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第25話:恵理と遊びに…… 前編

 5月1日、月曜。GWの谷間と言われる平日。地元の高校をサボって遊びに来ている恵理と大学が休みの裕也は二人で出かけることにし、少し早い時間に出発した。

―そんな二人を物陰から見守る二つの集団。

「こちら麻美、ターゲットがポイントを通過、これより追跡を開始します、どうぞ」

「こちら彩、了解。行き先がわかったらまた連絡求む、通信終わる。」

 ひとつはやはりというか、アヤカシ荘メンバーだった。そして――

「あ、麻美さんと雪子さんじゃないですか。何をやってるんですか?え?裕也たちの追跡?奇遇ですね、オレたちも目的は同じなんですよ。ヒマだから遊びに来たら裕也が女の子と仲よさそうにアパートを出て行くんだもの。これは追跡しない手はないだろうということで。」

 通信を終えた麻美の肩を叩いて声をかけたのは速人、豪、貴之の3人だった。

「なるほど、目的は同じってことね。それなら一緒に行きましょう。ちなみに、あの女の子は裕也くんの妹さんよ。GWを利用して遊びに来たんだって。」

 麻美はそう言って速人たちと一緒に裕也たちの追跡を始めた。




「それで、どこに行きたいんだ?」

 裕也が駅へ向かいながら恵理にたずねる。

「んーとね、遊べるところならどこでもいいんだけど、ここから近くて遊べるところってある?」

 恵理が逆にたずねてきた。

「近くて遊べるところか……近くにはあまりあてがないし、ちょっと遠出になるけどお台場のほうにでも行くか。」

 裕也がそう提案すると、

「あっ、そこでいいよ。そんじゃ、れっつらごー!」

 恵理がうれしそうに裕也の手を引っ張り駅へ向かって走り出すのだった。

「ちょ、恵理、引っ張るなって!!」



「こちら麻美、ターゲットはお台場方面へ向かうとのこと。どうぞ。」

「……こちら薫、了解。こちらもすぐに合流する、どうぞ。」

「了解、じゃこの後は携帯でね。通信終わるっと。」

 今まで古くさい無線通信を使っていたらしいアヤカシ荘メンバー。裕也たちの目的地がわかったところで通信を終え携帯に切り替えるらしい。

「それなら最初から携帯を使えばよかったんじゃ……」

 速人がぼそっとつぶやいた。

「こういうのには雰囲気とノリが大切なの!」

 ツッコミが図星だったらしく、麻美は少し怒りながら叫ぶ。

「麻美ちゃん、あまり叫ぶと気づかれちゃうわよ。」

 雪子があわててなだめる。



「ん?」

 裕也が恵理に引っ張られつつも不意に後ろを振り向いた。

「どうしたの、兄さん?」

 恵理も一度立ち止まり裕也にたずねる。

「いや、後ろのほうで麻美さんっぽい声が聞こえた気がしたんだけど、気のせいだよな。まさか後をつけてきてるなんてあるわけないし。」

 後ろに誰もいないのを確認すると、裕也はそう言って再び歩き出した。



「ふぅ〜、あぶなく見つかるところだった……」

 さすがに落ち着いた麻美がそうつぶやいたころ、裕也と恵理は駅に入っていった。

「雪子さん、それじゃ、先行隊として頼むわね。わたしは彩さんたちを待って、それから現地で合流するから。」

 麻美がそう言って、麻美以外の4人は裕也たちを追って駅に入っていった。



「……恵理。やっぱりつけられてたみたいだ。しかもクラスメートの速人たちまでいやがる。」

 電車に乗った直後、裕也が早くも疲れた顔をして隣の車両を小さく指差しながら恵理に話しかける。

「あ、ホント、雪子さんだ。雪子さんがいるってことはきっと他の人もどこかにいるってことだよね。」

 恵理もそう気づき、「どうする?」と裕也にたずねる。

「次の駅で、ドアが閉まる直前に飛び降りて別の路線に乗り換える。いいな?それと、目的地もお台場から上野に変える。それで振り切れるはず。」

 裕也は恵理にそう耳打ちし、恵理も「わかった。」とだけ答える。

 次の駅に到着し、多少の乗り降りがあった後、ブザーが鳴り響き、ドアが閉まりかける。

「いまだ!」

 裕也は叫ぶと、恵理の手を引っ張り列車から降りる。速人がそれに気づいたときにはもう扉は閉まり動き出していた。



「しまった、気づかれたか……雪子さん、どうします?」

 速人がたずねたときには雪子はすでに麻美にメールを打って追跡がバレたことを伝えていた。

 すぐにメールが返ってきて、

<いま彩さんたちが合流、そちらも一度電車を降りて待ってて。どうにか行き先を特定できないかやってみるから。>

 と書いてあった。

 その指示に従い、雪子たちは裕也たちが降りた駅の次の駅で降りて待機することにした。



「どうやらうまく撒いたようだな。ったく、兄妹水入らずな状況を邪魔するなって感じだぜ。」

 裕也が苦笑いしつつそうつぶやく。そこに麻美からメールが入った。

<妹と二人っきりになって、しかも追跡を撒くなんていかがわしいことをする気じゃないでしょうね?>

 裕也はすぐに、

<そんなことあるわけないでしょう、ただ遊びに行くだけです>

 と返した。だが、これがアダになった。

<今の返信で現在位置をつかんだわ。もう隠れてついてったりしない。すぐに先行隊に伝えて追いかけていくから覚悟しときなさい♪二人っきりなんてそんなおいしい状況にはさせないわよ〜♪>

 と返ってきた。

「……現在位置をつかんでも行き先がわからなければどうしようもないじゃん……」

 裕也はそうつぶやくと、恵理を連れてさらに行き先を変更し、地下鉄に乗り換えるのだった。

果たして裕也たちは二人っきりで遊ぶという目的を達成できるのか?

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