3話
「え?ジェリックの使いじゃないの?」
誰ですかそれ…。
「すみません、私、ジェリックさんの事は存じ上げないのですが…」
「ふ~ん。嘘言ってる感じじゃないわね…ここに来れるなんてあいつの弟子くらいかと思ってたけど
世界は思ったより広いのね。
あなた、誰の元で働いてるの?もしかしてロスタニア?」
「いえ、ロスタニアさんという方も知りません。私は○○株式会社に勤めてまして…」
「は?」
「?」
「……。私の名前はエリーナ・スタミン。この森で隠居中の魔術師よ。あなたの名前は?」
「わ、私は成田麻綾と申します。○○株式会社の総務課勤務です!」
「そう…。取り敢えず何だから、中に入って。お茶でも出すわ」
「ありがとうございます?」
なんだかよく分からないけど、中に入れてもらえるみたいで良かった。
エリーナさんは、私が訳がわからなくてグルグルしている所に説明してくれたのでした。
「あのね、この森には、私が結界を貼って、魔力が無い者、悪意がある者は入れなくなってるのよ」
「魔力?! 結界?! な、なんですかそれ!」
知らない場所、魔力とか結界とか何やらファンタジーな言葉。
もしかして、変な所に来ちゃった?
エリーナさんは急に神妙な顔をして私に聞いた。
「ねぇ、あなた、どこから来たの?」
「ど、どこって、日本の…」
すると、フーッと息を吐くと
「ごめんね、ここに多分ニホンという場所は無いわ。そして、貴方の話してる言葉。
多分私以外には通じないと思うわ」
「え…。でも、会話出来てるじゃないですか!」
すると彼女はさらりと緑色の髪をかきあげると
「このピアス。これが多分翻訳器として働いてると思う。これ、私が妖精の話を聞くために開発した
マジックアイテムなんだけど」
妖精?どういう事?またしてもファンタジー。
「もしかしたらあなた、別の世界から来たのかもしれないわね」
エリーナさんが難しい顔をして言う。
もしかしたら、そうなのかもしれない…。会社の階段が異世界に繋がっていたなんてびっくりだ。
でも、そのお蔭で怪我しなかったんだし、いいのかな?…いいのか?あれ?
「あの、還る事って出来るんでしょうか?」
「う~ん。分からないけど、そういう魔法を考えるのも面白そうね~。
いや~200年生きてきたけど、こんな面白そうな事に当たった事無いわ~。
よし!頑張って研究して帰り方発見しよう!これで私も伝説の魔術師よ!お~っほっほ!」
………。
なんだかすっごく嫌な予感しかしないけれど、この人しか頼れる人はいなさそうで…。
変な世界に来て心配なんだけど、怖いんだけど、でもなんか少し面白そうだと思ってる自分がいたり…した。
泊めてもらった翌日。
「じゃ、あなた、え~とマーヤ。これから私の弟子って事で!」
「あ、はい。よろしくお願いします」
という事は私、魔法使いの弟子なの?!わ~~~!きゃ~~~!
と、喜んだのもつかの間でした。
『出でよ炎の玉』!!
し~~~~~ん。
何回やってもエリーナさんの様に火の玉出ません。
「おっかしいわね~。魔力あるはずだから魔法使えるとおもったんだけどな~」
「なんで出ないんでしょう…」
「う~ん。異世界人だから?」
「え~~~~~~」
「ま、仕方ない。薬草覚えて薬作り。これでも食べてけるから。こっち覚えようか」
「はい…」
折角魔法のある世界に来たのに…。
やっぱり地味な生活になりそうで、どこ行っても地味なやつは地味なのかと、泣けた。