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「うわわッ」
「……」
どうしよう、俺今超絶的にカッコ悪い。 俺の風呂上りに賄さんは心霊番組を観ていたからだ。 部屋に行こうともしたがそんな俺を見て賄さんはせっかく観ていた番組を消そうとしていたから俺も少し一緒に観ることにした。
俺はこの手の話題が苦手だ、幽霊とか怖いし。 なんていうのを女子には知られたくないがもう伝わってしまったのかもしれない。
再現ドラマを内心ガクガクしながら観ていると賄さんが口を開いた。
「こういうの苦手?」
「賄さんは怖くないの?」
「だって作り物だし」
「ええ? でも実体験に基づいてって言ってるじゃん」
「そんなの嘘だよ」
サラッと賄さんは言った。
「でも仮に嘘だとしても幽霊は怖いじゃん?」
「どこが?」
「いやいやだって怖いよ、ほらあんな風に迫って祟りに来るし」
「だから作り物だし実際体験したことある?」
そう言われるとないけど。 結構リアリストなのかな賄さんって?
「こうした方が観る人は面白いからテレビ側の人はやってるだけ。 本当に怖いのは生きてる人だよ、死んだ人は実際は何も出来ないけど生きてる人は違う」
どこかで聞いたことあるようなことを賄さんは淡々と語った。 リアリストというより人間不信。
「そうかな?」
「うん、そう。 人をいじめるのもやってる人も楽しいし見てる人も楽しいからいじめる」
聞いてて耳が痛い、だって前園が賄さんに絡んでた時俺は何もしないで見てただけだから。 後から優とそのことで話しのタネとかにもしていたし。
「でも助けてくれる人だって居るじゃん」
「そうだね。 そういう人も居るけど大多数の人はそうじゃないしあたしだってそんな人じゃないと思う」
CMになると賄さんはテレビを消した、テレビの引きがCM明けに怖い瞬間がって時なのに続きが気にならないのだろうか?
「あたしもお風呂に入ってくる」
「観ないの?」
「宮下君怖いの苦手そうだしやめとく」
つまらん奴と思われてしまったろうか? てかなんか賄さん大人っぽくてかっこいいな。
「何?」
「あ、ちょっと賄さんかっこいいなって」
「え?」
俺の言ってることにキョトンとした。
「なんかよくわかんないけど陰謀論的な何かを聞いた気がする」
「…… そ、そっか」
賄さんはほっぺを人差し指でかきながら言った。 もしや嬉しかったとか……
「俺そこまで考えないでボーッと観てたし賄さん凄いや」
「しーちゃんにはまた始まったみたいに流されるけど」
やっぱり聞いてくれて嬉しかったんだ、なんか黒い話だったけど。
「あ、お風呂だったよね? 邪魔してごめん」
「ううん、別にいい」
賄さんがお風呂に行くと俺は賄さんが消したテレビを再びつけたがいきなり恐怖シーンだったのでやっぱり消した。
女子は怖いの苦手って聞いたことあるけど賄さんには当てはまらなかったな、つーか俺が女子みたいじゃん。
そして部屋で時間を潰していると0時ころになっていた。 賄さんは風呂上がりにまたリビングに行っていた、俺も一緒に居ようかなと思ったけど口実もないし何より自然にその場へ溶け込める自信もなかったし。
更に30分くらい経過すると階段を登る足音が聴こえた。
もう賄さんも寝るのかな?
そう思って静かに耳を澄ましているとドアをコンコンとノックされた。
「……」
賄さんのようだけどよく聴こえないので俺はドアをそっと少し開いた。
「起こした?」
「ううん、まだ寝てないし」
「そっか、これ……」
「ん?」
賄さんは片手にマグカップを持っていた。
「コーヒー??」
「お砂糖とミルクは入れておいたから」
「なんでこれを?」
「だってお世話になってるし。 それに宮下君部屋に閉じ籠って…… ううん、いいや。 とりあえずこれ」
俺がコーヒーを受け取ると賄さんは自分の部屋に入った。
閉じ籠って?? なんで止めたんだ?
…… ま、まさか俺が何かいけないことをしているとでも思ったか!? いやいや、やましいことは…… 年頃だししてないとも限らないけど今は変なことしてないぞ俺!!
賄さんは何か変な誤解してないか? それに何故コーヒーに砂糖とミルクをわざわざ。 俺が子供っぽいみたいじゃないか、まぁ入れるけども。
もしかして俺がさっきのテレビ観てて怖がってるところを見てお子ちゃまだと思ってしまったか? 賄さんからしてみればあんなのでそんなに怖がるなんてお安い奴とか思ったんじゃなかろうか??
賄さんから受け取ったコーヒーを見つめながら俺は違う意味でモヤモヤとしてしまった。