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非接触時代 ~接触不可な恋活~  作者: 無乃海
後編 恋が繋ぐ未来模様
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閑話B.恋愛への道は険しくて

 今回は番外編となります。相手側から見たら、こういう状況でした。


 「男子と友達になれたのは初めてで、どうするべきか困惑したけど、私達は単なる友達だから一々報告しなくても、いいのね。」


漸く彼女が、僕と友達になってくれた。然も彼女から、友達になりたいと言ってくれて。その瞬間から僕の人生が、光輝いて見えるほどだ。大袈裟だと思うかもしれないが、僕にとってはそれほどに嬉しく、待ち望んだ返答でもあったのだ。


だからこそ彼女のこの一言で、僕は…地獄を見た気になる。彼女は悩みが解決したとばかり、嬉しそうに笑っているけれど、僕は()()()()()()()ない。単なる友達という彼女の一言が、僕の胸をグサリと抉り取っていく。彼女が恋愛関係に鈍いことなど、以前から気付いていた。しかし、まさか友達になれたその日に、釘を刺されるとは…夢にも思わないことだろう。


夢にも昇る心地から、一気に地面に叩きつけられた、そんな気分である。少なくとも数分前までは、今までの人生の中で最も幸せを、噛み締めていたのに。彼女の言動の1つ1つに振り回され、天国と地獄を行き来している。


 「……くっ!…破壊力があり過ぎる……」

 「………はい?」


この瞬間の彼女の笑顔を、僕は一生忘れられそうにない。彼女から向けられた愛くるしい笑顔に、心臓がドクンドクンと激しく音を立て、ボッと火が出るぐらい顔が熱くなった。僕の顔はきっと真っ赤に、染まっただろう。


即座に僕は顔を隠そうと、くるりと彼女に背を向けた。ところが、顔の熱は一向に引かない。初めての恋に落ちたかのように、バクバク飛び出す勢いで心臓が動く。恋に落ちた瞬間とも言えそうな場面だが、実際には僕はずっと以前から、恋に落ちているんだよ。


「何故後ろを向くの?」というような、彼女の強い視線が背中に刺さる。僕の呟きを勘違いしたのか、自分の笑顔が醜いとでも捉えたらしく、()も僕が耐え切れずに背を向けた、とでも解釈したのだろう。


 「……っ!…いや、全然、大丈夫だよ!…君の笑顔は、可愛いから!」


僕は背を向けたままで、精一杯否定してみせた。しかし、彼女は単なるお世辞と受け取り、お世辞は要らないと返してくる。君の笑顔が耐えられないなど、あり得るはずもないじゃないか。君にお世辞なんて、絶対に言わない!


 「…いいや、お世辞じゃない!…僕がただ、耐えられなかっただけで…」


僕が否定するほど、否定的に捉えるのは…止めてほしい。僕が耐えられないと言った着後、彼女はまた沈黙した。何時間にも長く感じるぐらい、沈黙が続くほど怖くなる。この沈黙の意味を、深掘りしそうだ。


……まさかまた、おかしな誤解をしてないかな?


彼女の沈黙が長くなればなるほど、心配になってくる。まさか…笑顔に耐えられないという、おかしな方向に持っていかないかと、僕は慌てて振り向く。君の笑顔があまりに愛らしい所為で、眩し過ぎて直視できなかっただけなのに。真っ赤な顔の顔を見られたくない、というのも()()()()()()()()()……


彼女は元々、僕のことを友人達に打ち明けるべきか、悩んでいたのだろう。取り合えず誤解はされず、やっと乗り切れたと一安心する。僕たちは漸く、友達になれたばかりだ。誤解だけはさせないよう、今まで以上に気をつけようと決心した。


そして、僕がそう決心した矢先に、例の言葉を聞かされるなんて…。友人に報告するほどではない、自分達は単なる友達なのだと、突き付けられたようだった。これからもずっと永遠に友達だと、宣言されたようで。『単なる友達』という部分が、何度も繰り返し脳内で再生される。


 「どうしたの、紗明良さん?」

 「…誰も何も言わないし、自分から言うべきかどうか、迷っていて…」

 「…ああ、そうだね。周りが敢えて訊かないようだし、自ら言う必要はないと思うよ。そんなに…気になる?」

 「…うん。何だか、余計に気になっちゃって…」


彼女は親友に隠すようで、心がスッキリ晴れないのだろう。本当は僕も堂々とみんなに宣言したいし、周りから認めてもらいたい。特に昔からの親友達には。だけど僕らの関係は、単なる友達の範疇でしかない。それを僕自ら認めるのは、途轍もなく何だか辛い。


…現実として親友もクラスメイト達もみんな、当の昔から僕の本当の気持ちに気付いていただろう。だからこそ、何も言わずにいてくれたようで……


だけど、そうしたみんなの好意が却って、彼女の心をかき乱すらしい。彼女がまだ幼かった頃、他人の口さがない噂話を耳にして、その上同年代の男子に嫌がらせをされた。その所為で、態と見て見ぬふりをされるのは、余計に不安を煽ったはず。


それなのに、僕は…。彼女に誤解されても、仕方がない言葉を口にした。誰よりもそれを知っていたのに、つい()()()()()()()を見苦しく晒して。




 


   ****************************






 「寧ろしつこく訊かれた方が、居心地が悪い…」


他人の目は気にしなくていいと、彼女の心を軽くするつもりが、つい自ら本音を漏らしてしまう。何度拒否しても追い回され、好きじゃないと拒絶しても、他に好きな子がいると断言しても、自分の方が好きで自分の方が可愛い、という筋の通らない一方的な猛アピールを、何年も受け続けていたから。


僕はポロリと口に出し、しまった…と後悔した。これではまた彼女が、誤解してしまうじゃないか。僕がみんなに知られたくないと、友達になれたことを隠したいとか、受け取られそうで。


実際に、彼女が悲しそうな顔をした。慌てた僕は否定しようとするも、敢えて否定するのを止める。ただ単に否定するだけでは、また違う方向に勘違いされる、そう気付いたから。ここは慎重に動こう。彼女が納得するまで、相談に乗るべきだと思いながらも。


 「君の友達は、何か言ってない…?」

 「…何も言わないけど、好華ちゃんが何か言うかと思っていたから…」


そう言えば牧村はいつも、僕を睨んでいたっけ。てっきり僕は、尾上さんに目を付けられると、責めているのだと思っていたけれど、あれは…()()()()()()()()()()は寧ろ、はっきりしろ…と言いたげな顔だと、今更ながらに感じた。


…なるほど。今更彼女達に指摘しても、もう既に手遅れだろうし……


親友を本気で心配するあまり、彼女の友人達の行動は行き過ぎている、と言えるかもしれない。いい友達を持っているよ、君は。


 「好華ちゃんも希空ちゃんもカルラも、不自然なぐらい話題にしないし、いくら何でもおかしいわ。だけど、友達になったと敢えて報告するのも、恥ずかしいし。どうして何も、訊かないの…?」


普段と違い過ぎれば、不自然だと誰でも思うだろうと、苦笑した。自分達から言い出すのは、例え恋人になった…という報告だとしても、恥ずかしいと思うのが普通なのだ。況してや親友に報告するのは、言いづらいことである。


 「…彼女達が何も言わないということは、心の中ではきっと祝福してくれているはずだよ。君がやっと自信を持てたばかりだし、黙って見守ってくれているのだろう。君の友達は皆、よくできた素晴らしい人達だ。」


友達になったぐらいで、誰も一々報告したりしない。幼い時は兎も角、高校生なのだから。そう分かっていても、彼女が納得できるよう、別の言葉で説得を試みる。実際に彼女から、同じ言葉を突き付けられると、胸が痛くて……


 「…そうね。私と高峰君は、()()()()()()()なっただけ…。意味もなく、考え過ぎていたみたい。みんなに話す前に、高峰君に相談して良かった…」


が~~ん。頭をトンカチか何かで、打たれたような衝撃が僕を襲う。頭の中では同じ言葉ばかり、何度も再生される現象になって…。確かに僕は「友達になって」と伝えたし、友達から始めようと誓った。しかし、「ただの…」という部分が付属すると、思っていた以上に心が重くなっていく。


それでも唯一、僕への救いとなったのは、彼女のホッとしたような笑みが、僕の心をほっこり温めてくれる。もしかしたら…という淡い期待をせずに、いられない。僕がもっともっと頑張れば、君が…僕の気持ちに応える日も、(いず)れは来るかもしれない。


……そんな日が来たら、どれほど嬉しいことだろう。少しは…僕も期待して、いいだろうか?


その後、彼女の友人の1人として、良好な関係を築いている。彼女と難なく話せるようになって、僕は相当舞い上がっていたようだと、だいぶ後になって認識させられたのである。


 「最近、朱里さんを見掛けないようだが、彼女と離れていても…大丈夫?」


最近は少しでも長く一緒にいたくて、授業が全て終わった後も2人で、学校の空き教室で過ごしている。他の生徒達から見れば、恋人同士にも見えなくもなさそうだが、未だ僕らは仲の良い友達のままだった。


これでも彼女から見れば、親友に近い友人に昇格したらしく、気を許してくれているようである。僕も嬉しくて浮かれていたことで、朱里さんの存在をすっかり忘れていたらしい。僕の相談にも、あれほど乗ってもらっていたというのに、忘れていたなんて。さぞ冷たい人間だと、僕のことを呆れているに違いない。


 「…えっ?……朱里さんだったら、今も私のすぐ傍にいるけど…」

 「……えっ?………」


ところが、彼女から意外な答えが返されて、驚いた。「ほら、ここに…」と彼女が指を刺す辺りを、僕はジッと凝視しようとする。人影のような人物を、なんとなくぼんやり捉えた程度だったが、女性の姿であることは断言できた。この霊が…本当に朱里さん、なのだろうか?…そう言えば、似ているような気もするが…。


 「…朱里さんなのか?…傍にいるとは、全く気付かなかったのに…」

 「…姿もはっきり見えないし、声も聞こえなくなったでしょ?…実は私の審神者(さにわ)の能力が強まった所為で、私が承認しないと彼女の姿も見えないし、声も互いに届かないみたいで…」

 「…それじゃあ、僕は朱里さんと()()()()()()()、話せないんだね…」


朱里さんと気軽に話した、あの頃を懐かしく思う日が来るなんて……

 今回は高峰君の視点から、書いています。紗明良視点だけでは、分かりにくい部分を補う形となれば、良いのですが…。


知らないうちに紗明良の能力が、アップしていたようです。能力が上がれば上がるほど、今までのように朱里さんも自由に動けず、姿や声も他の人から見えないし聞こえない、そういう状況になっていくと、思います。但し、紗明良が許可すれば、今まで通り認識できるという設定に、なる予定です。


次回は、この続きになりそうです。ちょっとした波乱も、起きるかも…?

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