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王女、混乱する

揺れる馬車の中で彼女は目を瞑り、祈るように自分の手を強く握った。

馬車が向かう先は隣国ジェイド。

彼女は今日ジェイドの国王ジルコンに嫁ぐ。




彼女の名前はルチル・クォーツ。

アゲートという国の第二王女である。

王女といっても誰もが振り返るような美人ではなく、村娘となんら変わりない容姿をしていた。

髪色は美しい金だったが、ふわりとなびくような柔らかさはなく、針金のようなストレート。

馬車の窓から入る風が少しだけ彼女の金色の髪を揺らす。


混乱する頭の中で彼女は思う。

いつもだったら馬車に乗って外出する時は、何一つ見逃さないようにずっと窓から景色を見ているけど、今日はとてもそんな気にはなれない―――。



その婚姻は何の前触れもなく突然、決まった。

3日前に父である国王から隣国の王ジルコンとの結婚を告げられたときは、たちの悪い冗談だと笑おうとさえしたのに・・・

普段はどこかふざけた顔をしている父の真剣な顔

常に凛とした厳しさをまとっている母の泣きそうな顔

それを見た瞬間に笑いは消え、変わりに混乱が彼女を襲った。


・・・なぜ?


隣国ジェイドの国王ジルコンのことは知っている。

褐色の肌に透きとおるような白い髪をもつ美しい男性だと、噂好きな婦人が話していた。

国王としても大変優れていて、ジルコンが王になってからというものジェイドは急成長を続けている。

だが、その偉業以上にこちらに伝わってくるのは、情け容赦ないジルコンのやり方だった。

逆らうものは、一人残らず厳しく裁く。ジルコン本人の手によって。

隣国からの旅人は言った。

ジルコンは王でありながら戦場で最前線にたって指揮をとり、剣の腕も並外れていると。

そして、まるで人間を裁く神のように彼は無情に剣を振り下ろすのだと。

『冷酷、無慈悲』

いつしか人々がジェイドの国王の名を口にするとき、そう付け足されるようになった。


そんな人がなぜ私を?


3日前から消えない疑問。

一人混乱する私をよそに、あまりに猶予のない結婚の準備に皆は大忙し。

その慌ただしさのせいで、親しい人たちにちゃんとお別れの挨拶さえできなかった・・・。

今だに、これが現実だとは思えない。

夢ならば早く覚めて。


ねぇ・・・



「・・・なぜ私なの?」


彼女がつぶやいた言葉は誰にも聞こえなかった。



やがて馬車はたどり着いた。


冷酷、無慈悲な美しい国王が住む城へ

村娘のような王女を乗せて




読んで頂きありがとうございました。またもや思いつきでできた作品ですが、お付き合い頂けると嬉しいです。次回は初対面です。

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