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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

赤い糸、銀の手錠

作者: 水無月 宇宙

こんにちは。水無月 宇宙です。

本作品を選んでくださり、ありがとうございます。

この作品を読んでくださる人に、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

「僕のこと、ずっと好きだよね…?僕だけ見ててね…?」


とある学校の、体育の授業。

ぼーっとバスケの試合を見ていた雪人(ゆきと)は、近くにいた(れい)に声をかけられた。

「ねえ、雪ちゃん?何見てるの?」

「あ、え、と。別に、何も…」

「ふうん。そっか。…僕のこと見ててよ?」

さっきまで明るかったのに、突如低くなる声に、雪人は肩を震わせる。

「…う、うん…」

「うん、良い子だねー」

玲は、雪人の頭を撫でて、試合に入った。

「……………」

そんな玲を、雪人は怯えた瞳で見ていた。


「…(りょう)くん…。雪人、どうしたらいいかな…」

放課後の教室。

雪人は、不安げな瞳で、凌を見つめた。

「…俺も、なるべく近くにいるようにするから。けど、学校内とか、あんま一緒にいれないから…。雪人は、あいつとあんまり一緒にいないようにして」

凌は雪人の両手をぎゅっと握った。

「うん…」


「ねえ、雪ちゃん…」

「な、に?」

雪人は、玲の目を見ずに言葉を返した。

玲は、そんな雪人の顔をぐっと自分の方に無理やり向かせる。

「なっ、なに…」

「昨日の奴、誰」

「え…」

ハイライトが入らない玲の目は、凄く冷たい。

「な、なんのこと…」

「昨日、放課後雪ちゃんといた奴」

一体どこで見ていたのか、雪人は寒気がした。

「あ、え、と。と、友達…」

玲は雪人の腕を掴んで、力を込めた。

「いた…っ」

雪人は思わず顔をしかめる。

「友達?距離近すぎじゃない?ねえ、友達なの?ほんとに?」

「……っ」

雪人と凌は、本当は付き合っている。

けど、誰にも言ってないし、今までもバレたことはなかった。

「…雪ちゃん……僕だけ、見てくれるよね…?」

「…う、ん…」

雪人はこくこくと何度も首を振った。

玲は、それを満足そうに見ていた。


「……凌くん…、玲くんに、ばれた」

「は?」

「玲くんに、付き合ってること、ばれた。あと、昨日会ってたのも」

「嘘だろ……じゃあ、今もいるかも、ってこと…」

凌は、周りを見渡した。

「で、でも。ここ、街中だし、流石に見つけられないでしょ…」

雪人が言った言葉は、半分以上が願望だった。


次の日、学校に登校した雪人は玲に人気(ひとけ)がない階段裏に連れ込まれた。

「ゆーきちゃんっ」

「れ、玲くん。な、に?」

玲は、雪人を強く掴むと、壁に押し付けた。

「い゛っ」

「何、あいつ?まだ付き合ってんの?てか、何で一緒に出掛けてんの?意味わかんないんだけど」

冷たい瞳でそう言うと、玲はポケットからカッターを取り出した。

「ひっ…」

「僕だけ見てればいいの、分かった?」

「い、嫌っ…りょ、凌くん…っ」

その言葉を聞いた玲は、壁を殴りつけた。

「僕以外の名前出さないで。特にそいつ。不快だから」

「…………っ」

雪人の瞳から涙が零れた。

玲は雪人の涙を拭うと、頭を撫でた。

「良い子にしてれば、なにもしないから。ね?」

「……う…ん…」


「……凌くん、もう…別れよ…?」

「……あいつ?」

「………」

俯いたままの雪人を見て、凌は悔し気な顔をして、拳を机に叩きつけた。

「なんなんだよ…なんで雪人に付きまとってくんの…っ」

「ご、ごめんね、凌くん………」

「雪人は、悪くないだろ…」

「………っ、ご、めっ」

雪人は、凌にしがみついて泣き出した。

凌は、雪人の背中を撫でながら、強く抱きしめた。

「凌くん………今まで、ありが」

「………」

凌は雪人の唇に自身の唇を押し付けて、言葉を遮った。

「りょ…う、くん?」

「やだ。別れない」

「え……」

「俺、全然頼りないと思うけど、雪人のこと、大好きだから。守りたいって、思ってるから」

凌は雪人の瞳を見つめて言った。

「で、も…」

雪人は不安げに凌を見つめた。


「…雪ちゃん、僕、全部知ってるからね?それが雪ちゃんの答えってことでいいんだよね?」

「な、んで………」

「雪ちゃんのことなら何でも知ってるよ?もちろん、あんな奴よりね」

雪人は、玲が憎らしげに言ったことで、「あんな奴」が凌を指していることを察した。

「れ、い、くん…」

「僕は雪ちゃんのことを思って言ってるんだよ?雪ちゃんにはあんな奴、似合わない」

「…や、めて…」

「へえ、反抗するんだ…?」

「な、んで…雪人なの……」

「雪ちゃんだからだよ?僕は雪ちゃんの全部を愛してるから。生まれ変わっても、ずっと一緒だよ?僕が、雪ちゃんに付く虫、全員払ってあげるから…」


「りょう、くん…ほんとに大丈夫なの…?」

「大丈夫だよ。今日は休日だし、それに…。普通に俺が一緒に出掛けたいから。これでも、我慢してる方だよ」

「うん…。雪人も、出掛けたかった」

凌の袖をきゅっと掴む雪人を見て、凌は微笑んだ。


―――ドンッ


キ――――――――――――ッ


「おいっ!誰か轢かれたぞ!」

なんで?

「大丈夫か!?」

どうして?

「救急車呼べっ!!」

雪人はただ呆然と赤に囲まれた凌を見つめた。

息をしていない。

そんなことは、一目瞭然だった。

「……りょ…く、ん…?」

雪人はその場に座り込む。

涙は出てこなかった。

それより、恐怖心が雪人を襲い掛かった。


ナンデ、ココニイルノ…?


「…雪ちゃん。おいで?」

その場にそぐわない笑顔で、玲は雪人に手を差し伸べる。

「……れ…い、く……なんで…?」

「なんで?そりゃあ……要らないからでしょ」

笑顔を引っ込めて、玲は動かない凌をゴミを見るような目で見た。

「い、らない…?」

「そ。いらないでしょ?僕と雪ちゃんを邪魔する奴なんて。だから、僕が消してあげたの。雪ちゃん、優しいから、縁切れないもんね?」

全身の震えが止まらない雪人とは反対に、玲はいつも通りの様子だ。

「あんな奴が、雪ちゃんの近くにいたのがおかしかったんだよ」

「…………お、かしく、ない…」

「……まあ、いいや。雪ちゃん、行くよ?」

「ど、こ…に…?」

腕を掴んで立たせた玲を、雪人は泣きそうな顔で見つめる。

雪人の質問に玲は、きょとんと首を傾げる。

「どこって…僕の家だよ?ちゃんと、雪ちゃん用の牢屋も作っておいたから」

「ろ、うや…っ!?」

「うん?そりゃ、そうでしょ。雪ちゃんを害虫から守るためだよ?」

玲はにっこりと笑って、雪人の手を握った。

「いやっ!!」


どんっ!


雪人は玲を突き飛ばして距離を取る。

玲がぶつかったのは、工事の木材や金属が積み上げられているところだった。

「……あっ」

「え…?」


ガシャンッ


「え……れ、いくん」

「………………」

「雪人が……ころ、した……?」

「…………」


その日、雪人の周りの人が二人死んだ。

車に轢かれた、恋人と、金属の下敷きになった、ストーカー。


「雪ちゃん」

「…れ、い…くん?」

あの日から、雪人は部屋に閉じこもっていた。

毎日毎日、二人のことを考えてた。

玲に殺された、離れたくなかった、凌。

偶然といえど、自分の手で殺した、玲。

後悔だけが残って、恐怖心だけがこびりついて離れなかった。

そんなある日、玲の声が聞こえた。

雪人は、周りを見渡す。

ぼんやりと、玲のシルエットが見える。

「雪ちゃんに会いたくて来ちゃった」

「え…あ、と。あ、の」

「落ち着いて?」

「ご、めんなさい…。謝って許されることじゃない、けど、ごめん、なさい…」

俯いた雪人の顔を覗き込んで玲は笑った。

「いいよ、別に?……だって…」

「………?」

「雪ちゃん、あの日からずっと僕のこと考えてくれてるでしょ?嬉しいなぁ…」

うっとりとする玲を見て、雪人はふと思った。

玲はここに戻ってきたのに、凌は何故いないのか。

「…雪ちゃん?」

雪人の思考を止めたのは玲の低い声。

「な、なに?」

「今、何考えてた?」

「え?」

「僕以外のこと、考えないでね?そうしてもらうためにわざわざ戻ってきたんだから」

「あ……」

玲は嬉しそうに雪人の顔を覗き込んだ。

「死んでても、ずっと一緒だよね…?好きだよ、雪ちゃん?」

「…あ……」

「僕たちはさ、運命の相手なんだよ。だから、ずっと一緒にいなきゃいけないの。何があっても、ね?」

玲は、雪人の首に手をかける。

「…い、や……」

「何があっても、離れないから…。僕たちは、赤い糸なんてほっそい長いものじゃなくて、手錠みたいな丈夫な短いもので繋がってるもんね…?絶対離れられない、運命なんだよ…?」

そして、雪人の首を絞めつける。

「や、め…………っ」

「ほら、受け入れなよ…。今更足掻いたってもうどうしようもないんだからさ…?」

「ぐ、る…じ…っ」

玲は更に力を強める。

「一緒に逝こうよ…。僕と一緒になろう?」

朦朧とする意識の中で、雪人は玲の嬉しそうな声を聞いた。

「何時でも何処でも一緒だよ…。雪ちゃん、愛してるよ」

そして雪人が最期に聞いたのは、金属音。


ガチャン


それは手錠をかけるような音だった。

最後まで、お付き合いいただき、本当にありがとうございました。

楽しんでいただけたでしょうか。

もし良ければ、コメント、ブクマ、評価など、していただけると嬉しいです!

誤字等は、見つけ次第教えてくださると幸いです。


ヤンデレってよく分からないと思っていたのですが、なんだかんだ、書くの楽しかったです(笑)

ヤンデレっぽくなかったら、すみません。


それではまた、他の作品で会えることを楽しみにしています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 感じたことそのまま書きます。 読む前 bLか、これ?わからん 読んだあと メンヘラ、コワッ!!
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