落ちる
退勤時間が来て、溜め息をついてタイムカードを押す。ああ、早く帰りたい。
ウチの会社はビルの13階のフロアを借りてある。そこそこ大きなビルなのでたくさんの人が出入りしている。
そのため、退勤時間のエレベーターは大変混雑するのだ。
若い連中や、健康重視の重役は階段を利用するが、その元気はない。
まるで満員電車の如くの鮨詰め状態のエレベーターが三基、ピンポイント激務状態となっていた。
その日の帰宅時間、急いでエレベーターホールに来ると、なんと三基のエレベーター中、二基がメンテナンスで我々が乗れるエレベーターは一基しか残っていなかった。
かなりのエレベーター渋滞。ため息をつきながら順番を待つ。そもそも、下に行ったエレベーターが、最上階優先なのが腹が立つ。お陰で我々が乗る頃には満員に近く、乗れるのは一人、二人だ。
若い連中や、年の近い連中までも階段を選んで消えていく。
ライバルが減ってホッとするものの、まだまだ人はいる。そして安定の満員。誰にも当たれない怒りが込み上げてくる。
だが、汗を垂らしながら一時間、ようやく順番が来た。俺は満員にほぼ近いエレベーターに乗り込む。
「ビ──」
満員を知らせるブザーが一度だけ。しかしそれは消えて扉の閉められる状態になった。今日、何度もぶつかった光景だ。
扉が閉まる瞬間、メンテナンスの二基の前に置かれた看板に書かれた文字が見えた。
『老朽化によるメンテナンス中』
それで扉は閉まる。途端に『ガタン』と激しい異音が聞こえた。
老朽化? 老朽化だって!?
エレベーターが設置されたのは同時期のはず。それが一基だけ例外ではない。これを今日、こんなに酷使していたら──。
『ブツン! シュル シュル シュル』
その刹那、電気が全て消え、エレベーターはスピードを増して一階へと……。