した。たとえ百合を傷つけることになったとしても、これは告げなければならないことだ。
「わ……わたしも……もし咲良が除け者にされるようなことが……あったら……きっと……」
百合は自爆した。
“肝心なこと”から話を逸らそうと頑張るうちに、自ら妹のことを話に出してしまった。