第21話:裕也の決意と友の優しさ
翌日、裕也は彩の部屋のポストに一枚の紙を投下してから大学へ向かった。
その紙には、こう書かれていた。
“事情を知らない一般人から精気を吸うより、もっとオレを頼ってくれて構わないですよ。オレの体調がいいときなら吸っていいですから。”と。
しかし、肝心の彩はというと……
「ZZZ………」
朝に弱いのか、ベッドの中で爆睡していた。
そんな彩が目を覚まして手紙を見つけたのはちょうどお昼で、裕也が速人たちと学食で昼食をとっているときに彩からメールが入った。
<今起きたらなんか手紙が入ってたんだが、どういうことなのか帰ったら説明してくれ。 彩>
そう送られてきた。メールを見ながら顔が緩んでいたのか、速人が、
「おい、北方?ずいぶん顔がにやけてるがいったい誰とメールしてるんだ?」
と裕也にたずねてきた。
「そんなににやけてたか?メールの相手は彩さんだよ。ちょっと聞きたいことあるから帰ったら部屋に来てくれってさ。」
裕也がそう答えると、
「なに、彩さんが部屋に来いだと?何の用なんだ?はっ、まさかあんなことやそんな……ぐふぉっ!?」
速人が暴走して妄想をぶちまけはじめたので裕也はとりあえず一発殴って黙らせる。
「言っておくがみんなの考えてるようなことは一切ない。だけど、彩さんの事情を知ってるなら役に立てることもあるか。」
裕也はそう言って昨日から今朝にかけてのことを話した。
「なるほど……」
意外と早く復活した速人がそうつぶやく。
「まあ、そういうわけでそんな手紙をおいてきた訳なんだ。」
裕也がそう話すと、
「事情はよくわかった。オレたちも協力しようじゃないか、なあみんな?」
豪が速人や貴之たちにそう持ちかける。
「豪に言われるまでもなくオレは協力するぜ。」
速人がそう話す。
「協力してくれるのはありがたいんだが、彩さんの精気ドレインはかなり強烈だぜ。オレも初めて食らったときは気絶したほどだからな。みんなはそこまでの覚悟はある?」
裕也がそうたずねると、
「北方……そこまで話しておいて今さらそういう水を差すようなこと言うかぁ?それに、オレたちだって体力にはある程度自信を持ってるから、多少なら大丈夫だろ。」
速人がブーイングを飛ばす。
「まあ、今さら止められるとは思ってないが、一応知らせておくべきだと思ってね。じゃあ、今日はサークルも休みだし、講義が終わったらみんなでうちに行こうか。」
裕也がそういったとき、時計は午後の講義開始10分前を指していた。
「ヤバッ!早くメシ食わないと講義に遅れるぞ!」
貴之が時間がないことを指摘し、全員急いで昼食を片づけるのだった。
そして夕方、この日最後の講義はバラバラだったので、終わったあと裕也たちは正門のところで待ち合わせてアヤカシ荘へ向かった。
「……とまあそういうことです。」
彩の部屋で裕也は手紙の真意を説明した。
「本気か?」
彩がそうたずねる。
「こんなことを冗談で言うと思いますか?彩さんの生命にも関わる問題なのに。」
裕也はまっすぐ彩の目を見てそう話す。
「ありがとう。アタシの心配してくれるんだな。それじゃ遠慮なく利用させてもらうよ。とはいっても昨日たっぷり吸ったからしばらくは大丈夫だけどな。」
彩はいつものように豪快に笑いながらそう言い、裕也たちもつられて笑い出すのだった。
※お知らせ
ここまで毎日連載を守り通してきましたが、明日(1/16)以降もしかしたら更新できない日があるかもしれませんのでご了承ください。
できる限り更新していきますが、今後はそういう可能性があるということでお知らせしておきます。