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よろしくお願いしますm(__)m


「あのまかないさん」

「…… 何? あ、えっとおは、よう……」



消え入りそうな声。



「朝ご飯出来てるけど」

「あ…… ごめんなさい」



そうだったと顔に出ている。 申し訳なさそうにテーブルに座る賄さんの目は腫れていた、きっと昨日は泣いてそれに眠れなくて寝坊してしまったんだろう。



昨日の昼間の時点で俺はこの状況が奇跡としか言いようがなく有頂天な気分になっていたのに今日はどこか気不味い、俺は何か期待していたんだろう。 けれど今朝賄さんの様子を見て俺の期待していることは起こらないだろうと確信させる。



「いただきます」

「うん」



賄さんはとても遠慮がちにこちらを見て俯いてパンを食べる。 俺が目の前に居るからだろうか? そう思うと俺も自然に俯いてしまう、彼女をチラッと見たいのだけどダメかな??



静まり返ったキッチンにパンを食べる音だけが聴こえる。 何か話した方がいいだろうかと賄さんを見ると何故か目が合う。



「ど、どうかした?」

「ジャム……」



テーブルに置いてあったジャムを物欲しそうに見つめる賄さんにジャムを渡す。 



「ありがとう」

「どういたしまして」

「…… ワガママでごめんなさい」

「思ってないよ」

「……」



わかっていたことだが彼女はコミュ障、それに相まって昨日両親と別れたばかりで更にテンションが低い。



俺にとっての発端は昨日、夏休みになってうちの家に彼女の親と彼女が訪ねてきた。 賄さんの親が俺の親の友達だと言うことは聞いていたが賄さん自身がうちに来たことは初めてだった。



彼女はまかない 鈴音すずね、俺と同じ中学に通っている女の子。 女子にしては長身で艶やかで長い髪にキリッとした顔立ちでとても美人、なのに昔からかなりのコミュ障。 そんな美人でギャップのある賄さんは男子からもモテているけど彼女にとっては苦痛だろう。



俺は宮下みやした 椿つばき、中学2年で同じクラスになって廊下側の席から窓側の席の賄さんを遠くから綺麗だなと思って見ていた俺はまさかこんなことになろうとは夢にも思わなかった。



なんでも賄さんの親が2年間外国に行くそうで当然賄さんも行くことになるのだが賄さんは猛烈に反対した。 「やっていける自信がない」彼女はそれで反対したのだが彼女の親の仕事の都合上そういうわけにもいかずに困っていたみたいだ。



ならば仕方ないとどうしても行けないのなら親戚の家にと思ったそうだが転校することになる、彼女はそれも嫌だった。 コミュ障だが小学生から友達は居る、今更違う学校でやっていける自信もないと。 そうなれば仲の良い俺の親に頼ることにしてみたらしい。 面倒なことは自分たちと賄さんの親がなんとかするからってことで。 



賄さんはこういう子だとうちの両親もわかってはいた。 なので例え俺が居ても何も起こらないだろう、賄さんが良ければどうかな? とうちの親はそう言うと賄さんは凄く間を置いて頭をカクンと下げた。 



そんな親と話している時の賄さんの声を荒げる様な話し方を見たのは初めてだったので驚いた、まぁ2年も居なくなってしまうので賄さんの心中はなんとなくわかる。



いやいや、うちの親も賄さんの親も楽観的過ぎだしこんな生活成り立つのかと思ったけど内心超ラッキーとか思っていた。



何故ならばうちの親今日から3週間旅行に行って居ないんだ、そういうタイミングだったから賄さんもと誘ったけどそんな気分じゃないようでだったらうちの親は俺も賄さんと家に残ってあげなさいと。 



心の中ではもう旅行とかどうでも良くなっていた俺は仕方なくといった感じに賄さんと2人きりになれる嬉しさを隠して渋々承諾したような態度でそれを聞いた。



それを見ていた賄さんはそのことも気にしているんだろう。 ごめん、全然気にしなくていいんだ本当は。



「み……」

「み?」

「…… やした君?」



賄さんが何か言いたげだ。 小、中と来て賄さんに呼ばれたのは初めてだ。 親が仲良いからといって俺と賄さんは接点がなかったもんな。



「はい俺は宮下」



俺になんだろう? と思って変な返し方になってしまった。



「あの…… パンおかわりしていい?」

「え、結構お腹空いてたんだ?」



そう言うと彼女の顔はカァ〜ッと赤くなった。 



余計なこと言っちゃったかな? そういえば昨日は賄さん全然何も食べなかったんだった。 賄さん俺より身長高いし食べる量も多いのかななんて絶対言っちゃいけない。



「や、やっぱりいらない」

「えっと…… 俺ももう一枚食べたかったからちょうど良かったから焼くよ」

「あたし…… いらない」



何故か断るスイッチが入ってしまってる、俺そこまでのこと言ってないのに……



そんな時グギュルルッと音が聴こえたので賄さんを見ると慌ててお腹を押さえて膝をクネクネさせて真っ赤な顔で俺を見た。



「賄さん?」

「お、おならじゃないよ」



…… そっちかよ! わかってますとも。 お腹の音でしょ? やっぱりまだお腹空いてるんでしょ賄さん。



「…… じゃあもう一枚焼いた方がいいよね?」



お腹の音を聴かれたのが恥ずかしかったのか今度は素直にコクンと頷いた。



賄さんと上手く接するのは結構難しそうだが夏休みに親が旅行している1週間、上手く接すればもしかしたら少しは仲良くなれるかもと思った。





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