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ひとがしぬということ14

末原の家の内装は真っ白だ。いつもなら“清楚”さを象徴する色に見えたものが、今日ばかりは“空虚”を示すものに映った。そう、あのけたたましくも幸福だった末原家はもう戻ってこないのだ。脱いだ上着を放り出して百合に注意されたり、おかずに肉が無いことを嘆いて喚き散らしたりする、あの一人で三人分はやかましいあの子はもういないのだ。

「葉山さん。コーヒーと紅茶、どちらがいいですか?……そういえば梅昆布茶がお好みでしたっけ?申し訳ないですけど、切らしていて……日本茶と麦茶と鳩麦茶なら置いてありますけど……」

百合は本来あまり多弁なタチではない。妹には煩くいう割には気が利く方でもなく、葉山が言いださなければ茶の一杯も出さずに、妹に何かと文句を言うのが日常的な彼女の姿だったのに。動揺を隠しているつもりでも、やはり細々な態度から心根が透ける。

「……緑茶があるなら……」

茶を飲みに来たわけではない、という本音を殺して葉山は答えた。

違う

葉山は茶を飲むために、わざわざ痛む膝を堪えて帝邸から車も交通機関も使わず歩いたわけではない。

葉山は罪を犯しに来たのだ。

百合に絶望を与えるという罪を。

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