模擬戦②
「私は負けたくない!」
彼女から覚悟が伺える。
こんな平和な時代なのに必死で負けたくないという感情があるのは性格なのか、それとも使命なのか。
俺にはわからないが、本気を出さないが正面からぶつかって上げることにした。
「いいよ、もう一回展開しなよ。勝てると思うんだろ?やってみな、格の違いを教えてやる。」
「幻想結界『質量こそ正義』!」
彼女は幻想結界『質量こそ正義』を再展開する。
魔力量は見た感じは明らかなほど彼女のほうが多い。
もちろん、伝説の賢者というだけ並の人間よりはかなり多い。
だが、マリエルの家系は一般の魔術師と比べて100倍以上はある魔力だけで見ても化け物クラスが生まれる家系である。
なので、ゴリ押し戦法が使えることが多くそれによって培われてきた魔術が多く、その魔力が多いことからレーベル家特有の術式や戦術が生まれた。
そして、魔力を大量消費する代わりに必殺といっても過言では魔術の奥義の一つ「幻想結界」をレーベル家が開発した。
そして、その家系の者が展開するのは世代によって効果が違えどマリエルが展開している『質量こそ正義』みたいな幻想結界を使っているのだ。
魔術の歴史が研鑽されていくと色々なものが開発され、廃れていったり、残ったりしたりするのは珍しくもないが、魔術師なのに脳筋みたいな魔力があれば勝ちみたいな魔術結界を展開することは一部の者を除いて攻略不可能レベルなっており、恐れられていた。
もちろん、対策は散々され尽くされたが突破されたことはほぼないとされている。
「ふぅ…改めて見るとすごいねこの幻想結界は。これって要するに有利不利関係なく魔力の高い魔法や魔術を放てば、それを上回る魔力の魔法や魔術がなければ、押し負けて必中するみたいだね。しかも、特殊な魔術使っても関係なく叩き潰されるね。」
「なら今度は受けてください!オーバーブラスター!」
彼女は威力かつ魔力を大量消費する無属性魔法を使う。
放たれる魔法は膨大なビームである。
これは普通に防ぎきれる防御魔術を使ったとしても基本意味はない。
何故なら、防いだあとに俺に魔法が必中するからだ。
ならば、俺は使うのはこの魔術だ。
「な、なに!?この魔力反応は!?」
彼女は明らかに自分を上回る魔力反応を確認する。
後出しで勝てるような余裕が見受けられたのは恐らく、魔力を何らかの方法で隠しているか瞬時に増やす方法があったからだろう。
「幻想は砕ける。」
それは彼女が放った極太ビームに比べて糸のようなレーザーであった。
見た目で言えば負けている。
なのに、両者の魔法と魔術が衝突するとオーバーブラスターが消滅し、彼の「幻想は砕ける」がマリエルの肩を貫いた。
「なっ!?」
そして、彼女はファンタズムフィールドから弾き出されたのだ。
この勝負はアルセイルの勝利である。
「うん…なかなか悪くはないけど、無駄が多いね。魔力の多さにゴリ押しして肝心な所がお粗末だね。」
「ハハハ…これが伝説ですか。強すぎじゃあないですか。」
「何言ってるんだよ、別にあの程度で強いとか言われても困るよ。今回は君の幻想結界の使い方が雑なのがいけないよ。」
「雑なんですか?」
「そう、せっかくいいもの持ってるのにとりあえず最強クラスの魔法を使って勝とうとしてるのが甘いよ。どうせやるなら自分で最強クラスの魔術でやりなよ。既存の魔法でゴリ押ししようなんて自分からしたらナメているとしか思えない。」
敗因は彼の言う通りなのだろろうか。
魔力で既に負けていた。
そう、彼が魔術を放つ前は魔力量は勝っていたのに、あの一瞬だけは負けていたのだ。