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呼び出し


らない暗殺者は、ただの美少女だ』

 なんちゃって。

 ただいま絶賛ふて寝中。


♢♢♢ 

 

 勇者アクセルの来訪から三日が過ぎたけど、まだあの依頼を受けるかどうかは決めてない。

 というか、決まらない。勇者バカが持ってきた馬鹿げた依頼書を片手に、ぐるぐると考えを巡らせてみたけど全然答えが出ないのだ。

 私には、この依頼を受けたい理由がある。

 私には、この依頼を受けたくない理由がある。

 

 真逆の二つの考えが頭の中で激しくせめぎ合った結果、思考回路がショート寸前状態で、何もやる気がしなくなったので、もう寝ることにしました。

 毎日宿屋でゴロゴロしてます。

 あと、なんか知らないけど、勇者が来た日からずっとギルドからの呼び出し状が届きまくるんだけど、めんどくさいから、それも無視してる。

 Sランクの暗殺者様は忙しい(嘘)のだ。

 用事があるなら、そっちから来い! 

 

 ……なんて思ってたら、本当にギルド職員が直接呼びに来ちゃいました。

「ルイカちゃん、ギルド長代理がお呼びです。今から一緒に来てくれませんか?」

「やだ」

「え? どうして?」

「めんどい」

「でもでも。ルイカちゃんが来てくれないと、わたしがギルド長代理に怒られちゃいますよ?」

「どんまい」

「そんなぁ」


 宿屋の私の部屋にやってきて、涙目になっている女の子は、ギルドの受付嬢をしているマリナちゃん。

 私がカサンドラで暗殺稼業を始めた頃からの付き合いなので、ギルド職員の中では一番仲が良い。

 ぶっちゃけお友達だ。


 暗殺者を宿屋まで迎えにくるなんて受付嬢の仕事じゃないと思うんだけど、私との関係が考慮されての人選なんだろう。

 Sランク以上の高位暗殺者ハイランカーの場合、気難しい人間が多いので、対応を間違えて怒らせちゃったギルド職員がその場で殺されちゃう、みたいな事案が結構発生するらしくて、一般職員からは敬遠されがちなのだ。

 

 別に、高位暗殺者なら人を(仕事以外で)殺しても罪に問われない、という訳じゃないんだけど、職業柄、割と簡単に殺っちゃう人が多い。

 そして、それを罪に問おうとしても、飛び抜けた戦闘能力を持つ高位暗殺者を相手にして、身柄を拘束しようとするだけで、ギルド側に数多くの犠牲者が出るのは目に見えているので、大抵の罪は、罰金程度でうやむやになっちゃうらしい。


 もちろん私はそんなこと絶対にしないんだけど、高位暗殺者の存在ってレアだから、一括りにされて恐れられてるんだよなー。

 もう。いったいどこの誰だ? 

 高位暗殺者の評判落としてくれてるやつは?

 ぷんぷん。

 

 あ、ちなみにこの前のチンピラ三人組は、実は殺してないよ。

 ちょっとだけ手加減して三人共死ぬ一歩手前で生かしてました。あの後、ギルド職員に回復ポーションをかけられて復活してます。ただ即死しなかっただけで、心臓を傷つけられて死ぬ寸前の状態から回復させる程のポーションはとても高価なので、ポーション代金はそのまま彼等の借金になって10年くらいギルドのいいなりになって奴隷のように働かされるけどね。

 10年で更生して立派な暗殺者になれるといいね。


 まぁ、そういう訳で、色んな職員に避けられたあげくに、お友達のマリナちゃんが派遣されてきたみたいだ。

「うー。お給料下げられちゃいますよー」

 涙目のままで、かわいく唇をとがらせるマリナちゃんは、私より一つ年上の十七歳のはずなんだけど、童顔だし舌足らずの甘えん坊な口調なので、年下にしか見えない。垂れ目がちで柔和な印象を与える大きな瞳と緩くウエーブのかかった桃色の髪が可愛らしい。 

 そして、受付嬢なのになぜかメイド服装備。


「暗殺、がんばってくださいね?」

 と小首を傾げて謎の疑問型で繰り出される、魅惑の綿菓子ボイスに、何人の暗殺者おにいちゃん達がハートを打ち抜かれたことか。

 暗殺者ギルドのロリ担当とは彼女のことだ。 

 ただし!

 そこのおっぱい! お前は別だー! 

 童顔で天然で身長も低いのに、おっぱいだけは年相応……いや不相応にロリじゃない。 

 歩く度にポヨンポヨン揺れて、男達の視線を釘付けにしてる。ていうか、どうしてそのメイド服は胸元がそんなに強調されているの? 童貞を殺す服なのか? たぶん、無自覚に何人か殺してるよね?

 つまり、マリナちゃんはSランク暗殺者に匹敵する最強属性・ロリ巨乳なのである。

 ちなみに、私とマリナちゃんとで暗殺者ギルド本部の美少女ツートップと呼ばれてます。



「もー。ルイカちゃんの馬鹿ー」

「まぁまぁ。そんなことよりマリナちゃん、もうお昼ご飯は食べちゃった? まだなら奢るよー? ルームサービス頼んじゃうよ?」

「でも、ギルド長代理がぁー」

「今日のお薦めランチは地獄牛ヘルオックスのビーフシチューらしいよ? 危険度4以上の魔物の希少食材だよ?」

「うー、食べますー」


 よっしゃ、ちょろい。

 とりあえずご飯でマリナちゃんの気を逸らして、呼び出しをごまかそう。

 私の泊まっている宿屋は『廬山昇竜亭』と言って、主な客層は暗殺者ではなくて、カサンドラにやってくるお金持ちの依頼人なので、小さな街にしてはなかなかの高級宿屋だ。当然、料理も美味しい。

 食いしん坊のマリナちゃんを懐柔することなど容易いのである。

 私はカサンドラに来て以来、ずっとこの宿屋に住んでいる。だって、自分で掃除とかご飯作るのとかめんどいし。宿屋なら全部やってもらえて楽ちんだからね。

 

「ルイカちゃんデザートに苺のタルトもつけていいですかー?」

「いいとも。たんとお食べー」

「わーい」

 そんな感じで、午後は久しぶりにお友達との女子会ランチを楽しんだ。



 …………。


 …………。

 

 …………。


 …………それから一時間後。

 マリナちゃんとの楽しい女子会ランチが終わって、昼下がりのくつろぎタイムは、またゴロゴロとお昼寝でもしようかと思ってたんだけど……。

 


「……………………(じろり)」



 はぁ。

 私はなぜか暗殺者ギルドの本部に出頭して、陰険な目つきの中年ハゲに睨まれてます。

 どうしてこうなったし。



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