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目が覚めると朝になっていた。
ふあー、なんかよく寝たな。
時計を見ると13時40分。
はぁ!? 超寝てるじゃん俺…… 昨日もモヤモヤして寝付くのが遅かったからだ。 やっぱり家に賄さんが居ると色々考えてしまうんだ。 てか賄さん起こしてくれなかったのか、朝ご飯とか昼食は摂ったのだろうか?
俺は急いで着替えてリビングに向かった。 すると賄さんが居ない。
あれ? どこだ??
キョロキョロと辺りを見るとトイレの方から物音が聴こえた。
「ん? あ…… はよ」
俺を見掛けると賄さんは小さい声でおはようと言ったようだ。
「ごめん、寝坊しちゃった」
「休みだし…… いいんじゃない?」
「賄さんはいつから起きてたの?」
「ず…… ついさっき」
「あ、そう…… そうだ、お腹空いてない? お昼食べた?」
「作って食べた、勝手なことしてごめん」
「ああ、そっか。 別に構わないけど」
「宮下君のも一応作ってた、冷蔵庫にサンドイッチ入ってる。 お腹空いてるなら食べて」
「え? あ、ありがとう」
賄さんが俺にお昼ご飯を作ってくれたのか。 これは食べないわけにはいかないと言うよりお腹も空いたし食べたいのでお言葉に甘えて食べることにした。
俺は冷蔵庫から賄さんが作ったサンドイッチを取り出してキッチンのテーブルに座って食べていると後ろから視線を感じるような気がして振り向くと賄さんは背を向けて洗い物をしていた。
気のせいかと思い食べているとやっぱりなんだか気になったのでもう一度振り返った。
「ッ!!」
その瞬間賄さんと目が合った、賄さんは素早く手元に向き直すけど……
「あら…… 洗い物してたからもう食べ終わったかなって」
「そ、そっか、ごめんまだ食べてた」
「見ればわかるし」
少しトゲがあるように返された。
ちんたら食ってんじゃねーよ! とか思われてしまってのか?? いやまぁチラチラ見られてたかもなんて思えば不快に思うかもしんないけどちょっと今のは冷たかった。
思えば浅はかだったよなぁ、賄さんが来て少しは仲良くなれるなんて考えたけど賄さんに置き換えて考えてみれば家族と離れて親が友達だからって引き入れてもらっても他人の家なんだし落ち着けるわけない、そんな中で明るく振る舞うとかましてや恋愛感情なんか持つわけない。
昨日はたまたま俺が賄さんの友達の高野と同じようなことを言って賄さんの気が少し緩んだだけだ。 一晩経ってそのことを賄さんも気付いて冷静になればこんな感じになるだろう。
もともと賄さんは大して人と関わる人じゃないし。
「ご馳走様、美味しかったよ」
「そう」
俺が食べ終わった皿を流しに持っていくと賄さんは奪い取るように皿を俺から受け取った。
多分これは俺への拒絶対応。 こんな調子で2年も賄さんと…… これじゃ仲の悪い兄妹みたいな感じだ。
そのまま時間が流れて夕方になった。
「昨日の余りだけど今日はちょうどいいと思うから」
そう言って夕飯に出されたのは昨日のお昼のビーフシチュー。 こうして親がいないのに晩ご飯が出されるなんて賄さんがたまたま料理が出来てここに居てくれるからだろうなんて思いながら「いただきます」と言って口を付けるとジトッとした目で賄さんはこっちを見ていた。
無言の圧力とでもいうかなんていうかそんなに注目されると食べ難いんだけど?
「どう?」
「ええっと…… 何が?」
俺がそう返すと少しイラッとした表情になった。
どう? どう? って何だ? …… あ! もしかしてこのビーフシチューの味かな? もともと美味しかったけど。
「こ、これ! 美味しいよ」
「…… そう」
そう答えたのにムスッと返された。
な、何が正解なんだ!? ハッ!! 今日はちょうどいいってもしかしてこれのことか?!
「ジャガイモとかニンジンとか昨日よりも柔らかくなってるし」
捻り出してそう言うと俺の顔をまたジトッと見た。
「うん、そうだよね」
少し賄さんの口元が緩んだ気がした。
これを言って欲しかったのかな? はぁ、でもどうやら少し雰囲気が良くなった気がする。 ならもうちょっと良くしよう!
「でも昨日のもそれはそれで美味しかったよ!」
「……」
あ、あれ!? 良くしようと思って言ったのに賄さんの雰囲気がまた悪くなった気がする……
「余計なことだった」
「え?」
「なんでもない」
ボソッと賄さんが言ったので聞き返すと更にトゲがある言葉で返されてその後は会話もなく晩ご飯は終わった。
うわぁ〜! なんか知らんが空回ってるぞ俺。 うちの親が居ればもう少し違うんだと思うけど今は俺と2人きりだし。