勇者と合流
はぁー、なんか疲れた。
久しぶりに会ったけど、勇者のパーティーは、やっぱりみんな個性強すぎ。
長旅の直後に、連続して濃い人達に接すると疲労感が半端ないね。
とりあえず、やっと東の繁華街に辿り着いたので、勇者がいるというキャバクラに行ってみよう。
ピンクの看板がかかった派手な装飾のお店は、すぐに見つかった。入り口から半地下になっている店内への階段を降りて、中に入ると確かにそこに勇者がいた。
「はっはっは。王様だーれだっ……オレでした。ホントは勇者だから勇者王だぜっ☆」
「勇者王様ぁー、御命令はなんですかー?」
「一番と二番と三番とそれ以外が勇者王様にちゅーをしろ!」
「えー、ちゅーとか恥ずかしいー。でも勇者王様の御命令だしぃ、ちゅ」
「ていうか、それって全員じゃん? ちゅ」
「勇者王様って、エッチよねー。ちゅ」
「はっはっはっー、余は満足じゃ!」
…………。勇者、王様ゲームしてました。
大魔王との決戦を控えた緊張感とか一切無いわ。
そして君達は避難しなくていいのか?
キャバ嬢よ。
「おい、勇者。来たよ」
「ああ? ……暗殺娘じゃねーか。マジで来たのか、半分冗談だったのによ」
むかっ。いきなり失礼な奴。いつもだけど。
「勇者が自分だけじゃ大魔王に勝つ自信が無いって言うから来てあげたよ」
「ちっ。ていうか、なんだその服? ヘソ出しルック? モテたいお年頃か? 露出が多かったらモテるってもんでもねーぞ」
むかっ。むかっ。
さっきの変態元Bランクと同じようなことを言いやがった。お前も顎の骨砕くぞ!
「えー、超かわいいじゃーん」
「キュートあんどクールみたいな?」
「そーだよぉ、ウチのお店においでよー。絶対売れっ子になれるから」
お、キャバ嬢さんたちはなかなか分かってるね。よし、もし今、大魔王が攻めて来ても私が守ってあげよう。
「なれねーよ。ただの寸足らずの田舎小娘にできるのは暗殺だけだろ。キャバ嬢に就職したいなら、身長伸ばして、百年ぐらい色気磨いてから出直して来な」
………………ぷつん。
いや、別にキレてないよ?
長旅と濃すぎる勇者の仲間達との連続遭遇で溜まった疲労が、頭の中で爆発したような気がするけど、別に酔っ払いの戯言なんて、いちいち相手にしないし。
…………相手にしないけど、何故かポケットから、さっきおまけで貰った火炎札が。
お? キャバ嬢達がスススッと勇者のそばから離れて行く。
ナイス危機管理能力。プロだね。
じゃあ、遠慮なく…………
ぽいっ。
「ばっ、おまっ、洒落になっ…………!!」
自分に向けて投げつけられた札が何なのか気がついた勇者の顔が、途端に青ざめる。
だけど、もう遅い。
「爆炎となれ」
私の声に反応した火炎札が激しく爆ぜる。
「のわぁっっ!!!」
よし。すっきり。
『ある意味、魔王軍より質が悪い人類ランキング』の一位の奴を駆逐しました。
これで世界は平和になったよね?
めでたしめでたし。
ということで、一応、勇者と合流できました。