子宮の王国
曼陀羅の 影に隠れて 屍を 喰らいて生きる 害虫どもの
神経を ちぎっては捨て 切断を バラバラ殺人 嘔吐を繰り返す
子宮から 洩れだす血糊の 行きつく先よ 死と生の欠片 マグマを感じて
いつまでも 生き延びるため 臥せては伏せる 抑鬱感の 模擬死の狐よ
現代の 分娩技術と 理想の嬰児よ フラスコの中の 精子はホムンクルスに
お互いに 依存の銀鱗 恋人たちの 身体を貪る 壊疽の恋愛
人体を 皿に並べて 雑草添えて 飢渇の地獄と 心臓のサラダを
ガルーダの 飛翔の涯よ その翼 深傷を負っても 颶風を切り裂く
大陸の 戦争孤児の 手首の欠損 日焼けに塗れた その皮膚の褐色よ
永遠の 睡眠に消えうる 催眠剤の たった一人の 名もない終焉
夕靄の 大量発生 密集の 冥々とした 蛞蝓の匐うダンス
乱暴に ただ犯された 白痴の少女 惚けた顔を するばかりだ
暗澹に 収斂されゆく つぶらかな 惑星の草群れ 宇宙絶滅
藤蔓の 捕縛の連なり 破損と鉄骨 何かが裂ける 音がするのだ
深甚の 恐怖の極に 闇の憂う 戛然とした 月光の孕み
霹靂の 夜に叫ぶや きまりの悪い 眼の充血した 水鶏を縊る
性交し 十月十日の 過ぎたるは 幼児の残骸 グロテスクなり
早産の 祈り届かず 冷たき体温 幼児を偲んで 子宮の王国
障碍の 我が子を殺して 三千里 黄昏に捧げた 贖罪の翹望
天の射す 雨に降られて 仰ぎ見れば 遥か空には 我が子の魂