過去話―鶯弥桜編―
これは私、鶯弥桜の過去のお話。
* *
私は貧しくないが豊かでもない、ごく普通の家庭に生まれた。
この時、家族は祖父母や両親、姉と私含め六人。後に祖父母の死後、妹と弟が生まれる。
幼少期のほぼ半ばまで、ガキ大将のような事をして。その事で色々な人に時に褒められ、時に怒られた。
その半ばを過ぎて。ある日、廊下を歩いている時に一人の男の子に会った。良く言えば、大人しい。悪く言えば、暗い。そんな子に、何だか放って置けない気持ちを抱いた。
三年生となって、ある日の事。たまたま図書室に行く途中、いじめの現場に出会し、いじめっ子共を懲らしめた。泣きながら逃げ行く後姿を見て、やれやれと思いつつ被害者に声をかけた。
「大丈夫?」
「あ、ありがとう。」
被害者はあの日の子だ。
「傷は?」
「痛みはあるけど、大丈夫そう。」
そう言い、見栄を張る為か。すくっと立ち上がろうとして、やってくる痛みに顔を顰めまた座る。
「もう。負ぶってあげるから。」
「良いよ。格好が付かなくなるし。」
「見栄張らない。」
そう言い軽く叩くと、痛みに彼は顔を顰める。
「そう言えば。私の名は鶯弥桜。貴方は?」
「さ、榊魁。」
「そう。じゃあ、榊君。」
私は半ば無理矢理彼を背負い―
「保健室へ行きましょう。」
「う、うん。」
保健室へと歩を進めた。
* *
私はその後間もなく彼への好意に気付き、そして寄せ始める。彼にその思いを抱く要因は、心根の真っ直ぐさと不器用な彼なりの優しさかな。その好意はきちんと成就し、嬉しき事限りなし。でも、嬉しくて小躍りしている場合ではない。これからだ。愛想尽かされないように、日々彼が出来る限り安心していられるように、色々な事を更に深く学ばないと。全ては彼と何時も共に過ごす未来をずっと幸せにする為に。そして彼の隣に相応しい人物である為に、彼について様々な角度からデータを更に集めないと。
後、私は何時でも恋人から次のステップに行けるよ。貴方が望むならどんな事もしていい。激しく、乱暴でも。どんなプレイでも。
私はあなたの為に在り続けたいから。




