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「賄さん、俺コンビニ行ってくるけど何か買ってくる?」

「お菓子食べたい、甘いの」

「お菓子ね」



俺は風邪を引いてたし賄さんが来たしで夏休みになってろくに外に出た記憶がない。



もともと賄さんはインドア体質だから夕飯とかの買い出しがない限りそんなに外に出ようとしない、それか高野と遊ぶくらいか?



コンビニに着き自分の欲しい物を買って甘いお菓子を選んでいたが女子ってどんなの食べるんだろうと少し悩む。



チョコか? チョコ系なら選んで間違いないだろつとポッキーなどのお菓子を詰めていく。



「ただいま」

「おかえり」



俺の声が聴こえると賄さんは玄関の方へトコトコと小走りで来た。



出迎えてくれるなんて嬉しいなと思いきや賄さんはコンビニの袋の中身を見た。



そっちかよ……



「ううーん、あ!!」

「な、何か不満な点でも?」

「これこれ、あたし大好きなの」



何かと思えばコアラのマーチ。 それは俺も好きで食べようと買ってきたのをまさか賄さんも好物だったとは。 ふたつ買っとけばよかったな。



「食べていい?」

「どうぞ」

「やった」



賄さんは嬉しそうにコアラのマーチを持ってリビングに戻って行った。



なんか同い年みたい。 いや同い年だけど高校生くらいに見える賄さんでもやっぱり中学生なんだなぁと。



キッチンに買ってきた物をとりあえず置くとリビングのソファに座って脚をばたつかせて美味しそうにお菓子を食べてる賄さんが居た。 そんな時俺に電話が掛かってきた。



着信の相手は優だった。 なんだろうと思って出てみると……



「原田君なんて?」

「遊びに来るって」

「そっか、じゃあたしは居ない方がいいね」

「ごめんね」

「お互い様だし。 こんなのバレたら学校行けなくなっちゃうもん」

「だね」



賄さんが部屋に行って自分の家の鍵を持って玄関の方へ行った。



「なるべく早く帰すから」

「あたしに遠慮しなくていいよ? それにあたしもご飯の買い物もあったし」



その時だった、玄関が開いてそこに優が……



こいつ向かってた最中に電話掛けやがったな!! そして3人はザ・ワールドした。



「ま、賄さん!?」

「…… こんにちは」



驚く優に学校モードをオンにする賄さん…… これどうしたらいいんだ!?



「つ、椿…… なんでお前の家に賄さんが?」

「ええと、親同士が友達だったみたいで。 ビックリだよな」

「マジかよ? ビックリはビックリだけどなんで賄さんが??」

「これ……」



賄さんが持っていたエコバッグを見せた。 財布やらを突っ込んでたから何か入ってるように見える。



「うちの家族今出掛けてるから。 宮下君の家の人が持って行けって言われてた」

「お、おお……」



冷たい口調で優を見下ろしそう話す賄さんに少し圧倒される優。 ちょっと前まで俺にもこんな感じだった。



「じゃ、あたし行くから」

「は、はい」



優はサッと身を避けて賄さんが出て行く姿を見ていた。 賄さんの姿が見えなくなると優は俺の肩を掴んだ。



「お、お前〜ッ!! つーことは賄さんと知り合いだったのか!?」

「そ、そういうことになるかもな。 俺も最近知ったばかりなんだ」

「つーか間近で見たけど賄さんマジで美人だわ、怖いけど。 いやー、小学生の時も相当だったけどありゃ高校行ったらもっとモテるな」

「それより来るの早過ぎだろ」

「まあまあ、お前何風邪引いてんだよ? バカだったのか??」

「うるさい、俺今忙しいんだけど?」

「それよりゲーセン行かね? 家でゲームも飽きてさー」

「まぁいいかも」



ここ最近遊びらしい遊びもしてなかったので俺はこの日優とゲーセン行ったりそこらで飲み食いして遊んだ。



賄さんが俺の家に来たことはビックリしてたみたいだけど優本人はどうやらそこまで気になる方じゃないみたいだ。 



俺も遊んでいる時は楽しいし、もし賄さんが俺の家に来てたとして優と立場が逆だったらそんなもんかもしれない。



賄さんのことは昔から美人だと思ってはいたけど恋愛感情とかよくわからなかった。 それが近しい存在になって仲良くなれるかもとかもしかして何かエッチなことがなんて考えないわけでもないが恋愛感情なのかどうかすらわからない。



大体賄さんから見れば俺ってチビだし自分よりも大きい男の人を選ぶもんじゃないか普通は。 



「じゃーな、また来るからよ」

「次はちゃんと早めに電話しろよ?」

「わぁーったわぁーった」



すっかり夕方になってしまった。 18時半、賄さんももう帰ってきてるはずだと思って家の玄関を開けるとカレーの匂いがしてきた。



「あ、おかえり。 ちょうど良かった、今出来たとこ」



ニコッと笑う賄さんを見ると先程の優に態度で塩対応した賄さんとは別人に見える。



「ね、大丈夫だった?」

「うん、優的にそこまで気にならなかったみたい」

「はあ〜、良かった。 いきなりだったから凄くビックリした」

「うあ…… ああ、そうだね」

「??」



こちらに駆け寄ってきた賄さんの胸が顔に近かったのでそれもビックリした。 こんなに距離近かったっけ今まで。



「ん? あ、お腹空いたんでしょ?」

「そうそう、お腹空いた」

「今日は普通のカレーじゃ食べ飽きてるかと思って色々入れてみたなんちゃってスパイスカレーにしてみたの」



寧ろ普通のカレーで良かったんだけど何故に創作料理的なものを……



「味見した?」

「してないよ」

「え?」

「宮下君の顔で判断しようと思って」

「俺は実験台?」

「ふふ、食べてみて」



意外と美味しい。 俺の表情で賄さんは美味しいと判断したみたいで満足そうだった。



「それにしても賄さんも結構笑うようになって良かったよ。 優には相変わらずだったけどさ」

「ああ…… 誰にでもこう出来たらいいんだろうけどって思うけど。 今は別にいいや、それと宮下君とこんなに話せるなんて思ってもみなかったし」

「あはは、俺も」

「あ、カレー付いてるよ」



不意に俺の唇の端に賄さんの指が触れたのと同時に今日2度目の時が止まる感覚が。



賄さんも自然に手が動いたのか触れた表情のまま硬直して「しまった」と言わんばかりの動揺が俺にも伝わる。



「…… ほ、ほら、こんな風なことするなんて思ってもみなかった」



そう言って苦笑いをしている賄さんであった。 俺もビックリして引き攣ったように笑っていたと思う。




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