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朝ご飯を食べ終わると賄さんは食器を流しに置くと既に食べ終わったいた俺の食器も流しに置いた。



「いいよ賄さん、俺が洗っとくよ」



そう言ってスポンジを取ろうとすると賄さんの腕が素早く伸びて俺より早くスポンジを握りキッと睨まれた。



「あたしやる」



何故か不機嫌そうだ、また俺何かやっちゃったのか?



「でも」

「やる……」



何故か譲ろうとしない賄さんに負け俺はリビングのソファに座った。 普通に部屋に戻ろうかと思った、賄さん的にも俺が居ない方がやりやすいだろうし気が休まるとも思ったけど1人にやらせてしまってはと思ってなんとなく。



いやでも両親が昨日外国に行っちゃって親同士が仲良いからといって賄さんからしてみれば見ず知らずの家に俺と2人きりは流石に1人になりたいのでは? と考えてしまう。



「コーヒーでも飲む?」

「え? 今淹れるから」



俺が飲みたいと捉えた賄さんは慌ててコップを取ろうとして洗い終わって並べていた皿に手が当たり皿が床に落ちてパリン! と割れる音がする。



一瞬その割れた皿に俺と賄さんの視線が注がれるが……



「ご、ごめんなさい」

「大丈夫だよ」



賄さんは皿を拾おうと割れた破片を手で拾う。



「いたッ」

「素手で触るからだよ危ないな」



そう言って近寄ると切った指を押さえながらサッと離れられた。



「え?」



賄さんを見ると目が潤んでいた。 もしかして俺が怒ってるように思った? というか近寄って離れられると明らかに拒絶されてるようでちょっと傷付く。



「わざとじゃないの」

「へ?」

「お皿割ったの……」



あ、皿のことね……



「わかってるよ、俺にコーヒー淹れようとしてくれたからだろ? でもさ、俺が賄さんにコーヒー淹れるつもりだったんだ」

「そう、なんだ」

「指大丈夫? 絆創膏持ってくるね。 割れた皿は俺が片付けておくから、洗い物も終わったでしょ? だったらソファに座ってて」



心配して言ったんだけど俺がそう言うと賄さんはムスッとした顔を一瞬見せた。 



ええ!? 何がいけなかったんだ?



とりあえずホウキとチリトリを持ってきて賄さんに絆創膏を渡し割れた皿を回収してコーヒーを淹れて賄さんに持っていった。



「どうも」



ペコリとお辞儀され畏まるとなんだか気不味くなってくるんだが。 



指を見るとちゃんと絆創膏は貼ったみたいだ。 でも俺は一体これから何をすればいいんだ? お話? 賄さんと?? 何を話すんだよ? 



賄さんは学校でも話しているのは特に仲が良い女友達数人、あとは遠慮がちに話す。 なので俺なんかが話してもすぐにぶった切られそうだ。 だが……



「夏休みだね」

「うん」

「今日は外結構暑いみたい」

「うん」

「この前友達に借りパクされてたゲームようやく返してもらってさ」

「うん」



ほらーッ! 俺が必死に話し掛けてる感じが出てなんか情けない。



時刻はまだ8時半、仲良くなれるかもと思っていたが賄さんに取り入ることが出来ない。 だって俺のことめちゃくちゃ警戒してないかこれ?



賄さんにとっては普通に仲の良い女友達の家に預かって貰った方が良かったのでは? と思っていたら……



「あ、そういえば高野の」



言いかけた時賄さんはハッとして俺を見た。 やっぱり友達の話題になると賄さんも何か話す気になったのか?



「言わないで」

「言わないでとは?」

「あたしがここに居ること」



それはつまり俺の家に居るということを隠したいという意味だろうか? いやまぁ大っぴらに言えることじゃないと思うけど。 



「言わないよ、けどなんで?」

「…… バレたら怖いし恥ずかしい」

「そういえば面談とかは?」

「リモートで」

「ああ、なるほど。 先生達わかってるんだ?」



コクンと頷いた。 話してないわけないか、ただ俺の家に居るということも知ってるんじゃ?



「俺の家に居るってわかってる?」

「うん」

「よくそれで通ったな」



先生もこの賄さんの性格は知ってるけど緩い学校なのかなうちの中学って…… というかまた会話がなくなってしまったぞ。



「じゃあこれからどうする? 賄さんは何かしたいことある?」

「特に」

「ええっと、まだ朝だし眠いなぁとか」



俺が眠かったんだけどな。 昨日は隣の部屋から賄さんが啜り泣くのが聴こえてていつまで泣いてるのかなと思ったらずっと起きてたし。



「ふあ……」



俺が言った後賄さんが欠伸をしかけたのを俺は見逃さなかった。



「ほら眠い…… !!」



と言ってしまうと賄さんはまた否定に入ると思って俺は言葉を止めた。 なんか俺の言うことに反しそうな気がしたから。



「俺ちょっと寝ていい?」

「どうぞ」



何故か賄さんはソファから身を避けた。 まさかここで寝ると思っているのか? 普通に部屋に行こうとしたんだけど。 けどせっかく避けたのだからソファに座ると賄さんは床に座って背を向けている。 てか賄さんは寝ないのか? 



などと考えながら賄さんの背中を見ていると瞼が重くなってきて俺は目を閉じた。




「ニァアア〜」

「ふふッ」



何か音がして目を開けると賄さんの背中が見える、俺が目を覚ましたことに気付いていない。 そっと時計を見ると10時過ぎ、1時間以上寝てたみたいだ。



「ニャオ」

「可愛い」



小さい声で呟く賄さん、どうやらスマホで猫の動画でも観ているようだ。 こんな一面があるなんてと思って邪魔しちゃ悪いと思って俺は再び目を閉じるとススッと音が聴こえた。 



俺が寝てるか確認してるのかな? 動画もなんか止まってるし。 そして少しするとまた猫の鳴き声が聴こえたので視聴再開したみたいで賄さんの小さく笑う声が聴こえてきた。 



へぇ……








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