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どうしよう…… あたし宮下君に向かって変なこと言い掛けた、言い掛けた。 絶対変に思われた、ていうより変でしかない。
それに何? かっこいいとか言っちゃった、私の中ではかっこいいとかそういうの宮下君にどうでもいいって言ったくせに恥ずかしがってるの見え見えだった。
宮下君は可愛いくてちっちゃい時からあたしは見てて…… あ、これは失礼かも。 って今のなんか誤解を生みそうな発言、宮下君の前じゃポロッと口にするのダメ、ダメ。
クリスマスの時だってそう、宮下君とても大切なこと言おうとしてたのにあたしはなんであんなことを? 宮下君と一緒なの嬉しいな本心なのにあたし何を不安に思ってるんだろう?
お陰で宮下君が何言いたかったのか聞かなかった。 ああ、もうッ、あたしのバカ! ちょっと前に凄ーく気になるものも見つけちゃったし。
「いたッ!」
ベッドでジタバタしているとズンッ!! と大きい音がした。
ヤ、ヤバいよ…… 壁にぶつかっちゃった。
◇◇◇
な、なんだ!? 賄さんの方の壁から大きい音がして賄さんの声もした。
俺は部屋を出て隣の賄さんの部屋のドアをノックした。
「賄さん俺だけどどうかした、大丈夫?」
するとドアが開いて申し訳なさそうな顔をした賄さんが出て来た。
「ごめん、うるさかったよね? けどなんでもないの」
「…… そう? 結構大きい音したけど」
「逆立ち! 逆立ちの練習してた、それで失敗して」
逆立ち…… そりゃ嘘だろ! と思ったけど無理に聞き出すと賄さんも引かなくなりそうだし。
「そっか、でも壁壊さないようにね?」
「気を付ける。 ううん、もうやめる」
「うん。 じゃあまた明日賄さん」
「おやすみ宮下君」
「…… うぐッ!?」
部屋に戻ろうとすると首根っこを掴まれた。
「ごめん、やっぱり寝る前に少しお話ししたいの。 私の部屋に入って」
「え?」
こんな夜更けに賄さんの部屋に入れって?! い、いや、変な期待はするな。 話がしたいだけなんだ賄さんは。
俺を部屋に入れると賄さんはベッドの上に正座した。 何故そこに?
そうすると賄さんは俺を手招きして自分の正面のベッドに指をさす。 そこに俺も座れということだろうか? と思って俺も賄さんのベッドに正座した。
なんだこれ? これから初夜を供にするみたいな場面なんだけど。
「オホン!」
賄さんが咳払いをして溜め息を吐くと自分のお尻の方に手をやってゴソゴソと何か動かしている。
「これなんだけど…… 落ちてるの拾っておじさんとおばさんに知られたら宮下君イヤがると思ってあたしが持ってたの」
「うッ! そ、それは」
賄さんが俺の前に出したクシャクシャになった紙切れは初めて貰った時の女の子が俺を呼び出した手紙。
どこかでなくしたと思って学校で自分の机とかロッカーとか家の中を一生懸命探したが見つからなかったもの。
物が物だけにコソコソ探していて家族に何度か「何探してるの?」とつっこまれても言えなかった代物がまさにここに……
「宮下君これ前に探し物してたよね? それってこれのことだよね?」
「な、なんで今になってこれが? というかこれどこで?」
「前にあたしの部屋で勉強した時あったよね? それであたしの教科書と宮下君の教科書混じっちゃったの覚えてる?」
「あ、うん」
確かにそんな時あった、と思い出すと俺はそこから記憶が鮮明になっていった。
学校でその手紙を貰ってから俺はこれどうしようか? と思って捨てるのもなんだしなぁと歴史の教科書の適当なページに挟んでおいたのだ。
そしてそんなことがあって数日俺はその女の子の件も済んで手紙のことをウッカリ忘れてそのままにしておいて賄さんに勉強にを教えてもらうから歴史の教科書やその他いろいろな教科書を持って賄さんの部屋で勉強した、結構遅くまで。
その後俺と賄さんは次の日の朝までその教科書広げた状態だったので慌てて片付けて学校に行って教科書が混じってるのに気付いたけどどうせ同じ物だしと思ってしばらく交換したままにしていた。
あの時かぁー! それより俺迂闊すぎだろ、よりにもよってそんな物が入ってる教科書を……
「宮下君、これって所謂ラブレターだよね?」
「え! あ……」
「あたしも似たようなの貰ったことあるからわかる」
焦ってしまう、今年一焦ってる。 こういう時ってなんて言えばいいんだ!? と考えているうちに賄さんが喋る。
「でもわかる気がする」
「へ?」
「最近宮下君かっこいいし…… あたしはそんな宮下君の可愛いとこも知ってるけど」
「な、なんて?」
かっこいいの後が物凄くゴニョッていたので聴こえなかった。
「身長も伸びたし声も低くなったし…… って、あ! あたしが言ってるのは世間一般のかっこいいの基準で、でもそのあたしは宮下君のそうじゃない部分も知ってるし、じゃなくて…… この手紙の子はどうしたの?」
「それは…… 断った」
「どうして?」
どうしてって。 賄さんが好きだからな決まってんじゃん。 って言えない自分に腹が立つけど。
「気になる人がいるから」
「あ、あたしそんなの聞いてない」
賄さんは金槌で頭をガツンと殴られたような顔をする。
「い、いやそれは俺」
「…… いるし」
「え?」
「あたしだって気になる人いるしッ!」
「ええッ!?」
賄さんに気になる人居たのか!? 俺だってそんなの聞いてないし!
賄さんはそう言うと部屋を出て行った。 …… と思った10秒後、ドアがガチャっと開いて賄さんが顔を出した。
「ここ…… あたしの部屋だった」




