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過去編1

 もう少し長くする予定でしたが、切りがいいのでこの辺で投稿します。

 少々短いですが読んでくれると幸いです。

 余談ですが感想ありがとうございます!この場を借りてお礼を申し上げます。


 




◇◆◇◆◇◆◇







 昔々、といってもほんの数年前の話し。ある小さな町に一人の女の子が住んでいました。

 その子は地元ではお嬢様学校と言われている学校の中学2年生でした。

 女の子は何をしていても非常に目立つ子でした。

 勉強をやらせれば常に上位に食い込む。スポーツをやらせてもそれは同じでした。また、お嬢様学校に通う中でも彼女の家柄は1、2を争う名家であり、彼女はますます注目される存在でした。

 また、そういった家柄や才能に、まったく鼻にかけず、分け隔てなく周りと接していたため、いつしか彼女は学校屈指の人気者になっていました。

 今から話すのはそんな女の子の過去の物語――








「きりーつ、礼!」  


「ありがとうございました」


 一日の最後のホームルームの挨拶が終わる。学生達には待ちに待った放課後。

「ふぅ……」


 この女の子もその一人。この学校は名門と言う事だけあって、授業内容の密度も濃く、進度も早いためかなり集中していないと忽ち遅れていってしまうのだ。

 そのため、例え勉強が出来る生徒でも授業だけでかなりの負担になってしまっているのだ。それに加え、この女の子は成績も上位のため人よりも気を張っていたのだろう。


「おーい、一緒に帰ろう」


「うん、いいよ」


「あ、ずるい!私も」


「私も!!」 

 

「ふふ、分かりました。ではみんなで帰りましょう」


 ある日の放課後、女の子はいつものように授業が終わって帰ろうとすると、これまたすぐに周りのクラスメイトの女の子達に囲まれる。そしていつの間にかちょっとした人だかりが出来てしまった。

 何時もこの女の子は周りの人を惹き付ける。だからこのように少々被害が広まってしまう事も多々ある。


「と言っても校門の迎えが来ているところまでですが、一緒に行きましょう」  

 この学校では、学校の特徴ゆえに、校門までリムジンで迎えに来ている人達も多い。いづみ様もその中の一人。だから、校門までというわけだ。 

 その女の子はそのままクラスメイトの友達と一緒にゆっくりと、今日の学校での出来事や近くに新しいお店が出来たから一緒に行こう、やら今度の試験は範囲が広そうだね、などなど他愛もない雑談をしながら、下駄箱を通って校門へと向かう。

 校門に着くと何台かのリムジンが止まっていた。その中の一つ――女の子が自分のリムジンとその隣に立っているメイドさんの姿を見つけると友達の方に振り返って言った。


「すみません……迎えが来ているようなので私はこれで……」


「えー、もっとお話ししましょうよ」


「これからお茶でもしていきませんか?」

「本当に申し訳ありません。これから少し用事があるので……。また明日お話ししましょう」


 そういって丁寧に、しかし決して嫌みには不思議と聞こえないように言う。


「絶対ですよー」


「今度、新しく出来たお店に行きましょうね」


「はい、楽しみにしています。その時にまた誘って下さい。ではさようなら」  

 そう言った後、もう一度頭を下げて迎えの車へと小走りで向かうと隣に立って待っていたメイドさんが軽く頭を下げて、女の子を出迎えた。


「おかえりなさいませ」


「はい、ただいま戻りました」


 そう軽く挨拶を交わしてリムジンの中に入ると、運転手は衝撃が起きないようにゆっくり発進する。「今日の予定は16時からピアノのレッスン、17時30分から茶道の講義があります。その後は夕食をとってもらって、19時から舞のレッスンとなっております」


「はい、分かりました」


 学校から帰ると常に何かしらの習い事が大体入っている。勉強もその間などに行っており、かなりの負担になっているだろうけれど、嫌な顔一つしない。

 

「今日の、夕食は何ですか?」


「お腹が空いたのですか、お嬢様?食いしん坊ですね」


「も、もう、つくしさん//」


 お嬢様はこんな風に時折雑談を混ぜて私に話しかけてくる。きっと学校でもそうなのだろう。

 最近では送迎中に雑談をすることは日課になっている。私に気を使ってるのかもしれませんが、お嬢様の本心は分かりません。きっと周りの空気を読むのに長けているのもあるでしょうが、ただ、私と話したいっていう理由もあるのでしょう。

 本当に大したものです。

 雑談する事数十分。程なくして定山邸に到着する。


「お待たせしました」


「いつもありがとうございます、つくしさん」


 そう言うって頭を下げてから小走りで家の中に入って行く。きっとこれから始まるレッスンの準備でしょう。

 走って行く後ろ姿を見送ってから、車を止めに行くために、車へと向かった。 早く止めて、夕食の準備をしなければ。









 







 時刻は夜21時30分。本日の最後のレッスンである舞の練習は少しだけ長引いてしまったけれど、概ね予定通りに滞りなく終わった。

 その後、少しだけ話しをした後、部屋に戻った。そして、すぐに部屋にある机に向かい、今日の分の宿題と復習、そして予習にとりかかる。



 

「ふぅ……おしまい」


 そう言って私は今日の勉強を終えて、教科書とノートを閉じる。

 ふと気になって机の上の時計を見ると時計は23時を少しだけ回ったところだった。


「うん、丁度いい時間ね」


 そう呟いて、椅子から立って今流行りの薄型テレビをつけ、ベッドの上に置いてあるクッションを一つとってテレビの前に座る。そして、テレビのチャンネルをTO○YO-M○に変える。


「よし、後5分…」


 時計を見て再度時間を確認する。それを見る目の色は友達同士でも決してみせないような、キラキラ輝く子供のような目をしている。

 程なくして、コマーシャルが終わって新たな番組が始まる。時刻は23時30分。


「抱きしめたいんだ!(パンパンパン)」

 

「あ、始まった!」


 画面からアニメのOPが流れる。それと共に画面を食い入るように見る。その目は今日一日の中で一番キラキラ輝いていて、すごく楽しそうに見える。

 今までの様子は何処と無くよそよそしくて、少し無理しているように見えた。

 しかし、今、アニメを見ながら見せている表情は本当に年相応の無邪気な表情をしていて、すごく自然体だ。学校にいたときよりも、他の何処にいた時よりも。


「ちっちゃくないよ~!」


「……ぽ○らちゃん可愛いなぁ」


 そうこうしている内に、あっという間に30分がすぎて、番組が終わり、エンドロールが流れる。


「あーあ、終わっちゃった……」


 少しだけ寂しそうな顔をしたが、またすぐに切り替えてわくわくした顔に戻った。


「よし、次はF○TEだ!」


 次に始まるものに期待を膨らませて画面を見る。


「始まった!」


 そして、また新しくアニメが始まるとまた画面に注目して熱中し始める。

 今から始まったのは今期最高のアニメと名高いらしく、先ほどよりもさらに熱が入っているようです。

 

「ふぅ、終わっちゃった……」


 そうこうしている内にあっという間に時刻は深夜一時。次の日も朝から学校があるのに、少々遅くまで夜更かししてしまっただろうか。

 一日の最後に明日の持ち物の最終チェックをする。


「……あ!明日、体育あるんだった」

 アニメを見終わった後に荷物のチェックをするのは日課であり、このように忘れ物に気づく事も珍しくない。

 といっても、それでも忘れてしまうくらいドジなところもあるのですけど。

 その後、結局、他にも忘れ物が二、三見つかってそれを準備していたら時刻は深夜2時を回ろうとしていた。


「おやすみなさい」


 そういって、ベッドの中に入るなり数分ですぐに寝息が聞こえ始める。

 










 










 こうして慌ただしくも楽しい一日が終わった。

 これが日常。女の子の中ではいつも変わらず、それであってとても楽しい日常。

 学校で勉強して、友達と楽しく雑談。放課後に入るとたくさんの友達と一緒に下校。そして、習い事と勉強。また、一日の最後に一番の楽しみであるアニメ鑑賞。

 かつては当たり前だったほんの一部の日常の風景。人前で笑う事がまだ少なくなかった時。当たり前で、とても大事なキラキラ輝いていた時。そして、今では心から笑う事が少なくなってしまった女の子。そんな当たり前の日常が壊れてしまった現在。

 今は――といっても過去の話しだが、これからある未来なんて誰も予測は出来ない、前触れはこの時には正真正銘何もなかったのだから。

 だから、もう少し現在いまへと繋がる分岐点が見えてくるまでもう少しこの女の子の物語を見ていこうと思う。次に見るのはここまでの話しでも少しだけ出てきたが、学校や家族の前でさえも見せない、女の子のオタクとしての一面。ありのままの自分が出せる世界についての話をしていこう――――





◇◆◇◆◇◆◇






 

 過去編は3部で考えています。(伸びるかもしれませんが)

 次はオタクの時の日常です。多分もったいぶってて申し訳ないですが、次も進展がないかも……(汗)

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