第6話 ギロチンとお茶会と
前回のあらすじ
私、何かやっちゃいました?
―「あぁ〜……。」
やっちゃった、やっちゃいましたよ。こんなところに潜んでるとか分からないよ!
先日のドレッシングの一件はそれはもう予想外の方向に大事になり、現在私はお父様と共に王都に向けて移動中……連行中なのである。
「まずいですわ、まずいですわ……。」
推定悪役令嬢である以上何処に断罪フラグが立ってるか気をつけるべきだったのだ。
「うぅ……。ギロチンは嫌ですわ〜。」
「?……ティナ?何を言っているのだ?」
「きっと国家騒乱とかの罪で首チョンパされるのよ……そうよ、そうに違いないわ……。」
「おーい。」
頭を抱えて自分の世界に入っている私をお父様が強めに揺さぶりかさながら引き戻す。
「はっ!お父様!?」
「さっきからどうしたのだ?青ざめた顔で」
「だって私、これからお城で断罪されるのでしょう?」
「いやいやいや!どうしてそうなる!?」
「お父様も言っていたではありませんか……地方の産業が一つ無くなるって。ともなれば国を揺るがした大罪人としてこの首をこうストンっと落とされるに違いありませんわ。」
右手で首のあたりをスパッと切るようなジェスチャーをしながら私は嘆いた。
「いや、まぁ大事ではあるがそこまでされる謂れはないだろう。」
ため息をつきながらお父様が宥めるように頭を撫でた。
―「はぁぁぁぁ。」
「ティナ、そんなに恐れなくてもいいと思うのだが。……来たぞ。」
期間にしておよそ半月、私は再びの王の私室のソファに座っていた。
「待たせたな。」
「いえ、お時間を頂きありがとうございます。」
お父様と同時に立ち上がり、礼をする。
「よい、私とお前の仲ではないか。」
「非公式の場とは言えそうもいくまい。」
そういえばこの二人前も仲良さそうだったな。
「あの、お父様?」
「ん?あぁ。レオとは学園時代の友人でな。」
「こんな時ぐらいはあの頃のように気軽に話してくれて構わんのだぞ。肩肘張った会話は疲れるからな。」
「馬鹿を言うな、あの頃とは立場が違いすぎるわ。」
気軽に話す2人にようやく私は命の危機では無いことに安堵した。
「お前の父はな、それはそれは学園の問題児だったのだよ。物を壊すは上級生と揉め事を起こすわ。」
「はぁ?それだってお前が方々にちょっかいかけるからだろうが!王太子の自覚を持てとあれだけ言っても聞かない奴が!」
「もう王様ですぅー。何だかんだでそれに最期まで付き合って、なんなら一番暴れてたのはお前ですぅー。」
「……。」
呆気にとられていた。そして気がつく。あぁ、この人達悪友ってやつか……と。
―「かなり脱線してしまったが、そろそろ本題に移ろう。」
30分は思い出話に花を咲かせたであろうか、ようやく落ち着いた2人はソファに腰掛け本題を話し始めた。
「先んじて報告もらってはいたが、ドロップ品と遜色ない物をスキル無しで作ったということだか。」
「あぁ、ドレッシングは確か東の辺境の森辺りのドロップだったと記憶してるが……。」
「実はな、同じような報告が他からも上がり始めている。」
「何だと!?」
えっ?そうなの?よかったー……。
「今はまだ調味料系統に留まっているが、料理スキルに対応できる手作りの調味料が出来上がってきたらしい。」
「とはいえそう問題にもなるまい。」
「お前もそう思うか。」
おや?
「あぁ、うちに卸されている調味料はそれなりに値が張っているがそれを使ってようやくドロップ品と同等のものになっている。なれば他所で出来たものは数ランクは低いものになっているのだろう?」
「そこまでお見通しだったか。そうだ、今の所報告に上がっているものは料理には使えるが味が落ちるらしい。」
「だったらドロップ品を高級品として売りに出せばそう価値は落ちまいて。」
え?じゃあ何で私ここにつれてこられたの?
「まぁ雑談はここまでにして、ティナ。せっかくだからウィルヴァン殿下と会ってきたらどうだ?」
「……。」
「そう露骨に嫌な顔をするでない。」
私そんなに顔に出てました?というかそれがここにつれてきた本当の目的か!!!
「まぁ、少しだけなら……。」
とは言えあまり邪険にもできず、渋々私は中庭に向かうのだった。
―「はぁ……。」
中庭に向かうとそこには既に2人分のお茶の準備が整っていた。私の好みに合わせたお茶菓子が用意されているあたり、お父様めあらかじめ王様と仕組んでましたわねこれは……。取りあえず席について待つこと数分。
「まっ……待たせたな……。」
おや?思ったより機嫌が良さそうだぞ?取りあえず私も挨拶しないとか。
「御機嫌よう、殿下。」
ここで会心の笑顔をお見舞いしてみよう。
「っ……!?アールティーナ嬢も元気そうで何よりだ。」
おっとこれは効果ありかな?……いかんいかん。ここで気に入られたら婚約破棄なんて夢のまた夢だ。
私は表情を固めてスンとした。
「……せっかくのお茶が冷めてしまうし、始めよう。」
そう言いながらちょっと赤くなってる殿下の顔に気付かないふりをして2人だけのお茶会を始めた。
―「アールティーナ嬢は、今何か欲しいものとかないのか?」
天気の話から始まり、お互いの近況や当たり障りのない話が終わり、何を話せばいいかと考えていたら殿下が逆に聞いてきた。
「専用のドライスフレー……今のは無しで。」
さすがに令嬢らしくはないなと思い訂正する。
「そうか、ヴェルクハイム領は魔物狩りが盛んだったな。アールティーナ嬢も何れはそれに参加するのか?」
「えぇ、そのつもりですわ。それが領民を守るために必要な事ですから。」
とはいえまだお父様から搭乗許可すら降りないから何時になることやらだけどね。
「専用機か……流石にプレゼントするのは難しいが、私の専用機を見せるぐらいなら出来るぞ。」
「本当ですか!?」
思わぬ申し出に、つい立ち上がって大声を出してしまった。クソガキとか思っててごめん殿下。
「う、うむ。そんなに喜ばれるとは思わなかった。」
勢いに若干引かれてしまっているが仕方ないじゃない。王族の専用機よ?見たいに決まってるじゃない。
「善は急げですわ。行きましょう殿下!」
半ば強引に殿下の手を取り私たちは中庭を後にするのだった。