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非接触時代 ~接触不可な恋活~  作者: 無乃海
前編 未来の恋愛模様
16/36

p.君と一緒にやりたいこと?

 前回の前半部分の続きです。主人公に絡む、イケメン男子の真意とは……

 今日の日直当番は、私にとっては今までで一番、憂鬱な日であった。何故かと言えば、高峰君が何かと託けては、私に絡んでくるからだ。彼がこれほど堂々と私に絡んだのは、朱里さんを初めて学校に連れてきた、あの日以来だと思う。


 「実は…今日の男子の日直当番は、僕なんだ。女子の日直当番が誰なのか知らなかったが、まさか神代さんと日直当番になるとは、ラッキーかもね?…ホントに凄い偶然だな。僕達2人、案外と気が合うのかもね?」

 「……た、高峰君が…男子の日直………」


どうしてこうも、彼と絡むことになるの?…今朝教室で会った時に、彼が断言していたことから、偶然と信じた私。後で私は詳細を知り、愕然とすることになるけれど、それはまだ先のことで。


…大体、彼と日直当番になる日が、抑々皆無だった気もしているのに、単なる私の勘違いだったのかなあ。…否、違う気もする……


 「もしかして…今日の当番の男子が、お休みになって…ですか?」

 「何言ってるの、神代さん。元々今日の当番は、僕だよ。神代さんと当番したい僕が、誰かと入れ替わったとでも、思ったのかな?…僕は抑々、今日の女子の当番が誰か知らないのに、それでも交代できると思う?」

 「…………」


何となく違和感を感じた私は、思い切って問い掛けてみる。日直当番を、他の男子と交代したのかどうかを…。それに対して高峰君は、私を揶揄ってきたのである。彼が私と一緒に日直当番をやりたくて、誰かと交代してもらったと、まるでそれこそ私が()()()()()()()()()言われて、逆に私の方がダメージを受けてしまう。墓穴を掘るとは、こういう状況なのかも。


 「冗談だよ、冗談。直ぐ本気にして、真面目過ぎ…。もし本当に僕が誰かと交代して、君と2人で当番したいと言ったら、君は…どうする?…本気にする?」

 「……えっ?………そ、そんなことは有り得ないし、私と一緒に当番したい男子なんて、誰もいないと思います……」


……な、何を言い出すのやら…。ハッキリと冗談だと言い切ったくせに、もしもの例えを質問に変えてくる辺り、底意地が悪い気がするよ。…ああ、そんな風に捉えられるとは、恥ずかしい……


恥を掻いた気がして、赤くなる。そんな私を見ていた高峰君は、冗談だと否定した上で、とんでもない質問をした。その問いに、私は全力で否定する。彼みたいな何でも熟せるイケメンが、私と一緒に当番をしたい理由に、思い至らない。どう考えてみても彼の望みではなく、私の望みと言う方が皆も信じそう。彼には、何の利点もないというのに。


 「…う~ん。昔の君は、こうも自己否定しなかった……」

 「…はい?……今、なんて………」

 「いや、何も…大したことではないよ。それより神代さんは、どうしてそこまで自分の容姿を、否定するんだ?…この前も、クラスメイトとのランチ中に、君のお姉さんとは比べようがないと、話していたね?…君の友人達が君の容姿を、折角褒めてくれていたというのに、()()()()()()()まで…。どうして君が、そこまで否定するのかが、僕には理解できない…」


高峰君の例え話を否定した私に、彼は明らかに顔を顰めて見せた。何かをぼそり呟く声は、男性の高音とされるテノールより低く、最も低音とされるバスより高く、その中間とされているバリトン風の小声であった。


普段の彼の声はテノールに近い声で、普段とは声の音域が違なる所為か、私の耳まで彼の声が届かない。ぼそぼそっと呟くバリトン風の声は、普段の彼の声よりも耳に心地よく、渋みが増し魅力的に聞こえてくる。20世紀の歴史を知ろうと、その一環でアニメ映像をダウンロードしたことがあるけど、その時に見た20世頃に放送されたアニメの中に、彼の声に似た登場人物が出てきたっけ……


あの時代のアニメは、今の時代のアニメよりもずっと、内容もキャラも優れたものであると、私は感じている。登場キャラの中では、特にバリトンの声は魅惑的で、完全に魅了されてしまった私である。


…高峰君のこのバリトン風の声は、あのアニメのキャラの声と似てる。そのいう影響もあってか、彼の声がこれほど心地良いとは。まるで永遠に聞いていたいほど、私の耳に馴染んでいくようだったわ。……ほう~。


お陰で、彼が何を言ったか分からない。大したことがないと話を逸らされ、会話の中身が別の話題にすり替えられた。私の容姿のことなんて、高峰君と話すような内容じゃないと、思いたい…。決して自己否定をするつもりもないし、お姉ちゃんと私が比べ物にならないと、私が知っていれば()()()()()()()、思っている。






    ****************************





 「別に私、自己否定をする気はないですよ。私の姉は誰が見ても美人で、私は普通で平凡だというのが、事実なんですし…。美人の姉に得られなくて、私が得られるものがあるならば、それは…審神者の能力でしょう。父と姉は審神者どころか、何故か能力自体が殆どないんですから。」


たった今、私がこうして告げた通り、今まで自分が自己否定していたとは、断じて思わない。他人から見たら、私が卑屈になっているように見えたのだろうが、私は単純に姉が好きだし、それを公言しているだけで、得に他意はないんだよ。


自分は平凡だと発言しても、卑下したつもりはなかった。自分の容姿が嫌いではないし、決して良くも悪くもないと、自分で理解しているだけで。それを言い換えたら、平凡という言葉になっただけ。自分が平凡だからと言って、別に卑下したり卑屈になったりしていないし、姉を恨むこともない。羨ましいとは思うし、落ち込むこともあったかもしれないけど、()()()()()()()()だった。


 「………ふ、ふははははっ!…飽くまでもマイペースな人だ。余程お姉さんのことを、好きなんだね。兄弟姉妹のことを好きだと、真正面から素直に言う人には、なかなかお目にかかれないよ。自分も含め心の中で思っても、外で真逆の態度を取る人は多い。堂々と家族自慢ができる神代さんは、本当に凄いな…」

 「……………」


高峰君は私の話を沈黙した状態で、聞いてくれていた。私が話し終わって数秒ほど間をおいた後、いきなり大声で笑い出した高峰君に、私は一瞬…馬鹿にされたのかと、勘違いしたぐらいだよ。どうも…私の方が、おかしいみたい……


…兄弟姉妹を含めて家族自慢をしない人、圧倒的に多いようだね。私の家族だけではなく、他の神代家の親戚一同も、堂々と家族自慢をしているし、てっきり当たり前のことだと思っていたよ…。神代家の一族の感覚は、一般的な普通の人達とは相容れないほど、変わり者…ということでは?!……納得したくない~~。


神代家は遥か昔から、神社を生業とする家柄であり、抑々一般人とは生活習慣が違うところも、あったりするようだ。我が家はごく普通の家庭だと思っていたけど、私は(いず)れ家業を継ぐことになるし、既に一般人とは感覚がズレているのかも。


神代家は最低限に縮小し、代々受け継いできたお陰で、何とかこの時代まで生き残れたらしい。今は事業展開にも成功し、神社も改装しちょっとは発展させたけど、未来も生き残るという証にはならない。おばば様は商才にも恵まれているが、私は恵まれているかどうかも分からない。私の代で滅びる最悪の事態も、あり得るよ。私が跡継ぎで…本当に大丈夫かな?


 「君のお姉さんが…羨ましい。妹の友人にも自慢されるぐらい、君から愛されているなんて、ねえ…。思わず君のお姉さんに、悋気してしまいそうだよ…」

 「………な、何を……言うんですか!……た、只の家族自慢ぐらいで、おかしな冗談で…私を、揶揄わないでくださいっ!」


私が黙っていると、高峰君はおかしなことを言い出した。それがあまりにも脈絡もなくて、混乱する私。私の姉が羨ましいって、何?!…姉自慢を友人にしたからって、どうして高峰君が…嫉妬するの?…私の頭の中では彼の言葉が、グルグル回っている状態で…。


それを冗談に他ならないと、私は結論付けることにした。悪質な冗談を、言わないでほしい…。私を揶揄うことで、遊ばないでほしい…。切実にそういう思いから、私は普段よりは大きめの声でちょっと興奮気味に、彼に文句を言った。


 「…う~ん、何を言えど響かない…か。冗談でも揶揄ってもいないし、どうしたら信じてもらえるのやら……」

 「……???……」


私の文句に対し、彼は小声でぼそりと呟く。先程同様バリトンの声は、何を言ったか全く聞こえない。私は怪訝な表情を浮かべ、彼を見つめる。彼の顔には何となく呆れたような、落胆したというような表情が見られ。


 「…はあ~。仕方がない。今までの僕の努力では、足りないようだ。今日は当番で協力することだし、これから挽回していけば、()()()()()()かな…?」

 「……っ…………」


唐突に顔を上げた彼は、不敵な笑みを浮かべつつ、意味ありげに告げる。今のは私にも、ハッキリ聞こえた。何とな~く嫌な予感を犇々感じ、顔を引き攣らせる私。彼に何の努力が足りなかったのか、彼が何を挽回していくのか、本人に訊き返すのは超がつくほど怖い……


 「他の生徒も、そろそろ来るな。それじゃあ、また後で、神代さん。今日は2人で協力して、日直当番を熟そう。」


高峰君の言葉に、慌てて時計を確認する。確かにそろそろ、クラスメイト達が登校する時刻だろう。言うことだけ言って、彼はスッと立ち上がる。最後に捨て台詞のような言葉を告げ、甘い笑顔を私に向けると、自分の席へと戻って行った。


私の心臓は物凄い勢いで、ドキドキと鼓動を打っていた。こ、これは…恐怖の1日を迎えることに対する、警戒や不安から来る鼓動ではないだろうか?…彼と2人で当番をすることになるなんて、今の私にとっては苦痛だ。イケメンで優しい人も、私には単なる脅威の存在で。


一体どうして、こうなったの?…朱里さん、()()()()()()助けてよ!!

 今回、紗明良と高峰君とのやり取りを、優先しています。紗明良の日直当番相手が、高峰君だったとは…。彼が言う通り、最初から偶然当番だったのか、将又誰かと交代してもらったのか、そのうち分かるかと……


次回は、2人の日直風景でも書こうかな…

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