ひとがしぬということ13
帝家の仕事は死と隣り合わせだ。人ではないものとの戦いの中、数年に一度はこのような思いをさせられる。千年の歴史で蓄積されてきたノウハウを駆使しても、敗北するときは敗北する。だが頭でわかっていたところで、葉山らが背負う感情が軽くなることはない。
“末原”と標札の掛けられた小さなな一軒家に、葉山はついに到着してしまった。いっそ道に迷って辿り着けなければ良かったのに、と葉山はいらぬことを考えた。
末原百合が玄関口に出た。
「お待ちしてましたよ、葉山さん」
百合はまるで茶を飲みに来た客を迎えるかのような態度だった。
(気丈な子だ)
葉山はそう思った。百合は勿論、事情を知っている。葉山が何のために家に来たのか、知っている。葉山の伝えに来た言葉が、百合の抱いていた微かな希望を打ち砕くものであることを知っている。百合にとってたった一人残された肉親の死を知らせるものであることを知っている。
自分で自分の身を守る術を何一つ学べないくせにして、口答えばかりして姉の言うことをちっとも聞かなかったあの子が、もう帰って来ることはないことを葉山が伝えるために老体を鞭打ってわざわざ足を運んだことを百合は知っている。