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第8話 そうだ お見舞い、行こう。

前回のあらすじ

殿下と一緒にドライスフレームに乗ったけど、うっかり起動させちゃって共倒れ。あれ?私王族を害したって理由で処刑されませんよね?ね?


―「もう起きても大丈夫なのか?」


しばらくは安静にして体力を回復させるようにと言われ、私はまだ貴賓室暮らしを続けている。と言っても部屋から出れるわけでもなく暇を持て余していたら思わぬ来客が来るわけで……


「はい、ご迷惑をおかけしました。」


「よい、此度の事は愚息の至らなさが起こしたことだ。むしろよく助けてくれた。」


それよりも王様が軽々しく見舞いに来ないで欲しい、心臓に悪いとは口が裂けても言えない。


「それで、殿下の方は?」


「お前と同じく先日目を覚ましたのでな、こってり絞ってやったわ。」


まったく、気を引くために無茶をすると言いながらも王様はどことなく嬉しそうだった。


「すまぬな。」


「え?」


「あの子は賢い、それ故に兄や姉と自分を比べ劣等感を感じてしまっていてな……。」


賢そうには……見えなかったけどなぁ。


「そんな中で先日同年代の子たちにチヤホヤされてしまったものだから」


「あぁ、増長しちやったんですね。」


「だが、お前は違った。」


あー……。書庫での1件か


「自分になびかない子がいたら気を引きたくなってしまったらしい。」


子供か!いや子供だったわ。


「まさか禁止していたドライスフレームを持ち出すとは思わなかったがな……。」


「いや、それについては私の方に原因があると言いますか、はしゃぎ過ぎたと言いますか……。」


そりゃ初見塩対応の相手があれだけ食いついたらなぁ。


「なら、これからもよろしくしてくれると助かる。」


「……出来る範囲で。」


小さくため息をつきながら、偉い人とのマンツーマンは疲れるのでマジで勘弁してほしいと思う私だった。



―「うーん……。」


王様にああいった手前、こちらからも少し歩み寄る努力をするべきだろう。と言ってもいい案が思いつかない。


「ただ会いに行くでは駄目なのですか?」


部屋付きの侍女が見かねてアドバイスしてきた。


「それはそれで面白みがないじゃない。それに何かきっかけが欲しいのよね、この間までちょっと冷たく当たってた手前気恥ずかしいといいますか……。」


「お見舞いというのはどうでしょうか?先日の一件以来合っていないのですよね?」


「それ!いいわね。……となるとお見舞いの品も用意しないとね。」


「いや、ただお部屋に伺うだけでm……」


「そうと決まれば、お父様ー!」


「アールティーナ様!?お待ちになってください!アールティーナ様ぁーー!!?」


一応、ティナも部屋で安静にと言われているのだが……。そして勢いよく飛び出していった彼女を出遅れた侍女は見失ってしまうのだった。



ー「……迂闊でしたわ。」


前に来た時もお父様と一緒だったわけで、私一人でこの広大な王宮の内部を把握してるわけもなく。


「ここ……どこですの?」


これは俗にいう迷子というやつね、うん。


「とりあえず、前進あるのみですわ!」


こういう時に限って誰ともすれ違わない、こういう時スマートフォンが恋しくなる。まぁ、無いものをねだっても仕方がない。ならばこちらから探して行こうではないか!


「……とりあえずこっちですわ。」


いい匂いがするのでとりあえずそっちに向かうことにした。



ー「ここですわね。」


匂いのもとは王宮の調理場だった。少なくともここなら誰かいるだろう。


「失礼しますわ。」


取りあえず中に入ってみる。中では数人の調理師がスキルを使って料理を進めているところだった。


「何だこのガキ?」


「料理長!?服装的に貴族のお嬢様ですよ、その子!」


「あぁん?そんな身分の高い子がこんなところに一人で来るかよ。登城するのにおめかししたその辺のガキだろ。」


「えっと……ごめんなさい?」


自分のせいで揉めているようなので、とりあえず謝っておく。


「ほれ見ろ。ただの迷子だろ?」


「私、ヴェルクハイム家のアールティーナと申します。……でも迷子で合ってます。」


「……。」


料理長が絶句している。まぁそりゃあ最悪不敬罪でどうなるか分からないものね。


「えっと、さっきの発言は聞かなかったことにしますので、私を助けていただきたいのですが。」


「は!何なりとお申し付けください!」


「きっと、お父様も私を探していると思うので連絡をしていただけると……。」


「ただちに!おいお前ちょっとひとっ走りして誰かに報告してこい!」


「分かりました!」


料理長の一言で部下の一人が調理場を出ていった。


「ごめんなさいね。」


「い……いえ。でもどうしてこんな所に?」


「ウィルヴァン殿下にお見舞いの品を用意しようと思い、お父様の元へ向かおうとして……迷子になりましたわ。」


我ながら恥ずかしいなと。


「ん?……あぁ!料理長!!この子ですよ!スキル使わないでドレッシング作った子!」


「ほう……。そうだ、殿下へのお見舞い品ここで作ってますか?」


ん?話が変な方向に進んでる気がする。


「えっと私、料理スキル持ってるわけじゃないのですが?……まぁ、迎えが来るまで手持無沙汰だしいいか。」


「無駄使いしないならここにある食料を使って構いません。」


「まぁ、手作りの定番といえばクッキーでしょう。」


砂糖やバターなどの材料を集めてもらう。


「どうせならハーブとか入れて香り良いものにしたいですわ。」


混ぜて……。あっ体力足りないわ。とりあえず混ぜて混ぜて材料を生地にしていく。


「手際がいいですね。」


「昔取った杵柄といいますか、体が覚えているみたいですわ。」


「いやいや、その年で昔って……。」


生地を休ませてる間に部下さんがよく冷えたソーダを差し出してくれた。美味しい。


生地を分けてさぁ焼こうとしたところでお父様が飛び込んできた。


「ティナ!!無事か!?」


「お父様!?ここは王宮ですよ。そうそう変な事件何て起きるわけないじゃないですか。」


先日自分が事件を起こしているわけだが、それは言わない事とする。


「いや、公爵令嬢様がこんなところで料理してるってちょっとした事件では?」


ぼそっと部下さんが口にする。


「……とにかく!あとはこれを焼いてラッピングしたらプレゼントとしてウィルヴァン殿下のところに行きますから、お父様もそこで待っててください。」


「いや、私仕事中なのだが……?」


「私のクッキー食べたくないのですか?」


「食べたい。」


「正直でよろしい。」


「あれ、もしかして毒見y……。」


「それ以上は言わない方がいい。」


口の軽い部下さんが料理長に止められている。



ーオーブンから焼きたてのクッキーを取り出す。ほぼ前世の記憶を基にしたようなものだがまぁ悪くはないだろう。


「ちょっと失礼して、鑑定!」


部下さんと遅れてやってきた部屋付きの侍女がクッキーを鑑定している。


「……鑑定羨ましいですわ。」


この前書物で学んだが、この世界のスキルの得方は大きく分けて3つになるらしい。


1つ目は自然に覚える。これは条件も分からずある日突然スキルが習得されるとか。人によっては赤ちゃんの時に発現してしまいそれによる事故も少なくないのだとか。


2つ目はそのスキルに関する行動を反復することで発現させる。武器スキルや生活スキルは大体これで覚えていくようだが、魔法や鑑定と言った一部のスキルは反復のやりようがないということで習得できないみたい。


3つ目はダンジョンで出てくるスクロールを吸収(!?)して発現させる。ダンジョンで極稀に発見されるそれは使えば該当のスキルを誰でも覚えることが出来るらしい。凄いですわダンジョン、本当に何でもありなのですね。まぁ、そもそもそんなにドロップしないし、中身もランダムということもあって鑑定の様なレアスキルは我が家であってもおいそれと購入できない訳なのだが……。


「毒性はないみたいですね。普通のハーブクッキーです。」


「……いやこれ普通じゃないです。」


そして同じスキルであっても人によって効果が違うらしいというのがまた厄介なところ。


「どういうことだ?」


お父様が侍女に説明を求める。


「はい。鑑定の結果ですが、このクッキーには魔力の回復効果が付与されているみたいです。おそらく偶然ですが入れたハーブがポーションの効果を発揮しているものと。」


「ふむ……。料理長。同分量でスキルを使ってもらえるか?」


「分かりました。」


同量を計量し、スキルを発動させる。瞬く間に自分が作ったものよりも形の整ったクッキーが完成した。


「鑑定します。……はい。こちらも同様の効果を確認しました。」


「味は……ティナの方が美味い。間違いない。」


いやいくら愛娘の手作りだからってそれは無いだろう……とツッコミを入れるのは野暮か。


「取りあえず、私はこの事を報告してくるからティナはそのまま殿下のところに行くといい。」


「お父様、ありがとうございます。」


料理長が作った方のクッキーを片手にお父様が調理場を出ていった。そして私は侍女さんが用意してくれていたラッピングをして殿下のお見舞いに行った。クッキーは好評だったので一安心したのはここだけの話。

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