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第15話:温泉といえば卓球でしょ、でもこんな展開あり!?


調子がいいので再び1日2話投稿といきますか。

「うぅ……ひどい目にあった……」

 温泉から出たあと、裕也は入る前より疲れていた。

 あの後、「なぜわかったのか」という速人の質問に対し雪子たちは、

「女のカンをなめちゃダメよ」

 とだけ答えたのだった。


 風呂から出てしばらくすると、裕也もある程度体力が回復してきた。と、そこに、

「おーい、北方ー。温泉旅館のもうひとつの娯楽をやりに行こうぜー。」

 一番こっぴどくやられたはずの速人が元気に戻ってきた。

「もうひとつの娯楽?というと、卓球か?」

 裕也が立ち上がりつつそう返す。

「ああ、今台を確保して来たところだ。雪子さんたちもいるぞ。みんなでわいわいやろうじゃないかってことでお前も呼びに来たんだが、大丈夫か?」

 速人がそう話し、裕也を誘う。

「ああ、大丈夫だ。卓球は昔やってたからそこらの温泉卓球とはレベルが違うぜ。覚悟しとけよ。」

 裕也が笑いながら速人とともに部屋を出て行くのだった。




「うるぁっ!!」

 スパァァァン!!という音が響き、裕也の渾身のスマッシュが速人側の台を打ち抜く。

「くそっ、本当に強いな……」

 今のスマッシュでゲームが終わり、すっかり息切れした速人が台から離れつつそうつぶやく。

「へぇ〜裕也くんに意外な特技が……」

 などといってるのは裕也たちの隣でやっていた雪子たちだった。こっちはまさに「温泉卓球」といった具合でポコン、パコン……とのんびり打ち合っていた。

 その後も裕也は次々にクラスメートたちを倒して行き、最後に残ったのは貴之だった。

「最後はオレか。北方、ここまで圧倒的に素人であるみんなを退けてきたが、経験者がお前だけとは思うなよ。」

 貴之はそう裕也に宣戦布告した。


 貴之の宣戦布告どおり、裕也vs貴之のゲームは激しいラリーの応酬の好ゲームになっていた。本来11点1セットのゲームだったはずが、10−10でデュースに突入してはや数十分、スコアも35−35になっていた。ボールを打つ音も、普通の温泉卓球なら「ポコン、パコン」なのだろうが、この二人に関しては「ドガガガッ」とか「スパァァン」とかものすごい音になっていた。

「ぜえ、はあ、なかなかやるな、田野口。お前も経験者だったとはな………」

「はあ、はあ、お前もな、北方……正直経験者とはいえここまで強いとは思わなかった。オレは高校の県大会では敵なしだったからな……」

 二人ともすっかり息を切らしながらここまでの健闘をたたえあった。

「だが、そろそろ――――――――」

「―――――――決着つけようぜ。」

 二人が今一度集中力を高め、裕也がサーブを放つ。貴之もらくらく返すが、そこにカウンターで裕也が強烈なドライブスマッシュを放つ。

「うおおおおっ!!」

 貴之の雄たけびが響き渡り、裕也のドライブスマッシュを返す。あまりに速すぎて二人以外にはボールが見えていなかった。

「いい加減、くたばれぇぇっ!!」

 裕也がそれをさらに返し、もはやただの暴れ球と化したボールは貴之側の台で一度バウンドすると、返そうとした貴之のラケットを弾き飛ばし、床にめり込んで止まった。36−35、裕也マッチポイント。

「はあ、はあ……これでオレのマッチポイントだ……」

 スマッシュを決めた裕也がそうつぶやく。

「ま、まだ試合は終わってねえ……最後に勝つのは……このオレだ……」

 貴之もまだ闘志が消えたわけではないようで、そう言いながらサーブを放ってきた。だが、すでに疲労がピークに達していたようで、試合開始当初の勢いはなかった。

「これで、終わりだぁぁぁぁぁっ!!」

 スパァァァン!!といい音がして裕也のリターンエーススマッシュが炸裂し、死闘に幕を下ろした。

「ぜえ、はあ、ナイスゲーム、田野口。」

「はあ、はあ、それはお互い様だ、北方。」

 二人は握手で互いをたたえあうと、周りから歓声が上がった。

「まさか目の前でプロ級の試合が見れるとは思わなかったぞ。すげーな、田野口、北方。」

 誰かがそう言ったところに、

「まったくだ。これは勧誘のしがいもあるというものです。」

 拍手をしながら入ってきたのは、アドバイザーの上級生だった。

「私は聖都大の卓球サークル会長・福田ふくだといいます。まあ、名前だけはアドバイザー紹介で知ってるはずですがね。」

 大学の卓球サークルの会長といった福田は、さらに続けて、

「北方裕也くん、そして田野口貴之くん。二人をわが卓球サークル《ピンポン・スマッシャーズ》へ勧誘します。すぐに返事を出せとは言いませんので、もし入る気になってくれたなら体育館の第2小体育室へ来るか、私の携帯<090−○×△□ー■●×▲>まで電話ください。もちろんそこで見ている人たちも歓迎しますよ。では。」

 福田はそう告げると、立ち去っていったのだった。

本来温泉旅館の卓球は素人同士の娯楽――にもかかわらず、一部では経験者同士の死闘に発展した。

次回、温泉卓球・後編。

再び死闘の幕が上がろうとしていた―――


注:この卓球編の間は基本的に雪子たちはほとんど暴走しません。ご了承ください。

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