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「おいデク邪魔なんだよ」

「……」

「ああ? んだよその態度!!」



また始まったのか前園の奴。 デクと言われてるのは賄さんだ、デクの棒だからデクということらしい。 賄さんは美人なだけに敵も多い。 



おまけに賄さんは人付き合いも苦手だし友達も少ない。 男子にはチヤホヤされているけど同性からにはそうじゃない、そんな賄さんが気に入らない連中のひとり、前園まえぞの 恵美香えみかが賄さんに嫌がらせをしている。



周囲の奴らも俺と同じくまたかという感じ。 賄さんが特に何もせずとも男子からは結構モテていることに嫉妬してるってのがバレバレなんだが男子は男子で見て見ぬふり。



止める奴もたまに居るけどそういうのは大抵賄さんに自分の株を上げようとする奴ら、そんなことしても賄さんはあまり関心を持つタイプではないし効果があるのか? と思ってる俺も見て見ぬふり側の傍観者なのだが。



女子は面倒な前園に関わっても仕方ないし第一賄さんを助けても素っ気ない賄さんだし疲れるだけみたいな感じだ。



「ケバい顔でピーピーうるさい」

「はあ!?」



そんな中で前園に文句を言う奴が居た。 高野雫だ、ほんとのことを言われた前園は顔が真っ赤だ。



「みっともないから騒がないでよ、スズに見た目で圧倒的に負けてるからって」

「どこがよ? こんな根暗より私の方がずっと可愛いわ」

「うわぁ……」



高野が残念そうに前園を見るが教室の全員もそんな心境だろう。



「スズを見習って恵美香もお淑やかにしてみたら? そうすればちょっとはモテるんじゃない」

「な、なッ……」



更に顔を真っ赤にさせる前園が何か言い返さないとと思っていると先生が来たみたいでその場から去った。 



「前園の奴性懲りも無くまたやってたな」

「ああ」



給食の時間になり後ろの原田はらだ まさるとさっきのことを話してきた。



「てかさ、賄さんのがデカいんだから1発殴れば済むのにさ」

「だな」



デカいから同級生に思えず「さん」付けだしな。



「にしても周りも僻んでるだけって思われてるのによく懲りずにやるよなぁ」

「それなら原田助けてやれば?」

「そうしたい、だって賄さん美人だし」

「結局そこだよなぁ、でもそれで靡くと思う?」

「いーや無理そう、だって賄さんだぜ?」

「だってそうだもんな」




などという会話をしていたことを思い出した。 ついこの間まで俺もそんな奴だった、賄さんの存在は目の保養であんな風に前園に絡まれてるのもいつもの光景でそれが別段俺にとって何かを刺激したり影響なんてものはなかった。



それがこんな状況になって賄さんと仲良くなれるチャンスかもということになり更にはあの賄さんから少し心のこもった「ありがとう」を聞いた俺はなんだか前園の行いに対して少々腹が立つのは俺が都合のいい奴だからなのか? と普段は考えもしないようなことを天井を見つめながら考えていた。



なんかよくわかんないやと俺は布団の中に潜りスマホのソシャゲに集中する。 



だが賄さんと同じ屋根の下に居ると思ったら気になって集中出来ない。 



うちの親はバカなんじゃないか? 親父は男なら思春期真っ盛りな俺の考えもわかりそうなものだけど。



そんな俺はさっき賄さんから少し仲良くなれたかもということを裏切る形な行動に出ていた。 それは隣の部屋の賄さんの部屋をこっそりと覗かないかと。



部屋のドアにはほんの少し、ほんの少しだが隙間がある、目を物凄く凝らせば隙間から中が覗けるんじゃないかという考えで俺の部屋のドアをそっと開けて顔を出した。



音とか立てないように細心の注意をはらいながら。



身体半分を出すと同時に賄さんの部屋のドアがいきなり開いて賄さんと目が合ったので俺はマジでビックリした。 ビックリしすぎて尻餅をついて後ろの開いたドアに頭をぶつけた。



「ーーーーッ!!!」



痛かったので声にならない声をあげて頭を押さえた、というか賄さんの反応も怖かった。 ええ、蔑んでるだろうと頭を押さえながら賄さんを恐る恐る見た。



「何してるの?」



冷たい声…… いつも冷めた感じだけど。



「こ、これはトイレに行こうとして賄さんが寝てたらドアの開く音で賄さんが起きたら悪いなと思ってそっと開けたらいきなり賄さんの方のドアが開いてビックリしてこうなって」



めっちゃ早口になった。



「ひッ」



そんなの嘘と察して引かれた? 賄さんは口を手で隠して一歩下がった。



「だ、だから誤解しな…… え?」

「ひ…… ふひッ」



賄さんは肩を震わせていた。 これは予想以上に引いてるか? と俺は青ざめた。



「くッ、ふぶッ…… ご、ごめんなさい、痛がってるのに。 ちょ、ちょっと宮下君のビックリしてひっくり返ったのがツボに…… ダ、ダメッ、ふふひッ」

「へ? え?!」



ツボったの?? 引かれてない?



「はあーッ…… ふ、ふう」



一息ついて賄さんは落ち着きを取り戻しいつもの素っ気ない顔に戻った。 そんな賄さん見たことないのでレアなのでは?



「あたしも」

「え?」

「トイレ行こうとしてた」

「そ、そうなんだ」

「じゃあ宮下君先に行って」



賄さんこそ先に行きなよと言おうとしたがなんか変態っぽいのでやめた。 なんでそれが変態っぽいのか説明するとほんとに変態っぽいからやめとく。



トイレから出て部屋に戻ると賄さんは待っていた。 頭をぶつけたのはやましいことをしようとした天罰かと思い部屋に戻ろうとすると……



「ぶつけたとこ大丈夫?」

「あ、うん。 もう痛くないよ」

「良かった、驚かせてごめん。 それに笑っちゃって」

「ううん、賄さん笑って良かったなって思ってるしいいよ」

「??」

「だってここに来てからずっと元気ないように見えたから」



最初は恥ずかしかったけど笑った賄さんを見れて良かったと思うし今はそう思ってるし。 



けど賄さんはまた俺から一歩下がった。



「そ、その…… 元気出た、少し」

「…… え?」



そう言って賄さんはそそくさとトイレの方に向かった。 そんな賄さんを見て……… 失言とかしてないよな俺?? と思ってしまった。





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