表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/33

間章『ある会話』

 ――ただの夢、か 『旅人』


   +++


 その世界は荒野でした。

 草の一本も生えていません。

 荒れた赤土と岩だけで出来た世界でした。

 見渡す限り何もありません。

 見渡す限り誰もいません。


「ふぅん。これが新しい世界の可能性か」


 ある男がその世界に降り立ちました。

 虚空から現われたその男は亡羊とした、とらえどころのない人間でした。

 年の頃は十代にも、四十代にも見えます。

 身なりもありふれており、個性と呼べるものはありません。

 ただ、それはそれは不思議な眼をした男性でした。

 プラプラと男性は歩き始めました。

 両の手をポケットに入れ、やる気はなさそうです。

 しかし、興味深そうでした。


「荒野か。荒れきっているな。ハハハッ」


 その男性の背後に一人の女の子が突如出現します。

 どこからかは分かりません。

 男性同様、虚空から現れました。

 その服装はどこかの高校の学生服でしたが、その年の頃はまだ十歳を僅かに超えたくらいにしか見えませんでした。

 女の子は言いました。


「あなたは、誰?」


 男性は向き直って、訊き返します。


「君こそ誰なのかな?」


 女の子は、小首を傾げて答えました。


「……私がこの世界の管理者よ」


 女の子がそう言うと、男性は「ほうっ!」と眼を見張りました。


「ビックリしたよ。君のような可愛らしいお嬢さんが! この世界を!」

「さあ、次はあなたの番よ。あなたは誰?」

「私は『旅人』という可能性さ」


 女の子は眼を瞑って、何かを思い出しているような仕草で言いました。


「……研究集団『壱式いっしき』が捜しているっていう? 究極の存在ってやつ? ありとあらゆる世界を自由に旅するっていう?」


 男性は益々驚いたようです。


「君は、何でも知っているのかい?」


 女の子は首を左右に振りました。


「今、知ったの」

「ふむ、情報収集能力まで有しているのかい。君は私が知る限り――最高の力を持っているようだね」

「あら、そう」


 女の子は興味が無さそうでした。

 もう男の存在にも興味が薄れているようでした。


「こう見えても私はありとあらゆる世界を旅してきたんだよ」

「そう、みたいね」

「でも、君ほどの能力者は初めてかもしれない」

「私の能力が空前絶後、だとでも? 他の世界の私に会えばよろしいじゃないですか」


 どこか皮肉のこもった調子で女の子は言いました。


「そうだね。でも、出来ればあまり関わりたくないな。君と敵対したら、私の可能性も消し飛ぶかもしれない」

「そんなつまらないことはしないわ」

「そうかもしれないね。君ほどの破格だったら」


 強すぎるからこそ――優しいと男性は言いました。

 女の子は肩を竦めて相手にしません。


「ところで、この世界には今、君と私以外にも他の可能性が存在するみたいだが」

「ええ、それがあなたに何の関係があるの?」


 もし、そのもう一人が今の女の子を見たら驚いたかもしれません。

 女の子は冷たい眼で男性を見下していました。

 まるで、虫けらを見るようでした。


「少しくらい遊んでみても良いかな?」

「余計なことをしたら――締め出すわよ」


 女の子がそう軽く忠告すると、男性は首を振りました。


「そんな恐ろしいことはしないさ。好奇心で殺されたくないよ。ただ、興味があるだけさ」


 君とも、私とも違う。そんな可能性に、と男性は言いました。


「言っておくけど、彼は普通の人よ」

「それでも、君がここに呼んだんだろう?」

「……ええ」

「なら、ね。大丈夫、会ってみるだけだよ」

「邪魔はしないで」


 女の子はそれだけを言って、虚空へ消えました。

 跡形も残りません。

 一瞬のことでした。

 男性は「ふむ」と言って、歩き始めました。

 その姿がゆっくりと消えていきます。

 ゆっくりと、ゆっくりと。

 …………。

 ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ