第29話:GW編最終話 恵理、帰る
5月4日。恵理が帰る日が来た。
「忘れ物はないか?」
着替えなどをバッグに詰め込み、玄関に出てきた恵理に見送りに行く裕也がたずねる。
「うん、大丈夫だよ。」
恵理がそう答える。
「よし、それじゃ行こうか。東京駅まで一緒に行くよ。」
恵理のバッグを持ってやり、裕也がそう言った。
「うん、ありがとう。」
恵理がそう言って、2人は歩き出した。
裕也の暮らす街の駅から東京駅まではおよそ30分かかるのだが、その間2人は特に何も話さなかった。
東京駅で新潟行きの新幹線の自由席のチケットを買い、2人はホームにいた。
「それじゃ、兄さん、またね。」
発車が近いことを告げるアナウンスが流れたところで恵理が裕也からバッグを受け取り、列車に乗り込む。
「あ、恵理。帰ったら母さんに伝えておいてほしいことがあるんだけど、いいか?」
デッキに立っている恵理に裕也が話しかける。
「うん、いいよ。何?」
恵理が先を促すと、
「あのさ、GWは帰らなかったけど、夏休み、お盆の時期には帰るから心配するなって。オレは元気にやってるよってことを伝えてほしいんだ。」
裕也はそう話した。
「うん、わかった。あ、もう発車の時間ね。それじゃ、夏休みに帰ってくるのを待ってるね。そうそう、もしできてたら彼女同伴でもオッケーよ。」
恵理が冗談まじりにそう言ったところでドアが閉まり、ゆっくりと動き出した。
(ったく、ひと言多いんだよ……)
裕也は列車が見えなくなるまでホームで見送り、帰路についた。
(さて、GWあけたら大会が始まるって福田さんが言ってたし、そろそろ気持ち切り替えていかないとな。)
また、別の意味で騒がしい日々が始まろうとしていた……
半端に次の話に入るとまた無駄に長くなるので今回は短いですがここで切ります。