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第6話:旅館到着

 裕也が雪子たちのことについて追求を受けていると、

「お前ら、早く中に入れ。もうほとんど部屋に向かったぞ。」

 裕也たち法学部を引率してる先生の一人がやってきてそう言った。

「ほら、ああ言ってることだし、さっさと行こうぜ。」

 裕也が半ば逃げるように旅館へ入っていった。



 当たり前と言えば当たり前だが、団体客である裕也たちと個人で部屋を取った雪子たちの部屋はかなり離れていた。

 しかし、裕也は安心していなかった。彼女たちがひとたび本気で暴れたらこの旅館など吹っ飛ぶだろうから。ここ数日のことで裕也はそのくらいまで考えていた。

(だからこそ、みんなには彼女たちのことを知られたくない……)

 裕也がそんなことを考えながら割り振られた部屋へ向かうと、速人と他に4人のクラスメートがいた。

「えーっと……」

 裕也が部屋割りのリストを見て、さっきの自己紹介を思い出した。同じ部屋にいるのは、浅田あさだ ごう小笠おがさ けん斉藤さいとう やすし田野口たのぐち 貴之たかゆきの4人とさきほど雪子たちのことで追及してきた築地 速人の計5人だった。

「荷物置いたらすぐ集合だってさ。行こうぜ。」

 裕也が荷物を置いて集合場所となる大広間へ向かおうとした。ほかのみんなもそれについていくが、速人が先行する裕也の肩をたたいて振り向かせると、

「あとで自由時間のときに聞かせてもらうからな。」

 とだけ言った。


 集合した先の大広間では旅行中の注意(小学生か?)などの連絡事項が話され、その後はこの旅行にアドバイザーとして同行している上級生たちから大学生活の楽しさなどがアツく語られていた。


 一方そのころ、雪子、薫、彩は「温泉に行こう」と麻美を誘ったが、「後でゆっくり入る」といって一人でどこかへ行った。

「そんじゃ、あたしたちだけで楽しむとしますか。って、雪子、アンタ温泉入って大丈夫なのか?」

 彩が着替えなどを持ち温泉へ向かおうとしたところでふと雪子にたずねる。

「あら、大丈夫よ。もう何年も人里で暮らして暮らしてるから並の雪女より進化してるのよ。」

 雪子はそう言うと3人の中で一番うきうきと温泉へ向かっていった。


 そして一人残った麻美は――

(さてと、いろいろイタズラ仕掛けにいこーっと♪)

 こないだのことをまったく反省してない感じで楽しそうに部屋を後にした。

 まず適当に旅館内を散策し、大きな扉の前にたどり着いた。そっと中の様子を伺ってみると、そこは裕也たちが集まっている部屋だった。だが、どうやら集会は終わったようで、学生たちが立ち上がり動き出そうとしていた。

(わわっ、ヤバイ!)

 麻美は物陰に隠れると、ドアを魔法でふさいだ。

 学生の一人が部屋から出ようとドアノブを握って押し開けようとした瞬間にドアが開かなくなったため、後ろのほうから見たら勢いよくしまった扉に弾かれたように見えた。

「なんだ、どうしたんだ?」

 誰も外に出て行かないのを不思議に思った上級生が扉のほうへやってきた。

「いや、なぜかドアが開かないんです。」

 一番最初にドアに弾かれた学生がそう訴え出る。それを聞いて上級生や引率の教授たち総出でドアを開けようとするが、びくともしなかった。

(まさか、あの4人……のうち彩さんはそういうタイプじゃないから、雪子さん、薫さん、麻美さんの3人の誰かが……?いや、それ以外考えられないか。で、ドアはただ閉まっているだけで凍ってるわけでも石になってるわけでもない……とすると、だ)

 裕也は声に出さず自分なりの結論を導き出すと、出入り口とは反対の壁のほうへ行き、携帯を取り出して、

<ドアをふさいでるのはあなたですね、麻美さん?早く解除してください。>

 と麻美にメールを打った。返事はすぐに返ってきて、

<あ、バレた?このくらいならいいかと思ったんだけど、やっぱダメか。わかった、解いておくよ。>

 と書いてあった。直後、ドアが開くようになり、裕也を含む学生たちはようやく大広間を出て各自の部屋へ戻ることができたのだった。


 裕也が雪子にメールを打っておいたので、麻美がその後雪子たちにこっぴどく怒られたのは言うまでもない。

感想などいただけたら幸いでございます。


まだまだ旅行は始まったばかり。着いて早々麻美のイタズラに巻き込まれたが、この後はどうなることやら……

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