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第3話 これが私の婚約者様?

前回のあらすじ

王子と婚約??私、悪役令嬢なのかもしれない……。


―「ということでうちの第4王子と婚約ということでよいな?」


「え?」


何を言っているのかわからない。どうしてこうなった?



―遡ること数時間前


「うーん……。」


今日も書庫で調べ物をしている。

歴史書も漁ってみたけどどうも内容に偏りがあるのよね。


「歴代の王様の即位年とかは無いのに、いつどこでどんな戦いがあったかは簡単に見つかる。まるで設定資料集ね……。」


ため息をつきながら次の本を手に取ったときだった。


「誰だお前は、見ない顔だな。おい、俺様は暇だ何か読み聞かせろ。」


「……。」


なんだこの失礼なやつは。王宮勤めの誰かの子だろうか?年は私とそう変わらないようだけど……。


「聞こえてるのか?無視とはいい度胸だ、父上に言いつけるぞ!!」


「はぁ……。何でも喚けば言う事聞いてもらえると思ってるの?」


「なっ……!?」


「貴方みたいな子供に用はないの、御機嫌よう。」


付きまとわれても面倒なので、机においていた本を抱えて私は書庫を後にした。持ち出し許可はあらかじめ貰っているし部屋のほうが落ち着いて読めそうだ。


「何なんだよあいつ。俺になびかないとか……。」


一人呆然と取り残された少年は呟いた。



―「ティナ。もう体は大丈夫なのか?」


その後書庫から持ち出した本を読んでいた私のもとに父のオーヴェンが訪ねてきた。


「お父様?えぇ、もう何処も痛くはありませんわ。」


包帯で痕は隠してあるとはいえ、それ以外は至って健康だ。そろそろ帰れるのかなとか呑気に考えていた私に父は爆弾を落としてきた。


「なら準備してくれ。国王と面会だ。」


「ふぇ?」


言われるとほぼ同時に、私はお城の侍女達に連れ去られるように部屋を後にした。



―「非公式の場だ楽にしてくれ。」


「(と言われてもねぇ……。)」


国王の私室に通された私と父は緊張した顔でソファーに腰掛けている。


「して、傷の具合はどうだ?」


王に言われて父は私に肘まで覆うロンググローブを外す用に促した。


「これはまたひどくやられたな。」


グローブでも隠しきれていなかったそれは、遮るものが何もなくなったことで一層酷く見えたようだ。


「痛みはないのですが、消すことは現状できないと言われました。」


私は医官に言われた事をそのまま王様に伝えた。


「うぅむ。呪いか……。」


思いもよらぬ情報に王様も困り顔のようだ。


「王家直轄の領地で起こった事案、申し訳なく思う。」


「いえ、そのような……。」


「顔合わせもできず、この傷では婚約相手を探すのも一苦労だろう。」


あっ、嫌な予感が……。


「ちょうど第四王子のウィルヴァンが同い年だったな。二人を婚約させるか。」


なんて悪役令嬢っぽい婚約の仕方だろう……などと現実逃避をしている場合ではない。


「いえいえ、そんな恐れ多いこと……私に王子の婚約者なんて務まるわけが……。」


まずいまずい。家格は問題ないから断る材料が無い!!

このままだと破滅する!!


「ティナ、何が不満なのだ?」


全力で断ろうとする私に父はたしなめる用に問いかける。とはいえ悪役令嬢だとか世界の強制力といった確定しているわけではない懸念事項を伝えたところで父は納得しないだろう。


「あ……うぅ……。」


言い淀むと王様がすかさずトドメを刺しに来た。


「ということでうちの第4王子と婚約ということでよいな?」


「え?」


相手も善意だけで言っているわけではない。この婚約自体はうちの領と王家の繋がりを強くする。それはすなわち竜の素材をより確実に確保できることにもなるのだ。

王様としてはこのチャンスをみすみす逃す手はないのだろう。


「……はい。」


今の私に打つ手は無かった。



―「まさか、お前が俺の婚約者だったとはな!」


そろそろ領地に帰りたいと思っていた頃、部屋に突然の来訪者が現れた。


「貴方は?いきなりやって来て失礼ですわね。」


婚約者?今婚約者と言ったか?まさかあの書庫で会った生意気なクソガキが……?


「俺を知らないのか?あぁ、そうだったなお前は竜に吐き出されてお茶会も出れなかったからな!」


敵意を隠そうともしない彼はかなり偉そうに名を名乗った。


「いいか、俺はこの国の王子。ウィルヴァン・リューカディアだ!不本意だがお前の婚約者にされたな。」


「あー……。」


正解だったようだ。私は天を仰いだ。


「なんだその反応は?いいか、不服なのは俺の方だ。誰が好んでお前のような傷物と結婚しなければならないのか……。」


ひどい言いようではあるが、分からなくもないと心の中で同意する。


「おい!聞いているのか!?」


反応が薄い私に、この俺様王子は御立腹のようだ。


「で、私に何を求めているのでしょうか?」


「頭を下げろ!泣いて婚約を望めば聞かないでもやろう。」


「え?嫌ですわ?」


「えっ……?」


二人の間に気まずい沈黙が流れた。


「ウィルヴァン様。」


ふと入口から声がし、ウィルヴァンが持ち上げられる。


「な!?離せ!!」


王子付きの侍女だろうか?手慣れた様子でウィルヴァンを抱えると。


「離しません。先触れもなくレディの部屋に行くとは、まだまだ教育が足りないようですね。」


「レディだと?そんなもの何処に……。」


「はーい。これ以上評価を落とす前に講師の先生の所へ向かいましょうね。それでは失礼致しました。」


本当に何だったんだあのクソガキ……。


「え?私、あれと婚約しないといけないの?」


不敬とわかっていてもあれ呼ばわりしたくなる。侍女も憐れんでか何も咎めてこない。


「詫びで婚約と言ってたけど、不良在庫の押し付k……。」


「流石にそれは言いすぎですよ。」


今度は止められてしまった。


「はーい。……はぁ。」


なんとかして婚約破棄できないかなぁ。

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